ポーランド:中絶全面禁止法案 少女・女性にとって危険な後退

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2016年9月24日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ポーランド
トピック:性と生殖の権利

11才の時に実父から受けた強かんで妊娠した少女でも、出産以外の選択肢はなくなる。出産時に死産や自身の健康リスクが非常に高くても、中絶という選択肢はなくなる。このような事態が、ポーランドで現実に起ころうとしている。

ほぼ全面的に中絶を禁止する法案の審議が9月末、同国の国民議会で始まる。

9月25日には、ワルシャワやロンドンなど世界の都市で、この法改正に反対する抗議活動が行われる。法案は、中絶をしたり、しようとすると処罰されるだけでなく、中絶を働きかけたり、手助けしたりしても実刑を受け、その刑期が法改正で現在の3年から5年に延長される。

ポーランドの現在の中絶法でも、ヨーロッパ域内で特に厳しい内容だ。中絶が認められるのは、強かんや近親相かんでの妊娠、重度の障がいが胎児にある場合、胎児の生命維持が困難な場合、母体の健康または命が危険にある場合などに限定される。しかし、改正案では、医者ら専門家が母体の救命に必要だと判断しない限り、いかなる状況でも中絶は禁止される。そのため、母体は危険にさらされるリスクがあり、医師は極めて困難な状況に置かれる。どこまで死に近くなると中絶が合法なのか、明確な基準はなく、どこまで中絶を引き伸ばすのか、厳しい判断を迫られる。

また、改正案では、不用意に胎児の死を招いた場合、3年以下の刑を受けることになる。そうなれば、医師は、妊婦の立場に立った治療や情報提供を躊躇するというとんでもないことが起きかねない。

近年、同国の中絶法は、欧州人権裁判所で審議されてきた。人権裁判所は、強かんで妊娠した少女(14才)ら3人の女性が、安全で合法的中絶を受ける上でありえない障害があったケースを引き合いに出し、同国も加盟する欧州人権裁判所が規定する加盟国の義務を果たしていないと指摘した。

公的な数字では、ポーランドでは年間約1,000件の合法な中絶が行われている。しかしこの数字には、秘密裏や国外で行われている中絶の数は入っていない。女性人権保護団体らは、実際は15万件程度にはなるのではないかと推測する。

欧州人権裁判所の裁定からして、現状の改善が必要で、これ以上の制限は国内外の人権義務に違反することになる。国際法違反の人権の後退となりかねない。

さまざまな団体の活発な活動のおかげで、何十万人もの女性が自分たちの人権を保護する闘いに参加してきた。この数カ月で抗議活動は国内の通りにあふれかえり、経済的理由で国外で中絶を受けることができない女性が、荒っぽく危険ではあるが余儀なくされる自己中絶行為を想像させるコートハンガーを、抗議のシンボルとして掲げた。

アムネスティは決して、人びとを不安に陥れようとしているのではない。他の国でも同様に厳格な法律があり、女性がひどい目にあっていることを知る必要がある。アムネスティの調査では、アイルランド、エルサルバドル、ニカラグア、パラグアイの女性や少女が安全で合法な中絶を受けることができず、大きな代償を払っていることがわかっている。健康や健全な生活、あるいは命までをも犠牲にしてきた。

ポーランド議会は、9月21日から法案の審議に入った。もし通過すれば、ただちに施行されかねない。そうなれば、国際人権条約・基準違反だが、女性は、中絶を受けて刑務所に行くか、身体のリスクを冒して妊娠を続けるか、という厳しい選択を迫られることになりかねない。

また、もう一つ、大変深刻なテーマにぶつかる。女性の体と健康を決めるのは政治家ではなく、医師らと相談しながらも、女性自身が決めるべきなのである。

アムネスティ国際ニュース
2016年9月19日