イラク:「イスラム国」支配地域奪還作戦で市民が犠牲に

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2016年11月 3日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:イラク
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イラクが、「イスラム国(IS)」を自称する武装組織が支配するモスルやその周辺地域を奪還する作戦を展開する中、市民が戦闘に巻き添えになったり、「イスラム国」に人間の盾として利用されていることがわかった。

アムネスティは、最近モスル北部の村の自宅を離れざるを得なくなり、現在はクルド自治政府の保護下にある難民キャンプに避難している市民数人と会って話を聞くことができた。また「イスラム国」支配地域に取り残されている市民にも電話で聞き取りも行った。その結果、ここ数日で市民がどのようにして殺傷に巻き込まれているのか、その実態が浮かび上がってきた。

モスルとその近郊には、今も市民100万人以上が取り残され、極めて危険な状態に置かれている。「イスラム国」は住民の安全を度外視して彼らを盾にしており、迫りつつあるイラク軍らとの戦闘激化で、さらに多くの市民が犠牲になる恐れがある。

モスル奪還作戦の開始以来、10月26日までに1万5,000人以上が避難し、モスルとその近郊に取り残されている市民は、150万人に達すると考えられる。

市民を盾にする「イスラム国」

戦闘地域から避難することができた市民や、政府軍が奪還した村の住人は、「イスラム国」が市民を戦闘地域から逃がさないようにしていると語った。

人間を盾にするのは、戦争犯罪である。しかし、「イスラム国」が民間人を盾にしているとしても、イラク軍や有志連合は民間人の安全に配慮する義務がある。

戦闘に巻き込まれる市民

「イスラム国」の戦闘員は民家や空き家、屋根などを占拠して、攻撃の拠点としている、と村の村長は語った。

複数の村で、自宅周辺が戦場になり逃げだすことができない住民もいた。ある男性は、自宅にいた弟(17才)が脚に銃弾を受けた時のことを話してくれた。
「出血が止まらず意識不明となった。空爆に紛れて、弟を背負って命からがらイラク側の治安部隊がいるところまで逃れた。弟は、今病院にいる」

村の北部外れでは、一軒の家に70人が避難していた家屋に迫撃砲が命中し、一人が即死し、数人が負傷した。いずれも子どもだった。

「イスラム国」が退却する際に、複数の市民が別の「イスラム国」支配地域に連行された。現地の活動家や住民がアムネスティに電話で語ったことによると、連行された住民は「イスラム国」戦闘員の目の届く学校や住宅などに閉じ込められているということだった。

アムネスティ国際ニュース
2016年10月27日

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