ミャンマー(ビルマ):治安部隊の掃討作戦 ロヒンギャを標的に

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2016年12月27日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ミャンマー(ビルマ)
トピック:難民と移民

治安部隊による、ロヒンギャの人びとに対する殺害、強かん、家屋の焼き打ちは、ロヒンギャ掃討作戦の一環であり、人道に対する罪に相当する可能性がある。

無差別銃撃と殺戮

10月に国境警察で警官が殺害された事件を受けて、治安部隊はラカイン州北部で大規模な治安作戦に乗り出した。警官9人が犠牲になったこの襲撃は、ロヒンギャの民兵組織によると見られている。

複数の住民の証言によると、治安部隊は村人に銃口を向けて無差別に乱射し、老若男女を問わず殺戮した。村人を家から引きずり出して射殺することもあった。現在のところ、アムネスティは、正確な死傷者数を把握してない。

11月には、警備員襲撃に関与したと思われる民兵と治安部隊との間で小競り合いがあって間もなく、武装ヘリ2機が飛来し、逃げ惑う住民を無差別に銃撃し、数えきれないほどの死者を出した。部隊は翌日に戻ってきて、村ごと焼き払った。

30才代の男性が恐怖に震えながら証言した。「ヘリの爆音を聞いて逃げようとする住民の背に、銃弾の雨がふりそそいだ。人を見つけると撃ってきた。銃撃は、長かったような気がした。翌日にも軍がやって来て、また無差別に銃撃した」

強かんなどの性的暴力

兵士らは、村の男たちが逃げ出したのをいいことに、女性に強かんや性的嫌がらせのかぎりをつくした。アムネスティが聞き取りをした住民の中には、強かんの被害女性も数名いた。国境沿いのバングラデシュで支援活動をする人たちも、強かんの被害者の治療をしたことがあるということだった。

ロヒンギャの女性(32才)が語った。「兵隊が自宅に入ってきて、畑まで引っ張り出されて、襲われた。数人に代わる代わる強かんされた。いつの間にか気を失って、気が付いたら朝になっていた。立ち上がれず、這うようにして畑から出て、当てもなく歩いた」

恣意的逮捕と拘束

軍や国境警察は、ロヒンギャの男性数百人を恣意的に逮捕した。主に高齢者やビジネスマン、町のリーダーらだった。アムネスティは、ロヒンギャの人が警察に逮捕・勾留され、居場所も容疑もわからなくなった件を23件以上、確認した。

国営メディアは、治安作成開始以降、勾留中に少なくとも6人が死亡していると報じており、拷問などの暴力が行われているのではないかと懸念される。

焦土作戦

被害者の証言や衛星画像から、ロヒンギャの家屋1200件以上などが焼き払われたことが分かった。中には村ごと焼きつくされていたケースもあった。村人によると、兵隊は携行式ロケット弾を使って家屋を破壊したという。

人道危機

ミャンマー政府がロヒンギャ州北部への人道支援をほぼ全面的に禁止したため、数十万人が人道危機に直面している。10月9日以前でさえも、同地域の住民15万人以上が深刻な栄養失調状態にあった。

医療サービスが止まってしまったため、多くの病人、妊婦は医者にかかることができない。この数カ月で少なくとも3万人が自宅や町を追われ、人道支援が届かないために自分で何とかするしかなかった。

政治的無力

ここに紹介した事例を含め多数の証拠があるにもかかわらず、政府は、焼き討ちや強かんなどの人権侵害は行っていない、と軍の関与を全面否定した。

同国の文民政権の事実上のトップであるアウンサンスーチー国家顧問が、今回の事態にどれほどの影響力を発揮できるかは疑問だ。というのも、軍は文民政権の監督外で行動し、いまだに政府でもかなりの権限を持っている。それにしても、アウンサンスーチーさんはロヒンギャに対する残虐行為を批判していない。そうしたくもない、あるいは、そうできない事情があるようである。

現政権は、ラカイン州で軍が行ってきた人権侵害をわざと見て見ぬふりをしてきた。襲撃と殺戮には、弁解の余地はなく、ただちにやめさせるべきである。第三者機関による公正な捜査を行ない、犯罪の容疑者には罪を問うべきである。

バングラデシュの難民キャンプも悲惨

この2カ月間、数十万人のロヒンギャの人びとが、安全を求めて国境を超えてバングラデシュになだれ込んだ。国連によると、少なくとも27,000人だというが、正確な数字は不明だ。

バングラデシュは難民の流入を止めるためミャンマーとの国境を封鎖し、ミャンマーから逃れようとする人びとを拘束または送還している。この対応は、国際法上の違法行為で、ノン・ルフールマンの原則に抵触する。ノン・ルフールマンの原則は、重大な人権侵害を受ける危険のある国・地域への送還を禁止している。

アムネスティ国際ニュース
2016年12月19日