- 2017年2月 5日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:南アフリカ
- トピック:性と生殖の権利
アムネスティとケープタウン大学(公衆衛生・家庭医学部女性健康研究科)の合同調査で、南アフリカでは多くの女性がいまだに合法的な人工妊娠中絶の道を阻まれており、彼女たちはあえて危険で違法な中絶手段を選んでいることが分かった。
南アフリカは、世界でも特に先進的な中絶の法制度を設けているにもかかわらず、多くの女性、とりわけ貧しい人びとにとって安全な合法的中絶手術を受けるのが容易ではない。主な障害となっているのは、医療従事者が中絶手術を拒否することができる「良心的拒否」の慣行があり、国がこの慣行に明確な基準を示していないことである。
社会的地位にかかわらず、女性が自らの妊娠について決断を下す権利は否定されてはならない。ところが、同国では、医療制度に重大な不平等があるため、貧困にあえぐ女性は冷遇され続けてきた。
女性が中絶手術を受けるために医療従事者の情けを求めなくてもすむように、監督する保健省は至急対処しなければならない。
一定の要件で中絶を認める「中絶選択法」が成立してから、今年で20年目を迎える。同法は、妊娠12週間未満なら無条件で、20週間未満なら一定要件で、中絶を受ける権利を認めている。女性のための医療と権利の促進がねらいだ。
ヨハネスバーグの19才の学生は昨年、危険な中絶による合併症で死亡した。国連代表の一人は、同国の医療制度の欠陥や偏見や差別が死亡の背景にあると非難した。また、同国の中絶選択法は満足に機能しておらず、国際人権法上の義務違反になりかねない、とも指摘した。南アフリカは、国内外の人権基準に従い、良心的拒否が中絶を希望する際の障害にならないようにすること、また、中絶制度を機能させ、中絶希望者すべてが遅滞なく適切な手術を受けられるよう保障する義務を負う。
また、良心的拒否の要件と医療従事者の義務に関して混乱が生じている。同国の憲法は、場合によっては医療従事者の良心的拒否を認めているが、緊急時や女性の生命が危険な状態にあるときは、決して拒否はできないとしている。
中絶選択法では、「合法的な中絶への妨げ行為を犯罪とみなし、罰金または実刑を科す」と規定している。
女性の生命・健康・尊厳に対する権利は、いかなる時も医療従事者が良心的拒否を行使する権利より優先されなければならない。しかし、現実はそうなっていない。現状を直ちに是正するために、法規と明確な政策ガイドラインが早急に必要である。
保健省によると、中絶を行う指定医療施設505機関のうち、現在妊娠初期・中期の中絶を行っているのは264機関に過ぎない。
アムネスティは、南アフリカに対し、すべての医療従事者と保健医療施設に向けて、明確な良心的拒否の要件と女性の医療の権利が優先される倫理的義務を課すガイドラインと手順を通達するよう求めている。良心的拒否の権利を行使する場合は、患者への正確な情報提供、他の医療者の紹介、さらに緊急事態の際の中絶手術の実施が義務づけられなければならない。
アムネスティ国際ニュース
2017年2月1日
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