パキスタン:人命軽視の暴力事件相次ぐ

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2017年2月28日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:パキスタン
トピック:「テロとの闘い」における人権侵害

人命を軽視する暴力事件が立て続けに起こる中、ラホールで連続爆破事件が起こった。この2週間、多くの武装勢力が関与したとされる一連の爆破事件で、120人以上の命が奪われ、多くの負傷者を出した。政府は人命を保護する意思があるのか、懸念するばかりだ。

この相次ぐ事件に関わった襲撃者たちを、民間の法廷で公正に裁かなければならない。刑罰には、死刑を除外すべきである。

パキスタンには、市民の生命を保護する義務がある。その義務を果たすにあたっては、国際法および国際基準に則った対応を取らなければならない。残酷で非人道的な方策は、根本的な問題解決にならず、暴力の連鎖を生むだけである。

ラホールの爆破事件の2週間前には、シンド州セフワンにある名高いラル・シャフバズ・カランダル廟で、80人以上が犠牲になった襲撃事件があった。これまでに襲撃事件があったのは、ラホール、クエッタ、ペシャワル、デラ・イスマイル・カーンなどだ。

セフワンの襲撃後、当局は「テロリスト100人を殺害した」と発表した。その「テロリスト」が誰を狙ったのか、どう関わったのか、なぜ法廷で裁かなかったのかなど、捜査や対応の背景は明らかにしなかった。犠牲者は、司法制度にしたがって容疑者の処罰や補償を望んでいるのであり、報復の暴力ではない。

ラホール事件を受けて、軍は新たな対テロ作戦の実施を発表し、民兵のレンジャー部隊に対し、ラホールほかパンジャブ地域での作戦行動に特別な権限を与えた。

アムネスティは同国に対し、治安に関する対応は、国際法が定める責務を順守することを求める。

アムネスティは、カラチで民兵が犯した国際法違反の犯罪と人権侵害を確認して公表した。カラチの住民は、拘禁され、拷問などの虐待を受け、弁護士にも会えず、医療も受けられず、公正な裁判も保障されなかった。

これらの不当な行為は、ラホールのみならず他の地域でも許してはならない。
2014年にペシャワルで起きた学校襲撃事件を受け、パキスタンではテロ関連の犯罪で起訴された者すべてを、民間人であっても裁く軍事法廷が設置された。この1月7日で設置根拠となった法律の運用期限が来て機能が停止したが、議会は現在、この権能を復活させる提案を審議している。

いかなる国でも軍事法廷の裁判は、軍関係者に対する裁判に限定すべきであり、国際法違反の犯罪や人権侵害などの容疑者一般に適用すべきではない。

国際法の観点から、アムネスティは他団体とともに軍事法廷での民間人の裁判に反対してきた。軍事裁判では、強要された自白、不透明な起訴、死刑執行、不公正な裁判など、数多くの人権侵害が発生しており、アムネスティは、その実態を告発してきた。

国は、市民の生命を保護し、安全の提供に努める義務がある。しかし、軍事法廷は、その解決策ではない。生きる権利を奪う暴力に立ち向かう方法は、公正な司法、真相究明、補償であり、さらなる人権侵害ではない。

アムネスティ国際ニュース
2017年2月23日

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