EU:無視される難民・移民の死

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2017年6月28日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:EU
トピック:

世界難民の日の6月20日、リビア沿岸の地中海で少なくとも120人が溺死するという事故がまた発生した。これで、ヨーロッパを目指して地中海で命を落とした難民や移民の数は、今年に入って1,800人を超えた。

こうした悲惨な事故が続く中で6月28日と29日、ヨーロッパ各国の指導者たちは、ブリュッセルで会合を開き、移民問題を協議する。そして、首脳たちが今回の海難事故を嘆くのは、間違いない。しかし、その「嘆き」とは裏腹に、彼らの関心は、人の命を救うことではなく、ヨーロッパに流入する人びとの数をどう減らすか、に絞られる。非正規移民の流入を食い止めるために、アフリカ諸国との協力を強化することなどである。

しかし、この考えにより、先進国と発展途上国の難民受け入れ数の格差は広がるばかりか、人権の旗手を自負する欧州の立場が揺らぎかねない。

このところ欧州各国は、難民らに安全で合法的ルートを提供するのではなく、国境の警備を強化し、難民らを押し戻すことに躍起になってきた。

たとえば、移民や難民を出す国や通過する国の国境警備の強化を支援したり、難民らの保護責任を他国に押し付けている。こうした対処のし方を見ると、難民問題を他国に転嫁しているようだ。これは、人権侵害を助長するおそれがある。


リビアへの支援もその一つだ。欧州の国々は、海を渡ろうとする人びとを押しとどめることを期待して、同国の沿岸警備隊を訓練したり船舶を提供している。人権侵害を煽りかねないという指摘も意に介さない。欧州は今、リビア南部の国境警備力の支援も検討している。

また、リビア沿岸警備隊はこの数カ月、海の安全の確保と国際基準を無視してきた。海上での救助活動中に銃撃することさえあった。EU(欧州連合)が見て見ぬふりをしている間、難民らは危険にさらされ、不法入国と海難事故の件数は増え続けている。

EU各国は、その気になれば対応を変えられる。少なくとも、人権侵害に直面している国からの脱出の足止めに手を貸すのは、やめるべきである。

さらに、難民の流入減少という短期目標に注力するのでなく、難民を生む国の人権保護や避難ルートの安全確保を支援するという思い切った取り組みも求められている。

アムネスティ国際ニュース
2017年6月22日

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