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アムネスティ・レポート2017/18を発表:国主導の憎悪がもたらす社会運動の新たな展開

2018年2月22日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:

  • アムネスティは、2017年の世界の人権状況をまとめた報告書を公表
  • 2017年は世界が人権の危機一色に染まり、世界の名だたる首脳たちが私たちに示した未来社会は、嫌悪と恐怖であふれる悪夢のような世界だった。その結果、差別主義者は勢いづいた。しかし、それ以上に多くの人たちが、希望あふれる未来のために、声を上げた。

世界は、恐るべき事態を迎えようとしている。憎悪に満ちた発言が横行しており、社会的弱者に対する差別や偏見が当たり前となる未来が迫っているように見える。

だが一方で、ベテランの活動家もそうでない人も、共に社会正義のために声をあげ、その動きが広がっている。この運動の拡大は、抑圧的傾向に歯止めをかける大きな希望となった。

アムネスティは、今回の報告書で159カ国を取り上げ、その人権状況を包括的に分析した。

1月、米国政権が、イスラム教徒が大多数を占める国々からの入国禁止という言語道断の政策を打ち出した。嫌悪が透けて見えるこの動きに追随する国もあり、危機的な状況となった1年だった。

少数派を憎み、恐れ、悪者に仕立てるのを良しとする社会の行く末は、ミャンマー(ビルマ)の状況に見て取れる。同国では、軍によるロヒンギャの人びとに対する容赦のない民族浄化が続いた。

世界の首脳たちが人権を踏みにじり、世界的な抗議運動に火をつけた

人権擁護に立ち上がった国家はほとんどなく、世界には憎悪と恐怖がはびこった。エジプトのアッ=シーシ大統領、フィリピンのドゥテルテ大統領、ベネズエラのマドゥロ大統領、ロシアのプーチン大統領、米国のトランプ大統領、中国の習首席などは、数百万の市民の権利を奪うことに余念がなかった。

ミャンマー、イラク、南スーダン、シリア、イエメンなどでは、人道に対する罪や戦争犯罪があったが、各国の反応は鈍かった。この無関心さは、人権課題に対するリーダーシップの欠如を物語る。何十年にもわたる闘いで勝ち取ってきた人権に対し、各国は臆面もなく時計の針を戻そうとしている。

その兆候は、フランスでの抗議する権利に対する弾圧、米国、ロシア、ポーランドなどでの女性の権利の後退などに表れた。

人権に背を向けるトランプ大統領の姿勢は悪しき前例をつくり、他国の政権も追随するだろうと、アムネスティは指摘してきた。

しかし、たとえ政府が人権をないがしろにしても、米国の市民はひるまなかった。トランプ大統領は内外で人権を侵害する政策を取ってきたが、米国を見ていると、普遍的人権のために声を上げ、権利を勝ち取るのは、その地の市民だということを、あらためて気づかされる。

後ろ向きの政治に反発した人たちが、人権を擁護する闘いに粘り強く参加し、数多くの大きな勝利を収めた。例えば、チリでの妊娠中絶全面禁止の緩和、台湾での婚姻の平等への前進、ナイジェリアのアブジャでの強制立ち退きに対する勝利などである。

米国が中心となって行われた世界的規模の国際女性デーの行進は、新たな社会運動が大きなうねりとなった好見本だ。「#MeToo」現象や、女性への暴力を糾弾するラテンアメリカでの「Ni Una Menos(もはや一人の女性も犠牲になってはならない)」などもそうだ。

不屈の精神で人権運動を率いる女性を目の当たりにして、私たちは、平等、尊厳、正義への希求は、決してとどまることを知らないことをあらためて学んだ。抗議の動きが世界に広がっているという確かな感触が得られた。もし政府がこうした動きに立ちはだかるならば、その正当性が問われるだろう。

重要や役割を担う言論の自由

国の首脳たちが、フェイクニュースを称賛して世論操作をしたり、権力を監視する団体への攻撃に熱を上げている状況からみて、2018年の人権の主戦場は、言論の自由となることがわわかる。

2018年は、抗議集会や政府批判の自由は当たり前ではなくなるだろう。実際、正々堂々と自分の意見を述べることは、ますます危険になっている。

世界では昨年、声を上げる人たちやメディアに対する弾圧で、数百人が命を落とした。ジャーナリストの投獄が最も多いのは、トルコ、エジプト、中国である。その中国では、人権を擁護して投獄されたノーベル平和授賞者の劉暁波(Liu Xiaobo)さんが、末期がんの末、当局の監視下で亡くなった。各国政府が人権のために活動する人たちを臆面もなく標的にする中、アムネスティでも、ハンガリー支部の活動が圧力を受け、トルコでは理事長と支部局長が拘束された。

政府は、人権のために活動する人たちの摘発が解禁になったと思っているらしい。今日もどこかで新聞社が閉鎖され、裁判官が骨抜きにされ、声を上げる人たちが投獄されるかもしれない。しかし、私たちの口を封じることはできない。人権のために身をなげうった劉暁波さんから学ぶとすれば、「不可能に見える時にこそ、権力者に真実を伝えなければならない」ということだ。

アイデンティティーを攻撃する憎悪の広がり

報告書では、世界各地で見られる憎悪発言に対し、声高に異議を唱え続ける必要性を強調した。ポーランドのワルシャワでは、国家主義者たちが外国人嫌悪のスローガンを叫び、米国のシャーロッツヴィルでは、白人至上主義者たちが集会を開き、チェチェンやエジプトなどでは、LGBTIの人たちが大勢弾圧を受けたり拘束されたりした。これらの動きに対して決して屈してはならない。

政府高官ですら難民や移民を悪しざまに言うのだから、なおさらである。トランプ政権は反難民発言で新聞の見出しを飾り、人権の後退を示す象徴となったが、外国人嫌悪の政策を進める政権は、米国だけではない。

オーストラリアやハンガリーなどの政府は、長きにわたり難民や移民を厄介者扱いし、思いやりを注ぐべき人間、権利を持つ人間として扱ってこなかった。

不当行為と抗議活動の連鎖に政府は向き合うべき

また世界では、何百万という人が、住居、食料、医療など生きる上で欠かせない物資やサービスにも事欠いている。貧困や不平等問題の根本にメスを入れなければ、さらに深刻な社会不安が起こりかねない。

世界は、十分な食料と清潔な水、適切な住居や医療サービスを得られないため、悲惨な生活を強いられている人たちであふれている。こうした権利さえも奪われたとしたら、残るのは、絶望だけだ。ベネズエラやイランをはじめとした多数の国で、社会への不満が急速に拡大している。

政府は、声を封じるのではなく、耳を傾け、不安の解消に取り組まなくてはならない。また、報道機関や市民団体など権力の監視役への規制を緩めるべきだ。

私たちは、より多くの人たちが立ち上がり、正義を求め歴史が作られる瞬間に立ち会っている。もし、一国の指導者が、なぜ市民が抗議するのかを理解できなければ、最後に待ち受けるのは、その政権の崩壊である。彼らは人権を求めると、はっきり訴えている。政府が聞く耳を持っていることを、今こそ示す時だ。

アムネスティ国際ニュース
2018年2月22日

 

アムネスティ・レポート2017/18をダウンロードする(英語他)

AMNESTY INTERNATIONAL REPORT 2017/18:THE STATE OF THE WORLD'S HUMAN RIGHTS

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