ミャンマー(ビルマ):ロヒンギャ迫害から1年 問われぬ責任

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2018年8月29日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ミャンマー(ビルマ)
トピック:先住民族/少数民族

ラカイン州北部で、治安部隊による大規模な掃討作戦により、70万人以上のロヒンギャが、ラカイン州北部から隣接するバングラデシュに逃れた。あれから1年が経過したが、国際社会による実効性ある対応もなく、人道に対する罪を犯したとされる国軍幹部らの責任が問われない事態が続いている。

なんとも情けない限りだ。国際社会が、彼らの責任を問わないのは、今後も残虐行為を容認する、と言っているようなものである。

現在、バングラデシュの難民キャンプで暮らすロヒンギャにとって、先行きが見えない状況が続いている。今後も国軍の責任が問われない限り、ロヒンギャ難民が、自分の意志で帰国し、安全で尊厳ある生活を送ることは、期待できない。

終わりなき民族差別

国連機関とミャンマー政府は6月、「バングラデシュからロヒンギャ難民を帰還させる取り組みの一歩」として覚書に署名をした。ただ、その合意内容は、一切公表されなかった。

今後、ロヒンギャの帰還を可能にするには、ミャンマーは、ロヒンギャに対する対応を抜本的に変える必要がある。

各国は、ロヒンギャを差別する制度や姿勢を断ち切り、ロヒンギャや他の少数民族が、国籍を得る権利や移動の自由の権利を行使できるよう、ミャンマー政府に強く働きかけなければならない。

国連による調査報告

治安部隊が残虐行為を犯してきたことを裏付ける証拠は、数多い。国連が近日中に発表するミャンマーのロヒンギャ問題の報告書で、その証拠はさらに増える。

つまり、国際社会が動かないのは、証拠がないからではなく、政治的意志がないことによるのだ。国際社会が手をこまねいている間に、こうした重要な証拠類が処分されるなどして消失するおそれがある。

許してはならない残虐行為の隠蔽

5月末、拡大する国際的圧力に応える形で、ミャンマー政府はラカイン州での人権侵害行為を調査する独立諮問委員会を設置すると発表した。しかし、委員会の議長が記者会見で「疑わしい者を特定したり、責任を追及するものではない」と発言しており、その実効性は、これまでと同様、期待できそうにない。

これまでにも同様の諮問委員会が3つ設置されたが、ロヒンギャに対する残虐行為を隠蔽する結果に終わってきた。国際社会が動くまでの時間稼ぎであることは明らかである。

今こそ責任追及のとき

アムネスティは6月の報告書で、治安部隊の残虐行為を主導したとして、上級大将のミンアウンライン最高司令官含め、国軍幹部13人の名を挙げた。また、彼ら加害者を責任追及する上での具体的な方策も提言した。国連安全保障理事会による国際刑事裁判所への付託や、刑事訴訟手続きに有用な証拠の収集と保存に向けた国際的組織作りなどだ。

EU、カナダ、アメリカは最近、掃討作戦に加担したうちの数人に制裁を加えることを発表したが、国連においても、実効性ある責任追及に向けた、より強力な対応を至急、取るべきである。

9月には国連人権理事会と国連総会が開かれる。今こそ、ロヒンギャや少数民族の正義に道を切り開く行動が必要である。

アムネスティ国際ニュース
2018年8月24日