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人権の「今」がわかるニュース

イベント報告【イベント報告】武蔵野学院参観報告

国立武蔵野学院は、「児童自立支援施設」と呼ばれる施設の一つです。児童自立支援施設とは児童福祉法の規定に基づき全国に設置されている施設であり、さまざまな事情により不良行為(触法行為)に及んでしまった18歳未満の児童の支援を、児童相談所からの要請(措置)により行う施設です。

多くは地方自治体により運営されているのですが、この武蔵野学院は全国に2カ所しかない「国立の施設」の一つです(もう一か所は国立きぬ川学院)。国立施設は他の施設では対応が難しいケースの児童の支援機関、いわば「最後の砦」として機能していることから、人員配置や設備等は手厚いものとなっています。特に医療面においては医師、看護師、心理士が常勤として配置され、これは他の施設に比して相当充実した環境であると言えます。

国立武蔵野学院は男子児童を対象とする施設であり(もう一つの国立施設、きぬ川学院は女子児童を対象とする施設です)、収容定員は41名、その創立は大正8年(1919年)にまで遡り、間もなく開院100周年を迎えます。

入所する少年は12~15歳のおおよそ中学生年齢です。彼らは全国の児童相談所から措置(依頼)されて同院に来ており、さまざまな地域の少年が生活を共にすることになります。なお、少年たちのうち約7割は虐待被害経験があり、約8割は精神科的ハンディキャップを抱えているのが現状です。また、半数近くが母子家庭の子であり(両親が揃った家庭の子は2割)、社会的な課題の存在もうかがわれます。

同院は「小舎夫婦制」という処遇方式により運営されています。この方式は寮父と寮母と呼ばれる住み込みの夫婦が職員として少人数(10名前後)の児童の処遇にあたるもので、疑似的とはいえ家庭に非常に近い環境を形成して濃密な支援を行えることが特徴です。夫婦が揃って職員として就業、稼働することが求められるため人材の確保が容易でなく、全国的にはこの処遇制度を維持している施設は減少傾向にあります(多くはシフト制交代勤務により処遇を実施しています)。

児童福祉制度上の難ケースに対する「最後の砦」としての役割を担う同院は、「強制的措置」と呼ばれる処遇が可能となる設備を有しています。他にこの処遇を実施できるのはやはり国立の鬼怒川学院のみであることから、現状では「強制的措置」は国立施設だけに許されたものになっています(かつては一部の地方自治体運営の施設でも実施)。児童福祉法に基づく施設では開放処遇が原則とされ、支援対象となる児童が施錠された環境下に置かれることは基本的にありませんが、この「強制的措置」はその例外にあたり、対象児童を施錠可能な空間において処遇するものです。

この措置は情緒不安定等に起因する粗暴傾向を有する少年、すなわち「自傷他害のおそれのある児童」に対して児童本人および周囲の安全確保のために実施され、対象児童を管轄する児童相談所による家庭裁判所への申し立てと、同裁判所による許可を経て行われます。強制的措置を行える日数の上限は家庭裁判所により決定され(多くは100日前後)、これより長期に渡って施錠可能な環境で処遇することは許されません。加えて、この上限はあくまでも「合計日数の上限」であり、強制的措置は極力3週間以内で一度区切りをつけるべきこととされています。やむを得ず連続3週間を超える場合には、同院より、その管理機関(上級庁)にあたる厚生労働省に意見具申が行われ、第三者委員会にも報告がなされます。

強制的措置に用いられる施錠可能な部屋は約10平方メートルであり、専用の洗面所・トイレが設置されているほか、木製の室内備品に加え広い窓を設けて明るく温かい雰囲気が生まれるように配慮され、少年の情緒安定に資する空間になるよう図られています。

全国の児童自立支援施設の教導的施設にあたる同院には人材養成・研修機関も付属して設置されており、新たな専門的人材の養成や関連施設の職員の研修等も実施されています。

国立武蔵野学院は埼玉県内に東京ドーム2.5倍の敷地を有して所在し、6つの寮を中心として、このほか年長児向けの自立支援棟(単身生活の訓練施設)や、家族関係を調整するための棟(家族との同居生活を演習する設備)に加え、学習棟(学校に準ずる設備)やグランドをはじめ体育館やプール、テニスコートを擁する体育施設、そして運営事務設備と農耕設備(少年たちの実習用)から成り立っています。上述のとおり小舎夫婦制を採用している同院では、一つの寮に寮父と寮母、児童(10名前後)が生活を共にしています。児童用の居室は一寮あたり4部屋設けられ、1部屋の定員は3名となっています。

同院の学習棟には近隣公立中学校の分教室が設置され、施設外とおなじ水準の教育が実施されています。もっともクラス編成は本来の学年に拘わらず個々の児童の習熟度に応じたものとなるように配慮されています。また、高校生相当年齢の児童への支援も行われており、通信制高校への在籍や、就業に利する各種資格取得に向けた講座も設けられています。なお、国立武蔵野学院と、同院内の中学校分教室は別組織にあたりますが、職員事務室は同じ空間内(学習棟)に設けられ、日頃からの施設と学校の連携円滑化が図られています。

少年たちの日課は7時の起床に始まり、8時頃~16時頃までの学習棟での学習(学校教育)、その後のレクリエーション活動(クラブ活動に準ずる運動)、そして17時以降の夕食および入浴、自由時間を経て21時に消灯する、というものになっています。なお、上述した「強制的措置」が実施されている児童については特別の日課が組まれます。以上の日常的日課のほか、同院は年間行事も充実しており、各種スポーツ大会や集団外出企画等、月毎に様々な行事が計画されています。

少年たちの入院期間は平均約1年(長い場合は2年)です。退院後については、約4割の少年は家庭に帰ったうえで学校へも復学あるいは進学しますが、約3割の子は児童養護施設等の他施設へ移送(措置変更)され、引き続き社会的養護を受けることになります。

以上、国立武蔵野学院の参観報告をいたします。参観当日は学院職員の皆さまより厚くご協力いただきましたこと、深く感謝申し上げます。

報告者:国内人権ネットワーク会員

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実施日 2019年1月25日(金)
場所 武蔵野学院
主催 アムネスティ・インターナショナル日本 国内人権ネットワーク

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