2020年2月25日、兵庫県加古川市にある、1年以上8年未満の刑期でA級指標(犯罪傾向が進んでいない受刑者)の男子のみを収容対象とした刑務所、播磨社会復帰促進センターを8名で訪問しました。

ここは、日本に4箇所しかない、民間資金とノウハウを活用して公共施設の建設・維持管理・運営を行なうというPFI(Private Finance Initiative)手法を導入した、珍しいPFI刑務所の一つです。

本来のイギリス発祥のPFIは、建設資金までをも民間活用で賄うことになっているそうですが、ここは、平成17年に着工開始された翌18年にPFI方式の導入が決定された経緯から、建物は民間資金ではなく国費で建てられているそうです。しかし、外来者が最初に訪れ目にする管理棟は、2階まで吹き抜けとなった広大なエントランスを持った明るい建物で、刑務所へ来たことを忘れてしまいそうな開放的な印象で、ここを見ただけでも民間の経営感覚を感じる思いがします。エントランス奥に設置されたレストランは、ランチタイムには一般にも開放されているそうですので、もしかすると外来客に見られることも意識した作りになっているのでしょうか。

過去、インフルエンザ流行の時期は、どの刑務所でもウイルスの持込みをかなり警戒されましたが、今回は、さらに警戒感の強い新型コロナウィルスの感染が拡大し始めた時期に重なってしまいましたので、直前までもしかしたら中止かも?と思っていたのですが、当日は意外にあっさりと管理棟内へ案内されました。しかし、それは管理棟まで。これまでマスクが配られる刑務所はありましたが、今回はマスクに加えて、体温チェックも一人ずつ厳密に行われる徹底ぶりで、37.5度以下でなければ管理区域への立入りはお断り、という厳戒態勢が取られていました。

その管理区域参観に先立ち、まずは施設の概要説明を10分ほどのDVD動画も交えて、民間側職員の方から受けました。それによると、このセンターの運営を行なうための特別目的会社(Special PurposeCompany:略称 SPC)「播磨ソーシャルサポート株式会社」が設立され、センター長と調査官以外のほとんどすべての部署に、国とSPCの双方から職員が配置され協働しているとのことでした。ただし、暴れる受刑者を取り押さえたり、懲罰のための拘束といった公権力行使の業務・行為については国の職員のみが担っているそうです。

そして、当センター開所に合わせて、加古川市が構造改革特区(播磨社会復帰促進センター等PFI特区)に認定され、その制度のおかげで、受刑者の居室の抜き打ち検査といった保安検査の一部から、健康診断や教育プログラムといった事務仕事、さらには職業訓練や刑務作業の指導までをもが、ここでは民間職員でもできるようになっているそうです。

特に強調されていたのは、国職員の経験と民間のアイディアとノウハウを活かした運用を行なっている点で、ハード面では、SPC設立母体の一社である「綜合警備保障」の監視カメラシステムを活用した24時間監視態勢と非常時における瞬時の対処態勢、また「大林ファシリティーズ」によるハコモノの維持管理、そして同様にSPCの母体である「東レ」によるアドバイスから、従来のものより機能性と強度に優れた受刑服の採用、など、既存の刑務所システムのそこここに、民間のノウハウが投入されている、といったお話しを聞かせていただきました。

またソフト面では、入所から社会復帰に至るまで民間のアイディアが活かされているとのことで、刑務作業や職業訓練といった工場技能系作業だけでなく、医療介護系やパソコンを使ったIT関係の職業訓練、販売などのサービス産業系の職業訓練など、様々なプログラムが実施されており、出所後の職業探しのチャンスが広がるよう、民間からの提案に国の承認を取り付けることで多種類の職業訓練を行っている、とのことでした。

こうして、ハード面からソフト面に至るまで、多くの業務を民間職員に移したことで、刑務官は、本来の業務である受刑者の処遇や施設の規律秩序維持に専念できるようになり、公務員側の待遇も、ここでは他刑務所に比して向上しているそうです。どの刑務所を参観しても、刑務官の激務ぶりや中途退官者が多い話を聞きますが、今回は、所内見学後の質疑応答で答えていただいた、"職員の有給取得日数"に対する答えに「約17日、これは画期的な数字です!」と力を込められていた姿が、やけに心に残っています。

またこのセンターを更に特質づけている特徴の一つとして、精神疾患や知的しょうがいを持った受刑者に特化したユニットが挙げられます。NPOなどの協力によるアニマルセラピーや、農作業などの作業療法的な職業訓練も行なっているとのことで、他の刑務所では見かけることのない、作業療法士など専門資格を持った職員も在籍しているとのこと。さらに、他刑務所では人員確保に苦労されていることが多い常勤の医療従事者が、ここでは看護師4名(さらに有資格刑務官による准看護師2名)に加えて、医師も2名が常時勤務されている点も、珍しく感じました。

全員無事検温をクリアして足を踏み入れた管理区域は、刑務所としてはまだ新しい部類に入るであろう築12年の建物。他の刑務所のグレー一色しか記憶に残らない昭和の面影を引きずった雰囲気とは違って、意匠を凝らしたペインティングが施された通路ドアなど、全体的に近代的な印象を受けます。そのあたりも、規格で画一化された国のハコモノ造りとは違って、民間のデザイン感覚が反映されているせいなのかもしれません。

しかし、いざ建物の中に入って居室を見ると、部屋の入り口からはトイレの便器が丸見え! 便座に腰掛けた時に首から下を隠せるように用意された、白い半透明の板が便器横の壁に立て掛けられていましたが、恐らくここが開所した当時の保安基準では、用便中でも監視窓から全身が丸見えになっていなければならなかったのでしょう。そんな細かいところを見ると、やはり12年の時間の経過を感じさせられる建物です。それでも、廊下にはセントラルヒーティングによる暖房設備が設けられたりして、古い刑務所に比べると、やはり新しい分、居住性は確実に改善されている感を受けました。

居室は、共同室と単独室に分けられていますが、1000名の収容定員に対して、現在の収容者数は466名(参観当日現在)しかおらず、今は個室しか使っていない、とのことでした。後の質疑応答中に語られた話では、かつて増加の一途にあったA級指標者の収容場所確保のために、民間資本を入れてハコモノを増やそう、という苦肉の策で作られたのが4箇所の社会復帰促進センターだったそうです。それが今では受刑者減で、ここでは半分以上の部屋が余ってしまうことになった、といった事情があるとのこと。また現在、当センターでは、保護室送りとなる人数が昨年は2名だけしかいなかったが、それだけ受刑者が落ち着いている原因は、当センターならではの全員 個室化が背景にあるのではないか、ストレス軽減に役立っているのではないか、といった、最前線にいる職員の方でなければ感じることのできないであろう私見も交えた、興味深いてお話も、いろいろと聞かせていただきました。

その質疑応答中に出てきた話で、他の刑務所ではあまり聞いた記憶のない話ですが、ここでは出所前に受刑者の同意の上でハローワークに直接情報を提供しているそうです。まだ件数は多くないそうですが、収容中に企業面接までして、出所後の仕事が決まるケースもあるとのことでした。出所後の生活基盤をいかに確保していくかといった課題は、全国の刑務所でも頭を悩ませる問題ですが、このように、釈放前からのハローワークや保護観察所と連携した就労支援は、他刑務所でも、積極的に検討されて然るベしかと思います。しかし現実には、せっかく仕事に就いても我慢が足りないのか、ある日突然ふっと消えて職場放棄、といった残念なケースも少なから ずあるんです...、裏切られるのが職員のやる気を削いでしまうこともあるんです...、と寂しそうに語られていた職員の方の力ない声に、人を相手にしたマニュアルのない仕事のつらさも、垣間見させられた参観でした。

報告者:片桐(国内人権ネットワーク)

実施日 2020年2月25日(火)
場所 播磨社会復帰促進センター
主催 アムネスティ日本 国内人権ネットワーク