国際人権法 - 自由権規約委員会による日本審査:国内人権機関

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自由権規約委員会は、前回の2008年に続き、国内人権機関を設置するよう求める勧告を出しました。最初の勧告は1998年でした。しかし、日本では現在も、国内の人権を守るための人権機関が設置されない状況が続いています。

委員会からは、前回の勧告から進展がないこと、また2011年に出された国内人権機関の設置に関する法案が廃案となった後に進展が見られないことに対しても、強い懸念が示されました。

日本は、国家機関の地位に関する原則(いわゆる「パリ原則」(※後で説明))に則り、様々な人権に対応できる、また政府から独立した機関であり、財政や人材が設置することが再度強く求められました。

国内人権機関とは?

国内人権機関とは、裁判所とは別の機関として、あらゆる人権侵害からの救済と、人権保障を促進するための国の機関です。現在、世界ではすでに110を超える国や地域に設置されています。国内人権機関には、

  • 国の法律や行政の活動が国際的な人権を守る基準となるよう、提言し、意見を述べる役割
  • 保障されるべき、守られるべき人権が侵害された時に調査をし、救済する役割
  • 一般市民だけでなく、裁判官や法を執行する人たちに対しても、広く人権について教育を実施する役割

が求められています。これらの役割や機能を果たすことができるためには、

  1. 政府から独立した機関であること
  2. 権限や機能が明確であること
  3. 機関への申立てや相談の手続きが容易であること
  4. 市民団体やNGO、国際機関などとの協力・連携

が大切になってきます。

では、国内人権機関が果たす役割として、特に大切で重要なポイントとなる、①政府の政策などへの提言機能、②政府から独立した機関であること、この2点について見ていきましょう。

国内人権機関:役割①政府への政策提言

国内人権機関は、その国内での人権状況をより良いものとするため、また、現在起きている人権問題に対して、現在ある法律の改善や、また新たな政策を提案するために、独自の見解を示すことが求められています。おもに、侵害されている人権の実態を知らせるための現場からの提言、人権専門家としての提言、市民社会からの声を反映した提言という3つの側面が、すでに存在している世界の国内人権機関から見られます。

オーストラリアの国内人権機関である、オーストラリア人権委員会の事例を見てみましょう。2010年、オーストラリアでは、障がい者から、障がいがあるために受けるさまざまな差別について意見が寄せられていました。それらの意見をもとに、委員会は「障がい者に対する差別を禁止する基準」をつくり、政府へ提言しました。結果、障がい者の人権を守る法律の中に、新たに差別を禁止する基準が設けられました。

法律が変わり基準が明確になることで、たとえば建物を1つ建てるにしても、障がいのある人がより利用しやすい建物となることが叶ったのです。人権侵害の訴えから、現在の政策への意見を出すことで、さまざまな人がより暮らしやすい社会に近づくことができるのです。

ところで、国内人権機関が、裁判所と異なる機関である必要性や、国から独立した機関である必要があるとは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか?

国内人権機関:役割②政府から独立した機関であることの重要性

例えば、外国から来た人が、家を借りようとしたら、不動産屋に「外国人である」ことを理由に断られてしまいました。このことを、現在の手段である、裁判所に訴えようとするとどうなるのでしょうか?

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⇒誰でも素早く人権問題を訴えることができるような手段が求められており、かつ費用が安く抑えられる機関であり、人権の問題をとりわけ抱えやすい、外国人や障がいのある人たちもより身近に、問題を提示できる機関として、国内人権機関は求められているのです。

また、裁判所には人権を保障する政策提言をする役割はありません。だからこそ、起きている人権問題に対する新たな政策を作るための提言や、また現在すでにある、国や行政がおこなう政策や、存在する法律の改善を求める意見を独自に言えるような、国の人権政策を独立してチェックする機関も、必要とされているのです。

「国家機関の地位に関する原則」とは

国内人権機関について語る際に必ず出てくる原則が、「(国連)パリ原則」です。これは通称名であり、正しくは「国家機関の地位に関する原則」といいます。1993年12月の国連総会で決議されました。この原則には、国連加盟国が国内人権機関を設置するために求められる要件や役割、機能などが明記されています。

このパリ原則の中で、また国内人権機関を設置する上で一番重要になるのが「独立性」の確保です。前述したとおり、国内人権機関は人権を保障するため、行政や国の法律をチェックし、必要に応じて意見を述べることが重要な役割です。ですから、政府や特定の政党、また地方の影響を及ぼすものではなく、あらゆる機関から離れ、独立して行動することが必要不可欠なのです。このことがパリ原則の中に詳しく書かれているのです。

以下が主な独立性の内容です。

権限と責任からの独立性

  • 人権を保護する権限が付与されて、政府や行政から介入などを受けることなく、機能を果たすことができること
  • 日々の業務も機関以外からも独立して執り行うことができ、またその職務が法律で定められること
  • 自らの権限で政府や関連機関に対し意見や提案を提出することができること

構成の多様性

  • 機関の構成と構成する人びとの任命は、多様な人権に関わる集団の中から手続きを踏まえておこなわれること

財政の独立性

  • 機関の活動をおこなうための財政は、政府機関の中におかず、機関だけの財政、職員、建物を所有すること
  • 機関の予算はどの政府機関とも連携していないことが望ましい

任命の独立性

  • 任命は、独立した機関であることが前提のため、構成員の権限を保つため、一定期間を定め、公的な決定がなされること

これまでの日本の動きとこれから

日本ではこれまで、「人権擁護法案」として法務省内に人権委員会を置くことを中心とする法案が立案されてきました。しかし、パリ原則からすると、この法案では機関の独立を保つことができません。

2012年になり、新たに「人権委員会設置法案」が提起されましたが、この委員会も法務省の外局という位置付けでした。結局、この法案も国会解散とともに廃案となってしまいました。

今後、新たな法案を国会に出すにしても、国連の勧告をはじめとする国際社会の要請に応えるためには、「独立性」を確保できるかどうかが大きな鍵となると言えるでしょう。

アムネスティの見解

アムネスティは、国内人権機関の設置を求める意見書を2011年12月に提出しています。この意見書は、機関の独立性、財源の独立性、幅広い人権問題が扱われること、できるだけ多くの、さまざまな市民が選任されることが求められています。

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