国際人権法 - 自由権規約委員会による日本審査:代用監獄制度

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2014年の自由権規約委員会による勧告において、代用監獄制度は深刻な問題と見なされています。

これは、被疑者(罪を犯した疑いのある者)の身柄拘束に関連して生じる問題をさします。代用監獄制度の下、被疑者は密室で取調べを受けることになり、自白強要の危険が高く、虚偽の自白の温床になっているとして、前回2008年に引き続き勧告を受けました。また、早期の身柄解放や国選弁護人請求権の範囲、虐待など不当な取調べが行われていないかを確かめるための取り調べの全過程の録音・録画についても、引き続き指摘を受けました。

取調べと冤罪事件

逮捕されて身柄が拘束され警察の下に置かれている間、被疑者は取り調べを受けることになります。日本の捜査当局の取調べは自白偏重であり、しばしばウソの自白を生じさせる過酷なものであると指摘されてきました。DNAの再鑑定で無罪が確定した足利事件をはじめ、これまでに多くの冤罪事件が発生しています。選挙に絡む買収の有無に関して争いとなった2003年の志布志事件や、真犯人が逮捕されたことで冤罪が判明した氷見事件など、21世紀になってなお警察などによる取り調べには多くの問題が残されています。

こうした冤罪が発生する背景事情として、捜査当局と身柄拘束を担当する部署が同一の警察署内に置かれ、いわば目の届きにくい密室を作り出してしまう代用監獄の存在が指摘されています。

警察留置場での身柄拘束

被疑者は、警察に逮捕され身柄が拘束されてから48時間以内に検察官に送られます。検察官は24時間以内にその被疑者を起訴するかしないかを決定することになっていますが、さらにしばらく身柄を拘束して取り調べる必要があると判断した場合、裁判所に勾留状の発布を要請し、10日間の勾留を開始します。勾留中の被疑者の身柄拘束は、原則として警察留置場ではなく法務省管轄の刑事施設である拘置所で行うとされています。

しかし、監獄法では、拘置所に代用して警察留置場に収容することも可能としたため、実際には原則と例外が入れ替わってしまい、勾留中は警察留置場で身柄を拘束されることがほとんどです。監獄の一種である拘置所に代用して警察留置場を使用することから、代用監獄と呼ばれます。監獄法は2006年に「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」が制定されたことに伴い廃止されましたが、新しい法律のもとでも、警察の留置施設での身体拘束が正式に認められています。

長期の身体拘束期間

勾留はさらに10日間延長させることができ、合わせて逮捕時から起算して一事件につき最大23日間警察留置場での身柄の拘束が可能です。この捜査当局による身柄拘束期間は、世界的に見て異常なほど長いと言われています。他の先進諸国では、起訴される前の被疑者の身体拘束は通常1、2日程度に限られています。英国では凶悪犯罪が起こった場合に限り4日間の身体拘束が認められますが、これですら長いと批判されています。長い期間社会から遮断することは、被疑者を精神的・肉体的に疲労困憊させます。こうした状況で「身柄拘束期間を短くするから、ホントウのことを話しなさいよ」などと唆されるとついウソの自白をしてしまう可能性があります。

身柄解放の制限

起訴前に身柄拘束を解く保釈制度もあるものの、現在は起訴され裁判にかけられることが決まった段階以降にのみ認められており、逮捕されてから起訴されるまでの間は認められません。その間被疑者は社会から遮断され、ますます追いつめられます。他の先進諸国においては、単に身柄を拘束されているだけの被疑者についても広く保釈が認められています。日本は、起訴前保釈制度の導入についても自由権規約委員会から積極的に運用するよう改善勧告を受けています。

弁護士の立会の制限

長い間身柄を拘束されている被疑者にとって、面会に来る弁護士や家族はかけがえのない存在です。被疑者が弁護士や家族と面会することは可能ですが、弁護士は取り調べを受けている被疑者への立会は認められず、弁護士以外との面会は捜査取調べの状況如何により禁止されることもあります。さらに、被疑者に対して国選弁護人を付けることが認められるのは一部の事案に限られています。

2015年5月現在、刑事司法制度改革により国選弁護人請求権の範囲を広げようとする動きが進んでいるものの、改革案でもすべての被疑者について弁護人を付けることを国に求めることまでは想定されていません。すべての被疑者が弁護人の援助を受ける権利を持たないことは問題であり、自由権規約委員会からも改善勧告を受けました。ただし、いざ弁護人が選任されても取調べへの立会が認められず、面会が制限されることも問題です。

取調べの可視化

このように被疑者は密室で助けを求めることもできず、長時間の取調べを受けるおそれがあります。その過程で拷問や虐待を受ける危険性も指摘されています。
取調べ過程が適切に監視されていれば、自白強要の危険は下がるでしょう。取調べの全過程を録画し、自白強要などがなかったかを確認できるようにすることは、公正な裁判を確保するために必要です。取調べの全過程の録画制度の導入は、刑事司法制度改革の焦点でした。しかし、2015年に刑事訴訟改正法案に盛り込まれた内容では、全刑事事件のわずか2%程度しか録画の対象になりませんでした。

アムネスティの見解

アムネスティ・インターナショナルは、代用監獄制度が自由権規約14条1項で保障されている公正な裁判を受ける権利を侵害し、冤罪を引き起こす危険が大きいと懸念を表明してきました。また、起訴されるまで最大23日間にもわたり身柄が拘束される可能性がある点について、自由権規約9条3項に違反すると主張してきました。そして長時間の取調べに対する規制がないこと、弁護人との面会の制限、取調べ過程の全面的な録音・録画がなされていないことについても重ねて懸念を表明しています。

用語解説

被疑者

罪を犯した疑いのある者をさします。起訴されることが決まると被疑者は被告人という立場に切り替わり、刑事裁判を受けることになります。

逮捕・勾留

犯罪の疑いが生じた場合に、はじめに警察留置場や拘置場で受ける身体拘束を逮捕といい、72時間まで行うことができます。その後、証拠隠滅や逃亡をすると疑うに足りる相当な理由があるときに逮捕に引き続いてされる身体拘束を勾留といい、多くの事件で最大20日間まで行うことができます。逮捕、勾留いずれの場合も、逮捕状、勾留状とよばれる裁判官の発する令状を得て行われます。(逮捕の場合は現行犯逮捕など、令状が不要とされる場合もあります。)

国選弁護人

国選弁護人とは、逮捕・勾留された人が、資力が乏しいことなどを理由に自ら弁護士を呼べない際に、国が弁護士費用を負担して選任する弁護人のことです。活動内容としては私選の弁護人と同じ弁護活動をしてくれます。現在の法律では、一部の重大犯罪を行った者にしか国選弁護人を請求する権利が認められていません。

警察留置場・拘置場

警察留置場とは都道府県警察に設置され、逮捕・勾留された人の身柄を収容することが法律で認められる施設をいいます。したがって警察留置場は警察署の管理下にあるといえます。これに対し、拘置場も逮捕・勾留された人の身柄を収容する点では警察留置場と共通していますが、死刑確定囚が収容されていること、法務省の管理下にあることなどが警察留置場と異なります。

保釈:住居限定や保証金の納付を条件として、勾留されている被告人の身柄の拘束を解く制度です。現在の法律では起訴されたあと、つまり被疑者が被告人となった後にしか認められていません。

刑事司法制度改革:代用監獄や取調べの可視化の問題の改善など、実際に生じた事件もふまえつつ、刑事司法に関する問題を法制度から変えていこうとする一連の立法化の動きをさします。

逮捕されてから起訴されるまで(イメージ図)

日本審査:先住民族へ

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