LGBTI - 7つの前進

更新:2020.06.12

2020年6月、激動の時代を生きる私たちは、甚大な人権侵害が世界中で発生していることに、目を背けたくなることもあるかもしれません。でも、覚えていてください。希望の光は日々、世界中でうまれ続けています。そして、すべての人たちの人権が尊重される世界が実現されるまで、私たちは歩み続けなければなりません。昨年から今日までの一年の間にも、多くの人びとの支援により、世界のさまざまな国で、LGBTIの人たちを取り巻く環境にポジティブな変化が生まれています。その中から、7つの出来事を紹介します。

コスタリカで同性婚が可能に 中米では初めて

コスタリカで同性婚が可能に 中米では初めて

2020年5月26日、中米諸国で初めて、コスタリカで同性婚が可能になりました。同性婚への決定打となったのは、2017年に米州人権裁判が、そして2018年にコスタリカの最高裁判所が、同性カップルの権利を支持する判決を出したことでした。最高裁判所は、2020年5月26日までに同性婚を整備するよう議会に求め、期日をすぎると自動的に同性婚が法制化されるという判決を下したのです。

期日を迎えた5月25日未明、同性婚の法制化が確実となり、人権活動家たちは心から、これを祝福しました。コスタリカの大統領は、「共感と愛が、これからの私たちが、私たちをさらなる進歩へと導く基本理念となります」とツイート。

コスタリカは、国連加盟国の中で同性婚を法律で認めた、28番目の国になりました。

香港の裁判所が画期的判決 同性カップルも公共住宅へ入居可能に

香港の裁判所が画期的判決 同性カップルも公共住宅へ入居可能に

香港での同性婚は、まだ法律では認められていません。2018年、ニック・インフィンガーさんと彼の夫はカナダで結婚した後、2018年の3月に香港の公共住宅の「一般家庭」の枠に入居を申し込みました。ところが、インフィンガーさんたちが「夫と妻」ではないことを理由に、香港政府は彼らの入居審査を拒否してしまったのです。インフィンガーさんたちは政府を相手に訴訟を起こしました。

2020年3月、入居の拒否は違憲だという画期的な判決が下りました。「公共住宅の入居資格は同性カップルでも異性カップルでも違いはない」と裁判所が判断したのです。

性の多様性と平等を支持した今回の判決で、香港政府は、LGBTIの人たちに対して差別的な法律や政策の見直しを迫られることとなりました。

スイスの国民6割が「イエス」 性的指向による差別は禁止の対象に

スイスの国民6割が「イエス」 性的指向による差別は禁止の対象にPink Cross - swiss gay organization

スイスでは、LGBTIの人たちに対する侮辱的な行為が、法律で罰せられることはありませんでした。1995年にできた法律では、人種や宗教を理由にした差別は禁止されていましたが、LGBTIの人たちに対する差別は禁止されていませんでした。そんなこともあり、LGBTIの人たちに寛容な国ランキングでは、ヨーロッパ49カ国中27位と、なんとも微妙な順位でした。

そんなスイスに暮らすLGBTIの人たちにとって、転機が訪れたのは2020年2月9日の国民投票でした。63%の国民が、性的指向に基づく差別やヘイトスピーチについても、法律で禁止することに賛成したのです。

反対派が37%もいたことや、性自認による差別は対象とならなかったことなど、課題は残りますが、賛成派が過半数にも満たないと予想していたLGBTIの人たちにとって、予想を遥かに超えるこの結果は大きな後押しとなりました。

コロンビア:ボゴタ初の女性知事が同性パートナーとの結婚を発表

2019年9月、コロンビアの首都ボゴタのクラウディア・ロペス知事が、同性パートナーのアンジェリカ・ロザノさんとの結婚を発表しました。ロペス知事は、ラテンアメリカの国の首都で初めての女性知事ということもあり、社会からの注目も高く、たくさんの国民が祝福の声をあげました。

コロンビアでは、2016年から同性婚が法律で認められていますが、保守的な宗教観の影響により、いまだLGBTIに対する偏見が根強いと言われています。ロペス知事の結婚は、多くのLGBTIの人たちを勇気付ける出来事となりました。

米州人権裁判所が下したLGBTIの権利を擁護する判決をきっかけに、ラテンアメリカでは、アルゼンチン、エクアドル、ブラジル、コロンビア、ウルグアイ、メキシコで、同性婚の法制化が実現しています。今後の中南米の動きにも注目です。

インド:ベンガルールで、初めてのLGBTIを対象とした求職者向けイベントが開催

 

2019年7月、インド第3の都市ベンガルールで、LGBTIの人たちを対象とした求職者向けのイベントがインドで初めて開催され、約350人が参加しました。2020年2月にはニューデリーでも開催されました。

インドでは長い間、同性愛が違法とされ、刑罰の対象となっていましたが、2018年に最高裁判所が、同性愛を合法とする歴史的な判決を下してから、インド国内に拠点をもつ企業も、LGBTIであることを公にしている求職者を、積極的に雇用することが可能となりました。

イベントを開催したベンガルールのコンサルタント会社、プライドサークルの共同設立者であるスリニ・ラマスワミさんは、2018年の最高裁の判決により、企業が法律を言い訳に、多様性を拒否することはできなくなったと言っています。今回のイベントには、有名な多国籍企業が数多く参加し、約250件の求人募集が告知されました。

イスラエル: 23組の同性カップルが合同結婚式

イスラエルでは同性婚が違法であるばかりでなく、極右政党の政治への影響力の大きさから、同性愛嫌悪やトランスジェンダー嫌悪がまん延しており、LGBTIの権利は、法的にも社会的にも厳しく制限されています。

2019年6月、そんなイスラエルに暮らす23組の同性カップルが、家族や友人たちに祝福される中、合同結婚式を開催しました。首都テルアビブで盛大に合同結婚式をすることで、イスラエルの差別的な姿勢に抗議の意を示したのです。このイベントの主催者は、「私たちの闘いはデモや抗議活動だけではなく、愛したい人を愛することなのです。だからこそ私たちは、結婚が禁止されているこの地で、盛大な結婚式を挙げることにしました。誰かを愛することは、法に背くことでは決してありません。」と訴えています。

この出来事をきっかけに注目が集まり、同月14日にテルアビブで開催されたプライド・パレードには、世界中から約25万人が参加し、中東の国で最大規模のプライド・パレードとなりました。テルアビブのロン・フルダイ市長は、LGBTIコミュニティを支援する意向を表明しています。

日本:パワハラ防止法が施行、LGBT差別予防が企業の義務に

日本:パワハラ防止法が施行、LGBT差別予防が企業の義務に

2020年6月1日から、企業にパワハラへの対策を法的にはじめて義務付けた、パワハラ防止法が施行されました。パワハラに関連して、性的指向や性自認を理由とした差別もなくすよう、企業は求められています。

例えば、「ホモっぽくて気持ち悪い」といった差別的な言動や嘲笑、いじめや暴力などのハラスメントを企業は予防しなければなりません。また、「〇〇さんってレズビアンなんだよ」というように、本人の性的指向や性自認を、本人の同意なしに第三者に暴露してしまう「アウティング」も、同様に予防しなければなりません。これは、職場での差別をなくしていくための大きな一歩です。

このようにLGBTの人たちが差別を受けている事態を、法律で何とかしようという動きはあるものの、決め手に欠けているのが現状です。