タイで、同性間のパートナーシップ法が実現へ。日本の現状は?

更新:2020.07.29

タイで、同性間のパートナーシップ法が実現へ。日本の現状は?© Getty Images

2020年7月8日、タイ政府は、同性カップルについても、婚姻関係にある夫婦とほぼ同じ権利が認められるように、法改正を行うと発表しました。このニュースは世界中を駆け巡り、日本でもSNSで「台湾でもタイでも。アジアに広がる同性婚は、もう欧米だけの話ではありませんよ」「日本でも早く同性婚が認められるようになってほしい!」といった声があがっています。

「シビルパートナーシップ」とは?

タイ政府によって国会での審議入りが決まったのは、「シビルパートナーシップ」の認定を可能にする法案です。「シビルパートナーシップ」とは、法律によって認められたパートーナー関係を意味します。国や地域によって制度の内容が異なり、例えば、同性カップルだけでなく異性間でも利用できる国もあれば、同性カップルに限られる国もあります。また、男女の婚姻と同等の権利が同性カップルに付与される国がある一方で、同性カップルが養子を持つことを禁止している国もあります。

タイの法案は、シビルパートナーシップを希望するカップルのどちらかがタイ国籍で、ふたりとも17歳以上であれば、性別を問わずに申請できるというものです。シビルパートナーシップが認められると、例えば、男女の夫婦と同様に、双方の財産の管理権、相続件が法的に認められるほか、養子を迎え入れることも可能になります。

タイで、同性間のパートナーシップ法が実現へ。日本の現状は?© Amnesty Internationl

法案の国会提出までの長い道のり

2013年にタイでシビルパートナーシップ法案の草案が作成されてから、内閣の承認を得るまでに、実に7年の歳月が流れました。2012年にバンコクで、同性カップルが、当時は男女間でのみ認められていたパートナーシップ制度の申請を断られたことを発端に、同性カップルのシビルパートナーシップを求める活動が広がり、社会の関心が少しずつ高まっていったのです。昨年のバレンタインデーには、シビルパートナーシップの申請を断られた同性カップルたちが、現地の支援団体と共に抗議活動を行うなど、今回の国会審議入りの裏には、同性婚を願う人たちの根気強い働きかけがありました。

パートナーシップでなく、同性婚の実現を望む切実な声も

今回の報道に対し、多くの喜びの声が聞かれる一方で、反対の声も上がっています。反対する人の多くは、男女間の結婚制度と比べた場合の不平等さを指摘しています。そもそも同性婚が実現すれば、同性間のシビルパートナーシップ制度は必要ないという観点から、反対派の人たちは、シビルパートナーシップが「偽り(Fake)」の平等であるとし、Twitter上では、#SayNoToPartnershipBill 「パートナーシップにNoと言おう」と呼びかけるハッシュタグも見受けられます。

実際に、シビルパートナーシップ法案で明確に規定されていない権利もあり、男女間の結婚と比べてどのくらい平等な制度になるか、疑問が残る点もあります。例えば、相手の苗字を名乗れるかどうか、結婚によって得られる税金の控除や、自治体からの福祉サービスが受けられるかについての言及がないことや、外国人パートナーがいる場合、配偶者ビザを取得することができるかどうかなど、シビルパートナーシップによって保障されることが決まっていない権利も少なくないのです。

しかしながら、同性間のシビルパートナーシップ制度が、タイの同性婚の実現への大きなステップとなる可能性もあります。

タイで、同性間のパートナーシップ法が実現へ。日本の現状は?© Amnesty International Ukraine

同性婚へのマイルストーン

既に同性婚を実現している多くの国で、同性婚施行前に、同性間のシビルパートナーシップ制度(シビルユニオンと呼ばれています)を導入しています。例えば、2001年に世界で初めて同性婚を実現したオランダは、3年前の1998年に、シビルユニオンを認めました。オランダに次いで2003年に同性婚を実現したベルギーも、遡って2000年に、それまでは男女間に限られていたパートナーシップ制度の権利を、同性パートナーにも拡大しています。その後、2005年に同性婚を実現したスペイン、カナダについても、州ごとで異なりますが、その数年前から同様の施策を行っています。このように、同性間の法的なパートナーシップ制度は、同性婚に至るまでの「ファーストステップ」ともいえる重要な制度といえるのです。

日本のパートナーシップ制度はどうか?

日本で最近耳にすることの多い「同性パートナーシップ制度」ですが、2015年11月5日世田谷区と渋谷区で施行されたことを皮切りに、現在では全国の自治体で50例を超え、日本の総人口の4分の1以上をカバーするほどの広がりを見せています。同性カップルは、同性パートナーシップ制度を認めている自治体に対し、パートナーであることを申告することで、証明書の発行を受けることができます。この取り組みは、自治体によって条例、または要綱により規定されていますが、法的保障はなく、結婚と同等の権利を得ることはできません。そのため、一部結婚と同等の権利が保障されている、タイのシビルパートナーシップ制度や、欧米のシビルユニオンとは、まったく異なるものであることを理解する必要があります。

国の法律がないため地方自治体単位でできることが限られていますが、それぞれの努力により、さまざまな取り組みが行われています。例えば先日、茨城県は、パートナーシップ制度の認定を受けた県職員に対し、法律上の夫婦と同様の福利厚生を認めると発表しました。兵庫県明石市のLGBTの相談窓口では、当事者の専門職員が対応することを決定しています。多様性を認め合う社会の実現に向け、地方自治体の取り組みがさらに広がることで、政府の法整備への後押しになることが期待されています。

日本での同性婚に向けた運動はどこまで進んでる?

日本でも、同性婚の実現に向けた運動が進んでいます。政府に対し、同性婚を認めることを訴える日本初の裁判が2019年2月14日に始まり、現在は、札幌、東京、名古屋、福岡、大阪で裁判が進行しています。新型コロナウイルスの影響で東京と大阪の次回の裁判期日は7月末日現在で未定となっていますが、福岡で7月30日(第3回)、札幌で8月5日(第6回)、名古屋では9月8日に(第6回)予定されており、今後の同性婚訴訟の進展に関心が集まっています。

タイの動きを弾みに

タイで同法案が可決されれば、昨年の台湾に続き、同性パートナーシップ制度を法的に認める国は、アジアで2カ国目となります。アジア圏のLGBTの権利拡大がまたひとつ前進することになるのです。タイの法案実現が、日本のLGBTの権利拡大の弾むことが期待されます。

「虹の国」南アフリカ 故マンデラ大統領が目指した多様性は今

更新:2020.07.10

アフリカには、法律によってLGBTの人たちが差別的な扱いを受けている国がたくさんあります。国際レズビアン・ゲイ協会の調べによると、アフリカ大陸の国54カ国中、30以上の国で同性愛が違法とされています。例えば、同性間で関係を持っただけで、ウガンダでは4年、ナイジェリアでは最長14年の禁固刑に処せられてしまいます。

そんなアフリカで、いち早くLGBTの権利の平等を推し進めたのは、人種・文化・言語の多様性から「虹の国」と呼ばれている、南アフリカ共和国です。世界で最も早く性的指向による差別を憲法によって禁止した国であり、2006年には、オランダ、ベルギー、スペイン、カナダに続き、世界で5番目に同性婚を実現した国でもあります。法律でLGBTの平等を実現している南アフリカのLGBTを取り巻く状況について、紹介します。

アパルトヘイト下のLGBTの権利

虹の旗を掲げた南アフリカのLGBTI権利活動家© EPOC

ご存じの方も多いと思いますが、南アフリカでは1948年から1990年代初頭まで白人と非白人を徹底的に隔離・差別する政策=アパルトヘイトがとられていました。

南アフリカにはもともと、多様な言語や文化が存在し、さまざまな人種の人たちが共存していました。しかし英国の植民地統治下で、非白人を白人社会から排除する法律が導入されていき、1948年からは差別的な法が相次いで誕生、アパルトヘイトが強力に推進されていきます。非白人は選挙権を奪われ、学校も、レストランやトイレや公園なども、白人と非白人で分けられました。人種ごとに住む場所も決められ、人種が異なるカップルの結婚はもとより恋愛すら禁止されました。多くの人の自由が奪われていったのです。

アパルトヘイト政策のもとでは同性間の恋愛関係も違法とされ、最高で9年の懲役刑を科されたり、警察から暴力を受けるなど、LGBTの人たちの権利が否定されていました。同性愛を精神疾患とみなしていた当時の政府は、LGBTの人たちに対して頻繁に「コンバージョンセラピー」と呼ばれる、性的指向を強制的に変えることを目的とした非科学的な治療を実施し、LGBTの人たちの心に大きな傷を残す政策を行っていました。

ヨハネスブルグで賞を受けるネルソン・マンデラ氏© South Africa The Good News

1980年代、アパルトヘイトによる人種差別が国際的に非難を浴びはじめたころ、ゲイやレズビアンの人たちによる平等を求める運動も、南アフリカの国内外で活発化しはじめました。南アフリカのLGBTの人たちは、人種差別だけでなく、性的指向による差別の禁止についても法整備するよう、反アパルトヘイト政策を進める政治家に対して強力にロビイング活動を行いました。

その結果、1997年に施行された新憲法には、「性的指向による差別の禁止」が明記され、LGBTの権利が保障されたのです。その後、2006年には同性婚の合法化も実現し、南アフリカにおけるLGBTの権利は大きく前進しました。

南アフリカのLGBT活動家の声

法制度上では平等が実現されてきたとはいえ、LGBTの人たちに対する暴力的な事件が発生したり、一部でコンバージョンセラピーがいまだに行われていたりなど、今でも偏見との戦いは続いています。

ファドツァイ・ミュパルツァさんという活動家が、残された課題を解決するため、南アフリカでレズビアンやバイセクシュアル、トランスジェンダー女性の保護とサポートに取り組んでいます。ご本人のスピーチの一部を紹介します。

ファドツァイ・ミュパルツァさんファドツァイ・ミュパルツァさん

"私は2013年から南アフリカでアフリカ・レズビアン連合のアドボカシー担当として、アフリカ連合や国際団体、各国政府への政策提言を行っています。

私が活動の拠点にしている南アフリカの街中では、人と見た目や歩き方、服装が違うからという理由で、ヘイトスピーチを浴びせられることは日常茶飯事です。性的指向を理由に、女性が強かんされる事件は、南アフリカだけでなくサブサハラアフリカ地域全体で起きています。性的指向や性自認によって、多くの人が住んでいる家を追われ、職を追われ、命を奪われています。

LGBTの権利を前進させるためには、LGBTの権利に限定することなく、女性や子ども、性産業に従事する人びとの権利、医療や教育を受けられる権利、きれいな水を飲める権利など、「人の権利」ついて議論することを徹底しなければなりません。求められているのは、LGBTの人たちを特別扱いすることではなく、LGBTの権利とは個人が差別や暴力から守られるための権利だという理解が広がることです。

LGBTの権利のために活動していると、秘密警察に尾行され、監視されることもありました。危険に直面しながらも活動を続けてきたのは、「人と人とが思いやりで繋がった世界をつくりたい」という強い願いがあるからです。そんな世界を実現するためには、一人ひとりが問題意識をもち、学び合い、支え合うことが欠かせません。"

(アムネスティ日本主催の講演会「自分らしい性を生きる」(2015年)より)

南アフリカのプライドパレード

ファドツァイさんが語るように課題は残されていますが、それでも、状況は少しずつ変わりつつあります。2012年と2015年に行われた、南アフリカの人たちのLGBTに対する意識調査によると、2015年に同性婚に強く賛成する人の数は2012年の10倍に増えており、反対に、同性婚に強く反対する人の数は半分以下に減っていました。法制度によって政府が明確な姿勢を示すことで、人びとの意識も少しずつ変わっていくのです。

アジア初の同性婚 20年の道のり

更新:2020.06.26

2019年5月24日、台湾で同性婚が認められるようになりました。アジア初の快挙となったこのすばらしいニュースは、日本でも大きく取り上げられたので、ご存じの方も多いかもしれません。

あれから約1年後の2020年5月23日までに、台湾で4,000組以上の同性カップルが結婚しました。台湾での同性婚の成立までの経緯、そして、アジアで初めて同性婚を実現した台湾が、結婚の平等を叶えるための次のステップについて、考えてみたいと思います。

同性婚実現までの道のり

アジア初の同性婚を実現した台湾ですが、もともと同性愛に寛容だったわけではありませんでした。「同性婚は、家族を破壊する」という考えをもつ人が、たくさんいたのです。台湾のLGBTIの人たち、そして活動家たちは、そのような偏見や差別と闘いながら、20年以上にもわたり、同性婚の実現を訴え続けてきました。特に2020年代に入ってからは、同性婚を求める声が高まっていきます。

同性婚を求める多くの人たちの声が届き、2017年5月、台湾の最高裁判所は、同性カップルに結婚の権利が認められないのは違憲であるとの判断を下し、2年以内の法改正を求めました。合法化への道を開く、歴史的な出来事となりました。

同性婚を求めるキャンペーンに参加する台湾の人たち© Amnesty International Taiwan

反対派による抵抗

しかしその後も、同性婚に反対する人たちの抵抗は続きました。それまでの台湾には、同性婚を想定した法律がなかったため、同性婚を実現するためには、民法を改正するか、新しい法律をつくるかを選択しなければなりませんでした。そこで、2018年11月に国民投票でそれぞれについて是非が問われることになりました。同性婚賛成派は、民法の婚姻規定で認められるよう改正を望み、民法の婚姻を男女に限定したい反対派は、別の法律で規定すべきと主張。結果は、民法改正が反対多数となり、同性婚は、特別法をつくることで実現されることになりました。

同性婚を求めるキャンペーンに参加する台湾の人たち© AFP via Getty Images

結婚の平等に向けて

アジアで初めて同性婚が実現したことは、台湾の同性カップルはもちろんのこと、日本に住む多くの人たちにとっても、希望を感じる出来事でした。しかしながら、まだ課題も残されています。

例えば、現在の法律では、同性カップルが養子を受け入れる場合、どちらかのパートナーの実子でなければ法的に認めらないという制限があります。異性婚の夫婦であれば、血縁関係がなくても養子を受け入れることができるのに、同性婚の夫婦には認められないのは、平等なルールとはいえません。

また、同性パートナーが外国人の場合、外国人パートナーの母国が同性婚を認めている国でなければ、台湾で同性婚ができません。たとえば、台湾人と日本人の同性カップルの場合、日本ではいまだに同性婚ができないため、台湾で結婚することができないのです。同性婚が合法化されて1年が経った今でも、多くの同性カップルが結婚できずにいる事実に対し、同性婚と異性婚の「結婚の平等」が実現されるまで、声を上げ続けなければなりません。

トランスジェンダーの人々にも自分らしく生きる権利を
~ハンガリーの#Drop33ムーブメント~

更新:2020.06.19

人は産まれたときの身体的な特徴によって「女の子」「男の子」といった性別を割り当てられます。トランスジェンダーの人たちは、その割り当てられた性別とは違う性別を自認していたり、割り当てられた性別にとらわれない生き方を選んでいたりします。

トランスジェンダーの人たちは、性別の垣根を越えて生活を送っています。例えば、「私のことはhe じゃなくてsheって呼んで!」と宣言したり、自分の名前を変えたり、戸籍の性別を変更したり、ホルモン治療や性転換の手術を受けたり。方法はさまざまですが、性別を変更することは、トランスジェンダーの人たちが自分らしく生きるために欠かせない手段の一つです。

国によっては、法的に性別の変更が認められている場合があります。しかし、アルゼンチン、ベルギー、コロンビア、デンマーク、アイルランド、マルタ、ノルウェーを除くほとんどの国で、法的に性別を変更するためには屈辱的な手続きを経なければなりません。性別変更の条件として子孫を残せなくなる手術を課すところもあります。

ハンガリー出身でトランスジェンダーのアデルさん

ハンガリー出身でトランスジェンダーのアデルさん(写真)は、男の子として産まれましたが女性の性別を自認しています。幼少期はいつも「女の子っぽい」といじめられたといいます。自分の部屋に閉じこもって化粧をしたり、女性歌手のまねをしたりしているときが、唯一の自由と癒しの時間だったそうです。19歳のときに法的に性別を変更し、現在は女優・歌手になるための勉強をしながら、トランスジェンダーの人権を守るための意識啓発にも携わっています。

ハンガリーで性別の変更が禁止される事態に...

ハンガリーではこれまで、法的な性別変更が認められていました。しかし、2020年5月19日、その自由が、奪われてしまいます。議会で性別の変更禁止を含む法案が可決されたのです。可決されたのは包括法で、その条項のひとつが、生まれたときに性別を届け出ることを義務化し、登録された性別からの変更を認めないとしています。たとえば産まれたときの登録は「男」だけれど自分は女性だと自認しても、公的な書類では「女性」と書けなくなるのです。

ハンガリーに暮らすトランスジェンダーの人たちは、自分らしく生きる手段を奪われてしまったのです。

この差別的な法案が可決された背景にあるのは、LGBTIの人たちに対する根強い差別です。ハンガリーのLGBTIの人たちは、ヘイトクライムや暴力、そして政治家による差別的な発言を受けたりしています。2019年ブタペストのプライドイベントで、極右集団によって襲撃をされるという痛ましい事件も起きています。

© AI Hungary

自分らしく生きることの難しさ

私たちの日常には、公的な書類が必要となる局面がたくさんあります。例えば、学校に入学するとき、銀行口座を開設するとき、就職するとき、部屋を借りるとき、その他さまざまな場面で、身分証明として、公的な書類の提出を求められます。

出生時と異なる性別として生活をしているトランスジェンダーの人たちは、公的書類を提出する場面に出くわすたびに、目の前のよく知らない初対面の人たちに、自身のプライベートな情報を説明する必要に迫られるのです。このようなプライバシーの侵害が日常的にずっと続くことでトランスジェンダーの人たちが受ける精神的苦痛は、計り知れません。

ハンガリーのこの差別的な法律は、自分らしく生きる権利をトランスジェンダーの人たちから奪うだけでなく、プライバシーの権利まで侵害してしまうものなのです。

ハンガリーで起こった#Drop33 ムーブメント

ハンガリーで起こった#Drop33 ムーブメント

3月に法案が提出されると、トランスジェンダーへの差別に反対する市民が、差別的な条項である第33条の撤回を求めて #Drop33というハッシュタグで抗議の声を上げ始めます。

法案可決後も、この条項を白紙に戻そうと、ツイッターを使った抗議の波は世界中に広がっています。

 

 

5月28日の大統領による署名でこの差別的な法律は現実ものものになってしまったわけですが、まだ第33条を廃止する手段が残されています。それは、ハンガリーの国内人権機関が憲法裁判所に訴えかけ、法律を審査するよう司法に介入してもらうことです。

ハンガリーのトランスジェンダーの人たちの人権を守るため、条項を白紙に戻す手段が残っている限り、#Drop33のムーブメントから始まった市民の訴えは続きます。

LGBTI - 7つの前進

更新:2020.06.12

2020年6月、激動の時代を生きる私たちは、甚大な人権侵害が世界中で発生していることに、目を背けたくなることもあるかもしれません。でも、覚えていてください。希望の光は日々、世界中でうまれ続けています。そして、すべての人たちの人権が尊重される世界が実現されるまで、私たちは歩み続けなければなりません。昨年から今日までの一年の間にも、多くの人びとの支援により、世界のさまざまな国で、LGBTIの人たちを取り巻く環境にポジティブな変化が生まれています。その中から、7つの出来事を紹介します。

コスタリカで同性婚が可能に 中米では初めて

コスタリカで同性婚が可能に 中米では初めて

2020年5月26日、中米諸国で初めて、コスタリカで同性婚が可能になりました。同性婚への決定打となったのは、2017年に米州人権裁判が、そして2018年にコスタリカの最高裁判所が、同性カップルの権利を支持する判決を出したことでした。最高裁判所は、2020年5月26日までに同性婚を整備するよう議会に求め、期日をすぎると自動的に同性婚が法制化されるという判決を下したのです。

期日を迎えた5月25日未明、同性婚の法制化が確実となり、人権活動家たちは心から、これを祝福しました。コスタリカの大統領は、「共感と愛が、これからの私たちが、私たちをさらなる進歩へと導く基本理念となります」とツイート。

コスタリカは、国連加盟国の中で同性婚を法律で認めた、28番目の国になりました。

香港の裁判所が画期的判決 同性カップルも公共住宅へ入居可能に

香港の裁判所が画期的判決 同性カップルも公共住宅へ入居可能に

香港での同性婚は、まだ法律では認められていません。2018年、ニック・インフィンガーさんと彼の夫はカナダで結婚した後、2018年の3月に香港の公共住宅の「一般家庭」の枠に入居を申し込みました。ところが、インフィンガーさんたちが「夫と妻」ではないことを理由に、香港政府は彼らの入居審査を拒否してしまったのです。インフィンガーさんたちは政府を相手に訴訟を起こしました。

2020年3月、入居の拒否は違憲だという画期的な判決が下りました。「公共住宅の入居資格は同性カップルでも異性カップルでも違いはない」と裁判所が判断したのです。

性の多様性と平等を支持した今回の判決で、香港政府は、LGBTIの人たちに対して差別的な法律や政策の見直しを迫られることとなりました。

スイスの国民6割が「イエス」 性的指向による差別は禁止の対象に

スイスの国民6割が「イエス」 性的指向による差別は禁止の対象にPink Cross - swiss gay organization

スイスでは、LGBTIの人たちに対する侮辱的な行為が、法律で罰せられることはありませんでした。1995年にできた法律では、人種や宗教を理由にした差別は禁止されていましたが、LGBTIの人たちに対する差別は禁止されていませんでした。そんなこともあり、LGBTIの人たちに寛容な国ランキングでは、ヨーロッパ49カ国中27位と、なんとも微妙な順位でした。

そんなスイスに暮らすLGBTIの人たちにとって、転機が訪れたのは2020年2月9日の国民投票でした。63%の国民が、性的指向に基づく差別やヘイトスピーチについても、法律で禁止することに賛成したのです。

反対派が37%もいたことや、性自認による差別は対象とならなかったことなど、課題は残りますが、賛成派が過半数にも満たないと予想していたLGBTIの人たちにとって、予想を遥かに超えるこの結果は大きな後押しとなりました。

コロンビア:ボゴタ初の女性知事が同性パートナーとの結婚を発表

2019年9月、コロンビアの首都ボゴタのクラウディア・ロペス知事が、同性パートナーのアンジェリカ・ロザノさんとの結婚を発表しました。ロペス知事は、ラテンアメリカの国の首都で初めての女性知事ということもあり、社会からの注目も高く、たくさんの国民が祝福の声をあげました。

コロンビアでは、2016年から同性婚が法律で認められていますが、保守的な宗教観の影響により、いまだLGBTIに対する偏見が根強いと言われています。ロペス知事の結婚は、多くのLGBTIの人たちを勇気付ける出来事となりました。

米州人権裁判所が下したLGBTIの権利を擁護する判決をきっかけに、ラテンアメリカでは、アルゼンチン、エクアドル、ブラジル、コロンビア、ウルグアイ、メキシコで、同性婚の法制化が実現しています。今後の中南米の動きにも注目です。

インド:ベンガルールで、初めてのLGBTIを対象とした求職者向けイベントが開催

 

2019年7月、インド第3の都市ベンガルールで、LGBTIの人たちを対象とした求職者向けのイベントがインドで初めて開催され、約350人が参加しました。2020年2月にはニューデリーでも開催されました。

インドでは長い間、同性愛が違法とされ、刑罰の対象となっていましたが、2018年に最高裁判所が、同性愛を合法とする歴史的な判決を下してから、インド国内に拠点をもつ企業も、LGBTIであることを公にしている求職者を、積極的に雇用することが可能となりました。

イベントを開催したベンガルールのコンサルタント会社、プライドサークルの共同設立者であるスリニ・ラマスワミさんは、2018年の最高裁の判決により、企業が法律を言い訳に、多様性を拒否することはできなくなったと言っています。今回のイベントには、有名な多国籍企業が数多く参加し、約250件の求人募集が告知されました。

イスラエル: 23組の同性カップルが合同結婚式

イスラエルでは同性婚が違法であるばかりでなく、極右政党の政治への影響力の大きさから、同性愛嫌悪やトランスジェンダー嫌悪がまん延しており、LGBTIの権利は、法的にも社会的にも厳しく制限されています。

2019年6月、そんなイスラエルに暮らす23組の同性カップルが、家族や友人たちに祝福される中、合同結婚式を開催しました。首都テルアビブで盛大に合同結婚式をすることで、イスラエルの差別的な姿勢に抗議の意を示したのです。このイベントの主催者は、「私たちの闘いはデモや抗議活動だけではなく、愛したい人を愛することなのです。だからこそ私たちは、結婚が禁止されているこの地で、盛大な結婚式を挙げることにしました。誰かを愛することは、法に背くことでは決してありません。」と訴えています。

この出来事をきっかけに注目が集まり、同月14日にテルアビブで開催されたプライド・パレードには、世界中から約25万人が参加し、中東の国で最大規模のプライド・パレードとなりました。テルアビブのロン・フルダイ市長は、LGBTIコミュニティを支援する意向を表明しています。

日本:パワハラ防止法が施行、LGBT差別予防が企業の義務に

日本:パワハラ防止法が施行、LGBT差別予防が企業の義務に

2020年6月1日から、企業にパワハラへの対策を法的にはじめて義務付けた、パワハラ防止法が施行されました。パワハラに関連して、性的指向や性自認を理由とした差別もなくすよう、企業は求められています。

例えば、「ホモっぽくて気持ち悪い」といった差別的な言動や嘲笑、いじめや暴力などのハラスメントを企業は予防しなければなりません。また、「〇〇さんってレズビアンなんだよ」というように、本人の性的指向や性自認を、本人の同意なしに第三者に暴露してしまう「アウティング」も、同様に予防しなければなりません。これは、職場での差別をなくしていくための大きな一歩です。

このようにLGBTの人たちが差別を受けている事態を、法律で何とかしようという動きはあるものの、決め手に欠けているのが現状です。