わかりやすい世界人権宣言 谷川俊太郎訳

人はみな、生まれながらに自由
「自由」と「尊厳」を「平等」に守っていくための世界的ルール

世界人権宣言とは

世界人権宣言とは、「あらゆる人が誰にも侵されることのない人間としての権利を生まれながらに持っている」と表明したものです。その権利を、誰でも、どこでも、いつでも享受できるために、すべての国、すべての人が守らなければならない、最低限の共通基準として、1948年に定められました。いわば、国境を超えた、人類の普遍的な価値を示したものなのです。

第二次世界大戦の惨劇を二度と繰り返さないという反省からつくられた国連で、各国の代表者は、人権を軽視することが戦争につながり、戦争でさらに人権が侵害されるという悪循環に陥っていたことを認めました。そして、世界の平和を実現するためには世界各国が協力して人権を守る努力をしなければならないと、決意します。そこから生まれたのが、世界人権宣言です。

全30条を読む

世界人権宣言は30条から成り、さまざまな基本的な権利が列挙されています。奴隷として扱われない、不当に逮捕・拘束されない、拷問を受けないといった人身の自由、思想、良心、宗教、表現などの精神的自由、健康で幸せな生活を送る権利、教育を受ける権利、絵や文学や音楽を楽しむ権利などです。また、宣言でうたわれている自由と権利を、他の人の自由と権利をこわすために使ってはいけない、ということも書かれています。谷川俊太郎さんとアムネスティ日本が、すべての条文をわかりやすい日本語にしました。下記の数字をクリックして、各条文をご覧ください。

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その基本原則は「すべての人は生まれながらにして自由」であり、「同じ権利を等しく持っている」です。りっぱな経歴があるとか、善良な人であるとか、そういったことに一切関係なく、貧乏な人も、倫理的に正しくない行いをした人も、罪を犯した人も、基本的人権を持っているのです。もちろん、罪を犯せばそれを償う必要はありますが、そのことと基本的な人権とは別の話。その人の人格や行動とは関係なく、すべての人が等しく持つ権利なのです。

世界人権宣言と
人権条約

この70年、国際社会は、世界人権宣言でうたわれている自由と権利が守られるために、国家が負う義務に関して合意を積み上げてきました。法的拘束力のある国際条約を制定し、各国がこうした条約をきちんと実施しているかどうかモニターする機関もつくられました。国連が中心となって作成した人権条約は、包括的なものから女性、子ども、障がい者、難民、移住労働者、その他の脆弱な立場にある人びとのための特定の基準を定めたものまで、約30あります。

【主な国際人権条約】

名 称 採択年月日 締約国数 日本が締結している条約
(締結年月日)
自由権規約 1966.12.16 172 ○(1979.06.21)
同第1選択議定書 1966.12.16 116  
同第2選択議定書(死刑廃止条約) 1989.12.15 86  
社会権規約 1966.12.16 169 ○(1979.06.21)
同選択議定書 2008.12.10 24  
ジェノサイド防止条約 1948.12.09 149  
人身売買禁止条約 1949.12.02 82 ○(1958.05.01)
難民条約 1951.07.28 145 ○(1981.10.03)
難民議定書 1967.01.31 146 ○(1982.01.01)
無国籍者の地位に関する条約 1954.09.28 91  
無国籍の削減に関する条約 1961.08.30 73  
婦人参政権条約 1953.03.31 123 ○(1955.07.13)
既婚婦人の国籍に関する条約 1957.01.29 74  
婚姻の同意・最低年齢・登録条約 1962.11.07 55  
女性差別撤廃条約 1979.12.18 189 ○(1985.06.25)
同選択議定書 1999.10.06 109  
奴隷条約の改正条約* 1953.12.07 99  
奴隷制廃止補足条約 1956.09.07 124  
人種差別撤廃条約 1965.12.21 179 ○(1995.12.15)
アパルトヘイト禁止条約 1973.11.30 109  
スポーツ反アパルトヘイト条約 1985.12.10 72  
戦争犯罪時効不適用条約 1968.11.26 55  
拷問等禁止条約 1984.12.10 165 ○(1999.06.29)
同選択議定書 2002.12.18 88  
子どもの権利条約 1989.11.20 196 ○(1994.04.22)
子ども兵士禁止条約 2000.05.25 168 ○(2004.08.02)
児童売買等議定書 2000.05.25 175 ○(2005.01.24)
移住労働者の権利条約 1990.12.18 54  
障がい者の権利条約 2006.12.13 177 ○(2014.01.20)
同選択議定書 2006.12.13 92  
強制失踪条約 2006.12.20 59 ○(2009.07.23)

*1926年国際連盟で締結された奴隷条約の改正条約
※選択議定書とは、既存の条約を補完するために、条約とは独立して作成される法的国際文書です。ある条約を批准・加入したら、選択議定書にも合意したことになるのではなく、個別に批准するかどうかを選択します。
※条約の名称は通称を使用しています。
※締約国数は2018年10月30日現在です。

雑学クイズ

世界人権宣言に関わるクイズに挑戦してみませんか。「そんなことがあったんだ!」など、裏話を知ることでより一層、理解が深まるかもしません。

Q1 世界人権宣言をつくる委員会のメンバーだったのは、次のうち誰?
  • A. エレノア・ルーズベルト
  • B. ネルソン・マンデラ
  • C. ウインストン・チャーチル
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A. エレノア・ルーズベルト 国連は誕生翌年から国際的な人権章典づくりに着手しました。草案作成は、9カ国の代表からなる起草委員会で行われ、それが世界人権宣言という形で結実しました。 エレノア・ルーズベルトさんは、夫であるフランクリン・ルーズベルト米合衆国大統領が亡くなった後、国連の米国代表に指名されます。そして国連人権委員会(現在は人権理事会)の初代委員長として、世界人権宣言の起草に重要な役割を果たしました。

Q2 世界人権宣言は国連で採択されましたが、反対した国はいくつ?
  • A. 10カ国以上
  • B. 10カ国未満
  • C. なし
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C. なし 1948年12月10日、パリで開かれた第3回国連総会において賛成48票、反対0票、棄権8票で採択されました。棄権に回ったのは、ソビエト連邦、ウクライナ、ベラルーシ、ユーゴスラビア、ポーランド、南アフリカ連邦、チェコスロバキア、サウジアラビア。ホンジュラスとイエメンは欠席しました。ちなみに、草案は同年9月に、開発や人権などを扱う国連総会第3委員会に回され、81回の協議を経て、166の修正案を検討の上、最終案が国連総会で採択にかけられたのです。

Q3 国連が中心となって作成した主要な人権条約は約30ありますが、このうち日本が締結しているのはいくつ?
  • A. すべて
  • B. 20以上
  • C. 20未満
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C. 20未満 2018年10月末現在で、14条約を締結しています。批准・加入していないのは、移住労働者とその家族の権利に関する条約、無国籍者の権利に関するもの、ジェノサイド防止のための条約、早すぎる結婚や強制結婚をなくすためにつくられた条約、アパルトヘイト関連などです。詳しくは上の表をご覧ください。

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