開催まで残り1カ月を切った2026年FIFA男子ワールドカップ。「サッカーで世界をひとつに」というテーマとは裏腹に、開催国では分断と抑圧が横行しています。
開催国である米国、カナダ、メキシコでは、暴力的な移民取り締まり政策により多くの人が不当に命を落とし、市民へのAIを使った大量監視が濫用され、政府に反対する人が声を上げられないようにする政策が展開されています。
ワールドカップの開催にあたっても、ファンや選手、そして開催地の住民と大会に携わる労働者が人権侵害を受ける危険性があります。既に、大会開催により居住地を失った人の事例や、政府の人権侵害を追求する運動が妨害された事例があります。また、差別的な政策により入国に制限がかけられるおそれや、開催都市で暴力を伴う大量拘束、大量送還が実施されるおそれ、LGBTIの人びとへの攻撃を強める政府により、ファンや選手に危険が及ぶおそれが高くなっています。
FIFAは、人権を守ることを宣言していますが、突き進む現実はその理想とはかけ離れています。FIFA史上最高収益を見込む今大会は、本当にサッカーを楽しむすべての人びとのためになるのでしょうか。
FIFAと日本サッカー協会に対し、人権を尊重し、その影響力を駆使してファン、選手、ジャーナリスト、労働者、そして地域社会を守るよう呼びかけてください!
| 期 間: | 2026年5月28日~6月12日 |
| 要請先: | 国際サッカー連盟(FIFA) ジャンニ・インファンティーノ会長、日本サッカー協会(JFA) 宮本恒靖 会長 |
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2026年FIFA男子ワールドカップは、米国、カナダ、メキシコでの開催が予定されています。開催地が選定された8年前には、今大会は人権リスクが「中程度」と判定されました。しかし、状況は変わり、全試合の4分の3が開催される米国をはじめ、開催国は今や人権危機に陥っています。
暴力的な移民政策
米国ではトランプ大統領の差別的な移民政策の下、全米各地で移民税関執行局(ICE)や税関国境警備局(CBP)などの武装捜査官が、ラテン系、黒人、アジア系、その他の有色人種の人びとを標的に「肌の色が違うから」というだけで、自宅や学校、職場の近くで、暴力的で不当な拘束を繰り返しています。違法な取り締まりに抗議して監視していた市民がICE捜査官に射殺される事態まで起きています。
サッカーは米国の多くの移民に最も人気のあるスポーツの一つです。一緒に観戦しようと親族や友人で集まるでしょうし、世界中からも何百万人ものファンが訪れるでしょう。しかし、FIFAも米国当局も、人種プロファイリング、無差別に行われる強制捜査、違法な拘禁、そして国外追放からファンや地域社会を守るという保証を一切示していません。米国で開催された2025年のFIFAクラブワールドカップでは実際、軽微な民事違反で逮捕され、ICEに移送された後、国外追放されたファンの事例が記録されています。
カナダでも、現在議会で審議中の法案や米国との協定により、人びとが米国に送還される可能性があります。送還された人は、差別的で法的支援が限られた状況で拘禁されるおそれがあります。
観戦しようと訪れるファンが国境で差別やプライバシーの侵害を受ける危険も高まっています。米国政府は訪問者に対し、SNSのアカウントを審査のために公開し、「反米主義」の有無をスクリーニングすることを義務付けるなど、プライバシーを侵害する監視政策を打ち出しています。
脅かされる表現の自由
ワールドカップはその規模と影響力ゆえに、しばしば批判的な報道や抗議活動の標的となります。しかし、FIFAは自らの人権方針に反して、ファンと選手双方の表現の自由を制限しています。例えば、ファン向けの「スタジアム行動規範」では「政治的な」メッセージやシンボルが禁止されているほか、選手や役員向けの懲戒規定も存在します。
2022年のFIFAワールドカップ・カタール大会では、事前に保証されていたにもかかわらず、LGBTIの権利への支持を表明しようとしたファンがレインボーフラッグを没収され、イランのファンは「女性、命、自由」の横断幕などを掲げたことで暴行を受けたり、スタジアムから追い出されたりしました。また、LGBTIの人びとの権利への支持を示すために「One Love」と書かれた腕章を着用した選手が制裁の脅しを受けました。
米国政府は、自国の政策を批判しているとみなすジャーナリストやメディアに対する攻撃を激化させており、ジャーナリストが強硬な移民取り締まりに関する報道を理由に国外追放された事例も発生しています。メキシコは西半球で最も報道機関にとって危険な国と位置づけられており、2025年には7人のジャーナリストが報道への報復として殺害されたと報告されています。
また、開催国3カ国すべてにおいて、平和的な集会の自由も制限されています。米国政権は、人工知能を活用した大規模監視システムを用いた抗議者の監視やビザの取り消し、拘束などに踏み切っています。さらに、「治安維持」のためワールドカップ開催都市ロサンゼルスを含む米国の複数の都市に軍が配備されました。カナダでも、大規模な平和的な抗議活動デモが警察によって不当に解散させられたり排除されたりしています。メキシコでは、水の供給が妨げられ、土地の利用が制限され、家賃や生活費が上昇して住み続けられなくなると憤る住民によって、ワールドカップ関連の抗議活動が相次いでいますが、大会に向けて軍を含む十万人の治安要員が動員されることを考えると、こうした抗議が弾圧される懸念があります。米国やカナダでも抗議活動が行われる可能性が高く、「治安維持」勢力による人権侵害が危惧されます。
また、FIFAは「安全で誰もが歓迎される」大会を掲げていますが、LGBTIのファンや選手が差別を受ける危険があります。米国では政権がLGBTIの権利、特にトランスジェンダーの権利を攻撃。カナダでもLGBTI嫌悪が広がっています。メキシコはトランスジェンダーの人びとにとって世界で2番目に危険な国とされ、2024年には約60人が殺害されています。欧州各地のLGBTI団体のメンバーは、大会会場で表に立つことは自分たちにとって安全ではないと訴えています。
FIFAの人権責任
FIFAは自らの人権方針を含むいくつもの場面で「国際的に認められているすべての人権を尊重し、人権擁護を推進する」と宣言しています。また、「自らの人権責任を超えて、人権享受に寄与するための活動を行う」ともしています。
FIFAは、今大会が110億米ドルの利益を産むと予想しています。もはや巨大ビジネスであり、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく人権責任があります。 FIFAの議決権を持つ加盟団体として、各国サッカー協会(FA)も、FIFAの規約に拘束され、FIFAの人権方針を遵守することが求められています。さらに、FIFAとのビジネス関係を通じて多額の収益を得ているFAは、国連指導原則に基づき、人権侵害を防止するために影響力を行使するなど、明確な人権責任を負っています。



