日本で、世界中で、異常気象の被害が後を立ちません。35℃を超える夏の猛暑日は日本でも今や当たり前になりつつあり、多くの人の安全、文化、食、生活を脅かしています。
しかし、猛暑のニュースが連日続き、暑さ対策グッズや熱中症予防に効果的な食べ物が情報番組で紹介される一方で、その原因である気候変動に言及する報道は、現実の危機に見合わない少なさです。
猛スピードで進む気候変動の主な原因は、化石燃料(石炭、石油、ガスなど)の燃焼です。採掘や燃焼により、二酸化炭素やメタンといった、太陽熱を閉じ込める温室効果ガスが排出され、気温の上昇を引き起こしています。
このままの温室効果ガス排出量を維持してしまえば、いま小学一年生の子どもたちは祖父母世代に比べて何倍から何十倍もの山火事、農作物の不作、干ばつ、河川の氾濫、熱波、大型台風等の災害を経験することになります。
破滅的な状況を回避するためには、2030年までに2010年と比べて60%以上のCO2を削減しなければなりません。それには個人の省エネやリサイクルでは足りず、政府レベルでの意欲的な削減目標と、化石燃料企業の既得権益を打破する政策が必要不可欠です。しかし、日本社会においてはこの問題の優先順位が明らかに低いままです。それは、政府の姿勢にも直接表れています。
メディアは人びとの生活に直結する情報を発信する重要な立場にあり、気候変動を食い止めるために世間の認識を動かす力があります。そして、そのメディアを動かすのは視聴者である私たちです。
気候危機の緊急性に見合った報道をするよう、メディアに声を届けてください!
| 期 間: | 2026年7月29日~8月末日(予定) |
| 要請先: | 日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ、NHK |
※あなたの署名(名前のみ)は、アムネスティ日本で取りまとめて要請先に提出します。
気候変動は人権問題
気候変動は生きる権利、健康への権利、居住の権利、水と衛生に対する権利に関わる、人権の問題でもあります。そして、世界のほとんどの温室効果ガスを排出している国は一部にも関わらず、気候変動の最悪の影響は温室効果ガス排出量の低い国に住む人や、元々社会的に虐げられた立場にいる人に最初に降りかかります。今すでに熱波や台風、干ばつ、水面上昇に伴う数々の人権侵害が引き起こされています。そして、このままの温室効果ガス排出量を維持していては、将来の人権を守ることも手遅れとなる可能性が高いことは科学者が長きに渡り警告してきました。このままでは、2020年に生まれた子どもは80才になるまでに今の世代の何倍から何十倍にもなる異常気象の被害を受けることになります(*1)。
日本の現状
猛暑や豪雨、台風の強度の増加など、気候変動により日本でも災害級の異常気象が多く発生しています。気候変動は安心・安全な生活、四季や文化、食と農業など人びとが関心を寄せる多くの分野で脅威になっており、国民の大多数が気候変動の影響を受けていると感じている(*2)にも関わらず、日本の気候変動政策は不十分です。「電力需要」はしかたのないものとして扱われ、企業レベル、国家レベルで電力の消費を減らす「省エネ」政策の抜本的な改革が検討されていません。また、日本はG7の中で唯一、化石燃料の中で最もCO2排出量の多い石炭火力発電の廃止を宣言しておらず、水素・アンモニア火力やCCS(二酸化炭素回収・貯留)などの不確かで高コストな「新技術」に力を入れており、これは化石燃料を延命させる措置であると批判されています。その傍で、政府は海外での新設化石燃料事業に多額の融資をし、日本の民間大手の銀行もまた「過去五年間の化石燃料への出資」で世界二位、五位、八位にランクインしています。(*3)(*石油・ガス事業の新規建設・拡大への出資では日本の銀行が世界一位と二位をしめています。)また、異常気象から人びとを守る、学校の断熱などの対応策も早急に必要です。
気象予報士も声明 メディアはもっと報道を
猛暑や異常気象報道が気候変動に言及しないことはメディア一般がかかえる大きな問題です。国際環境NGOグリーンピース・ジャパンが2015年から2024年までの日本の新聞記事を対象に行った調査では、「猛暑と地球温暖化の関係を説明する報道は解説・特集面などに限定されており、読者の関心が高い社会面や総合面では、いまだに猛暑を「日々の天気」として扱う傾向が根強く残っている」とされています。また、英紙ガーディアンによると、今年6月にヨーロッパを襲った異例の熱波に関する新聞記事の約72%が気候変動に言及していませんでした。日本のテレビに関しても、異常気象と気候変動を結び付ける放送が少ないとの報告が上がっています。(*4)
しかし、メディア関係者にも声をあげる人がいます。2024年には気象予報士・気象キャスターが共同声明を発表し、「日常的な気象と気候変動を関連づけた発信」を目指し、気候変動問題の解決に向けた行動を加速させることを宣言しました。(*5)
日本社会では実感を得ることが困難かもしれませんが、世界の大多数の人は気候対策の強化を求めています。(*6)気候変動は自然災害とは違います。人間が作り出したものであり、人間が食い止めることができます。だからこそ、気候変動についての正しい情報と危機意識が世間一般に広く伝わることが必要不可欠です。
*1:数々の科学的研究に基づき、国連防災機関(UNDRR)や国際NGOセーブ・ザ・チルドレンなどが発表しています。日本では、国立環境研究所がわかりやすく説明しています。
*2:世界最大規模の世論調査会社イプソス株式会社の調査報告や、政府の世論調査から
*3:Banking on Climate Chaos 化石燃料ファイナンス報告書 2026 report(英語)より
*4:グリーンピース・ジャパン「『異常』が異常ではなくなる夏ーー新聞報道にみる『猛暑』の変遷と日常化する異常気象」/The Guardian "Most UK media reports on June heatwave failed to mention climate crisis"(英語)/北海道大学による調査報告/ジャーナリストによる報告
*5:「気候危機に関する気象予報士 ・ 気象キャスター共同声明」
*6:同上イプソスの調査報告より



