タイで軍や王室の改革を求めて声を上げる子どもたちが、起訴されたり、監視されたり、脅されたりしています。なかには重い刑罰を科される罪に問われている子どももいます。
2020年、タイで若者数万人が、プラユット首相率いる親軍政権に対し大規模な抗議活動を始めました。軍と王室の改革を求める若者たちのデモは、ソーシャルメディアを通じて急速に拡大していきました。驚くべきことに、参加者の多くは18歳未満の子どもたちでした。
しかし、平和的なデモに参加したり、意見を述べたりしたことで、多くの子どもたちが危険にさらされています。タイの人権派弁護士によると、300人近い子どもたちが「犯罪行為」で刑事責任を問われています。なかには王族などの名誉や尊厳を貶めたと不敬罪で起訴された子どももおり、有罪になれば刑務所に長期間入れられるおそれがあります。さらに、タイ警察や政府関係者はデモに参加した子どもたちを尾行・監視し、「子どもや親を訴える」といって家族を脅しています。
タイの子どもたちへの監視と刑事訴追を今すぐやめるよう、タイ当局に呼びかけてください!
期 間: | 2023年6月8日~未定 |
要請先: | プラユット・チャンオチャ首相 |
※要請先に、あなたの名前、メールアドレスを配信元として直接メールを送ります。
2014年、プラユット・チャンオチャ陸軍司令官(当時)はクーデターを実行し、タクシン元首相派のインラック政権を倒して軍事政権を樹立しました。同年8月には軍事政権の暫定首相となり、その後、民政復帰に向けて19年3月に実施された下院総選挙を経て、2019年には親軍政党「国民国家の力党」を中心とする連立政権の正式な首相となりました。
2020年、18歳未満の大学生や中高生を含む若者たちが、プラユット首相の退陣を求めて全国で平和的な抗議行動を始めました。若者たちは、パロディや風刺、ポップカルチャーのイメージなどを用いて、変革を求める声をソーシャルメディア上で拡散し始めました。制服やストリートファッションに身を包んだ18歳未満の子どもたちが、デモを先導することも多くありました。
学校や大学から街頭へと、デモの規模は次第に膨らんでいきましたが、タイ当局は参加者や主催者を拘束し、デモ参加を犯罪行為として刑事責任を問いました。さらに、タイ王政の改革を求める声が大きくなったことを契機に、締め付けはますます強固になりました。
2020年以降、少なくとも284人の子どもたちが、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するための集会制限に違反したとして起訴されました。しかし、この法律は現在すでに廃止され、もはや有効ではありません。また別の子どもたちは、不敬罪や、当局が「虚偽」とみなす情報を流布した罪に問われています。
アムネスティは子どものデモ参加者に対する弾圧について、入念な調査を行いました。調査の中で、タイ警察が数十人の子どもの抗議者を尾行・監視し、家族や学校当局に抗議活動への参加を思いとどまるよう圧力をかけたり、子どもやその親を訴追すると直接脅したりしていることが判明しました。そのような尾行や監視を受けた子どもたちが、不眠やパニック障害に悩まされる事例も報告されました。