先住民族/少数民族 - ロマの人びと

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差別と迫害の歴史

ロマはインドを発祥の地とし、6~7世紀から移動を始めたと言われています。彼らは現在、ヨーロッパを中心に世界中で暮らしています。

全人口はおよそ800万人〜1200万人です。「ロマ」は従来、「ジプシー」などと呼ばれてきた人たちです。彼ら自身は「ロマ」「ロマニ」と呼称しており、ここでは「ロマ」とします。

彼らの長い歴史のなか、周囲の無理解やエキゾチックな風貌から、「流浪の民」といったロマンティックでステレオタイプなイメージで語られたり、いわれなき憎悪によって差別的に扱われ、迫害されてきました。

奴隷としての500有余年と、ホロコーストによるジェノサイドは、その不幸な歴史の典型例です。ナチスはユダヤ人に対してと同様、ロマを迫害しました。しかし、ユダヤ人の悲劇に対して、ロマの悲劇は忘れ去られた歴史です。

また、コソボ紛争ではアルバニア人の死体処理をさせられるなど、周囲の民族はロマを自分たちの都合にあわせて利用してきました。スイスでは政府主導により、1972年までの46年間、ロマの子どもを誘拐して親から引き離し、強制的に精神病院や施設に収容、成人するまで家族との接触を一切禁じる、という政策がとられていました。ロマの文化の消滅を目的としていました。

現在、ロマの人びとの定住化がすすんでいます。しかし、ロマが市街地に住むことを快く思わない住民が存在するため、自治体や政府は彼らを積極的に保護しようとはしません。移転先が確保されないまま、居住地を追われることも珍しくないのです。

ロマの人たちの抱えている問題は多数あり、また重層的です。とりわけ、教育、就職、住宅については深刻です。反ロマ感情による差別から、「家が借りられない」、「就職出来ない」などで生活に困り犯罪率が増加、そして「差別の悪循環」へと陥っています。

ロマ社会における女性の問題もあります。職がなく、アルコール依存症になった夫から暴力を受けたり、借金返済のために売春を強要されるといったケースが少なくありません。

無責任なマスメディアの報道により、「窃盗癖」「人さらい」「不潔」という短絡的で誤った情報が伝えられています。

子どもの教育や地域社会の安定のため、などと政府はロマへの抑圧を正当化し、ロマに責任転嫁しています。雇用不安や社会への不満のはけ口、外国人排斥の動きに、反ロマ感情が利用されるのです。

歴史的に文字を使わないロマは、自分たちの窮状や見解を訴える手段が不足しています。ロマのアイデンティティーを尊重・保持していくためには、彼らの状況に合わせた対策が必要です。

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