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アムネスティ年次報告書2006:「テロとの戦い」がもたらす世界の貧困と代償

2006年5月23日
[国際事務局発表ニュース]
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(ロンドン)2005年は、少しずつ見えてきた希望の兆しが大国による嘘と約束の反故によって傷つけられた矛盾の年だったとアムネスティ・インターナショナルは年次報告書の発表に際して語った。

アムネスティ年次報告書2006年版発行の記者会見においてアイリーン・カーン事務総長は、大国による安全保障政策がエネルギーを奪い取り、その結果いたるところで起こった深刻な人権侵害から世界の目をそらしてしまった、と語った。

「各国政府は集団的にも個別的にも国際機構を麻痺させ、偏狭な安全保障に固執して公の資源を浪費し、「テロとの戦い」の名の下に人権の原則を犠牲にし、大規模な人権侵害を見て見ぬふりをした。結果として、基本的原則が崩壊し、普通の人びとの生命や生活に甚大な被害が及ぶという巨額の対価を世界は支払うことになった」と、アイリーン・カーン事務総長は語った。

「国連とアフリカ連合による断続的な関心と決意のない行動は、スーダンのダルフールで必要なものを満たすには惨めなくらい不十分だった」。数千の命を奪い、数百万が国内避難民となり、すべての当事者が戦争犯罪と人道に対する罪を犯し続けている紛争に触れながら、アイリーン・カーンはそのように述べた。

2005年、イラクは派閥同士の暴力の渦に入り込んだ。「大国があまりに傲慢になりすぎて自らの戦略を見直すことができなくなったとき、その代償を支払うのは貧しく、力を持たないイラクの女性、男性、そして子どもたちだ」とアイリーン・カーンは警告した。

イスラエルおよび占領地域は、2005年の国際的課題から抜け落ち、パレスチナ人の苦悩と絶望、そしてイスラエル人の恐怖はますます深まることになった。

「武装集団による「テロ行為」は、釈明の余地もなく、認めることはできない。加害者は法の裁きをうけなければならない。しかしそれは、公正な裁判によって行われるべきであり、拷問や秘密収容所によるものではない。残念ながら、そのような残虐な出来事が2005年に世界のいたるところで増加したが、それは「テロとの戦い」が失敗しており、人権と人間の安全保障が偏狭な国家安全保障の利益に優先されなければこの状況は終わらない、ということを示している。」アイリーン・カーンはそのように語った。

「しかし、2005年、希望が絶望感とたたかう明らかな兆しも見られた」

昨年、貧困と経済社会権に取り組む市民社会の大きな行動があった。ミレニアム開発目標の進展と実施状況を再評価する国連サミットでは、各国が公約を実施していない散々な結果が露呈された。例えば各国政府は、女性の人権について口先だけの約束をしたが、少女たちが教育を受ける平等の権利について、国際的な目標を満たせなかった。

2005年、国際刑事裁判所は、ウガンダにおける人道に対する罪と戦争犯罪に関して初の起訴状を出し、正義を求める声がまたひとつ勝利をおさめた。アウグスト・ピノチェト元チリ将軍が自宅軟禁に置かれ、アルベルト・フジモリ元ペルー大統領に対する国際逮捕状が執行されたことで、ラテン・アメリカにおける過去の国家元首に対する免責を後退させた。

大国は、自国の裁判所や公的機関から説明責任を果たすよう追及された。英国の最上級審は、拷問によって得られた証拠を採用しようとする政府の計画を拒否した。欧州評議会と欧州議会は、米国主導で行われた、被拘禁者を違法に拷問の恐れのある国に移送する「国家間移送」(レンディション)について、欧州各国がどのように関与したかを調べるべく調査を開始した。

欧州各国がどの程度まで米国の犯罪に加担したか、証拠が次々に暴露された。各国は、エジプト、ヨルダン、モロッコ、サウジアラビア、シリアなど拷問で知られている国へ被拘禁者を移送し、拷問を外注することで拷問の絶対的な禁止を無視していたことが明らかになった。

「悲しいことに、基本的人権の原則の尊重を回復するための裁判所や立法府の努力にもかかわらず、そうした義務を回避する新たな方法を考え出そうとした政府もある。」

英国は、「外交上の保証」という書面での保証によって、拷問の恐れのある国に人びとを送還させられるようにした。

米議会は、ブッシュ大統領の反対にもかかわらず拷問の禁止を再確認したが、一方で、グアンタナモの被拘禁者らがその取り扱いについて連邦裁判所の審査を受ける権利を厳しく制限した。

「テロによる市民への攻撃に対して最も強い言葉で非難しなければならないのと同じように、私たちは、拷問によってテロと戦うことができるという政府の主張に抵抗しなくてはならない。そのような主張は誤解を招き、危険であり、そして間違っている。石油によって火を消すことは、できないのだ」と、アイリーン・カーンは語った。

「大国による二枚舌と二重基準は危険だ。なぜならそれらは、ダルフール、チェチェン、コロンビア、アフガニスタン、イラン、ウズベキスタン、朝鮮民主主義共和国などにおける人権侵害に対応しようとする国際社会の能力を弱体化させる。二枚舌と二重基準は、これらの、あるいはその他の国ぐにの人権侵害の加害者が、その罪を処罰されないまま人権侵害をし続けることを許してしまう。」

「英国政府がグアンタナモにおける恣意的な拘禁と虐待に沈黙を続けるとき、米国が拷問の絶対的禁止を無視するとき、欧州各国がレンディション、人種差別、難民に関する実績に口を閉ざすとき、世界中の人権の擁護者であるという道徳的権威を自ら傷つけることになる。」

「昨年、国連はその主要な機関の改革と参加国に関する議論に多くの時間をかけたが、その一方で中国とロシアという2つの主要国の行為について注意を払わなかった。両国は、国内的にも国際的にも、人権に関する懸念を損なうような偏狭な政治的・経済的利権に固執した。」

「2005年、国連安全保障理事会において世界規模の安全保障を守ることに最も重い責任を負うべき国家が、実は理事会機能を麻痺させ、人権のために効果的な行動をとることを阻むことに最も熱心だったということを証明した。」

「大国は、人権で危険なゲームをしている。長引く紛争と増加する人権侵害についての審査表は、すべて私たちの目の前にある」

2005年は、社会における雰囲気が変化し始めた年でもあった。「現れてきた圧力によって、国際的な責任を効果的な行動に転換させなければならない」と、アイリーン・カーン事務総長は強調した。

2006年のアムネスティ・インターナショナルの主要な要請は、以下の通りである。

  • 国連とアフリカ連合は、スーダンのダルフールの紛争と人権侵害に終止符を打つために対策を講じること。
  • 国連は、小型武器の取引を管理し、人権侵害で利用されぬように、武器貿易条約制定の交渉をすすめること。
  • 米政府は、グアンタナモ基地の拘禁施設を閉鎖し、「テロとの戦い」で拘束され、世界各地に散らばるすべての被拘禁者の名前と場所を公開すること。
  • 新しい人権理事会は、ダルフールであろうがグアンタナモであろうが、あるいはチェチェンであろうが中国であろうが、すべての政府から人権尊重に関する平等な規準を要求すること。


「各国政府の政治的・道義的権威はますます、その内外における人権に対する立場によって審判されるだろう。これまで以上に、国連常任理事国とそのような理事国になることに意欲を見せている国ぐになど、力と国際的影響力を持つ国ぐにが、人権に責任を持ち尊重する行動をとることを必要としている。各国は、人権をもてあそぶようなことを止めなければならない」と、カーン事務総長は断言した。

アムネスティ国際ニュース
(2006年5月23日 GMT10:00解禁)
AI Index: POL10/018/2006

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