147カ国の市民は、実効性のある独立した人権擁護制度の維持を国連に訴える

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2007年5月 9日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:危機にある個人
2007年5月9日、12000名をこえる人びとが署名した請願書がジュネーブにある国連人権理事会のルイス・アルフォンソ・デ・アルバ議長に届けられた。世界各地の人権侵害の被害者、人権擁護運動家、人権問題の専門家、国会議員、各国の人権委員、NGO団体などから署名が集められた。下記に記したこの請願書は、「特別手続」として知られる独立した人権問題に関する専門家制度の整備・強化を国連人権委員会に求めている。

国際的および各地域の17のNGO団体に支援されたこの地球規模の請願書は、アムネスティ・インターナショナルのカナダ支部事務局長アレックス・ニーブによって正式に届けられた。ロベルト・ガレトン前コンゴ民主共和国担当国連特別報告者、コンゴ民主共和国のゴールデン・ミサビコ人権問題活動家、クン・ワ・カン国連人権高等弁務官次官が集会で発言し、スリランカの人道団体INFORMのスニラ・アベイセケラ事務局長からはビデオ・メッセージが送られた。

今回の請願行動の支持者の中にはノーベル賞受賞者のシリン・エバディ、欧州評議会議員会議のディック・マーティ上院議員、欧州評議会人権問題委員会のトマス・ハンマーベルグ委員、列国議会同盟のアンダーズ・ジョンソン事務局長、ソニア・ピカド米州人権協会会長、さらにこれまでに国連特別報告者などを経験したディエゴ・ガルシア・サヤン、ナイジェル・ロドリー、ピーター・ルプレシュ、テオ・フォン・ボーベンなどが含まれている。

国連人権理事会では「特別手続」制度の見直し―この制度の実効性を将来弱体化するおそれのある交渉がおこなわれており、請願書はそのさなかに送付された。この「特別手続」という言葉は、特別報告者などの世界の人権状況を監視する国連の独立した人権問題専門家たちをさしている。制度の見直しは2007年の6月18日に終了する予定だ。
一方「特別手続」の見直しには、人権保護という点で国連人権理事会をとりまく環境がより整備されることに繋がる制度強化の可能性も秘められている。しかし理事国の中には、いかなる国の干渉をも排した、独立して実効性のある権能を弱体化させる「特別手続」を骨抜きにしようとする提議を支持する国もある。
こうした提案の中には「特別手続」の活動を規制し、実効性を削ぐような条項を含む行動規範の草案が盛り込まれている。また特別報告者などを任命する場合に各国政府の選挙によるという案も含まれており、任命過程が政治化するおそれがある。現在、国連特別報告者たちは、任務の遂行上も選出過程においても、いかなる政府からをも独立性を保っている。

北朝鮮やミャンマーなど特定の国や地域における人権状況を検討するために設立されたこうした「特別手続」の権限の先行きはきわめて不透明だ。

現在、特別手続にもとづいた特別報告者や独立の専門家は41人に上る。「特別手続」は長いあいだ国連の人権問題関係の機構の中で最も実効性があり、重要な要素のひとつとみなされてきた。現地調査をし、調査報告を公開することに加えて、特別報告者たちは毎年、数千人にのぼる被害者に代わって緊急要請や当該国との意見交換を行ってきた。彼らは現地調査や研究活動を通じて、国内的・国際的レベルで人権問題を改善するよう勧告―人権法の発展への理解・促進―をしてきた。また人権の保護やに取り組もうとする国に対しては、実際的な指針や助言を提供してきた。

「特別手続」の対象には拷問、恣意的または即決処刑、人種差別や児童売買、女性に対する暴力、健康や食料、適切な住居を確保する権利、さらに人権擁護活動家や移民などの人びとの保護などがある。

請願書に署名した人びとは、現在おこなわれている「特別手続」の見直しによって、国連―とりわけ人権保護を扱う人権理事会の権能が大幅に減少するおそれがあることに懸念を示している。世界各地で起きている人権侵害の申し立てに対して、干渉を受けずに監視と迅速な対応が可能な、独立の専門家による実効性ある制度を国連が保持することは重要である。

請願書の発表と同時に、被害者、その家族、人権擁護活動家などから集めた証言集が発表された。証言集では、これらの人びとの生活に対して「特別手続」が与えた計り知れない影響力が詳述されており、世界各地の人びとの人権の享受とジュネーブでの交渉が直結していることを、各国政府に思い起こさせるものとなっている。

背景:
「特別手続」は旧国連人権委員会によって40年をかけて作り上げられた。最初の国別手続は南部アフリカの人権臨時専門家作業部会であり、アパルトヘイトでの残虐行為に対処するために1967年に設立された。また最初のテーマ別手続は、アルゼンチンで続出する失踪者に対処するために1980年に設立された、「強制的または非自発的失踪に関する作業部会」だった。

独立性があることで、「特別手続」は各国への調査団の派遣、人権侵害の申し立てに関する緊急要請や当該国との意見交換、権限範囲内の研究調査、声明や報告書の発表などの任務を進展させることができた。しかし十分な協力を行なわない多くの国の存在や、旧国連人権委員会が自らの提言に基づいた行動ができなかったことなどによって、「特別手続」はしだいに弱体化してきている。

請願書:6月17日まで以下で見ることができます。
http://www.actforspecialprocedures.org

「この署名に参加した私たちは、国連・人権理事会の特別手続きが、あらゆる人びとのあらゆる人権を守り促進するための、国連の取り組みの基礎であると確信しております。私たちは、国連加盟国に対し、これまでの特別手続きの強化を維持することなど、過去の成果に基づいて作業を進めるよう要請いたします。特別手続きの強化に関する過去の成果としては、妨害なくできる限り効果的に、世界各地の人権侵害の申し立てをモニターし、直ちに対応することができる独立専門家の制度などが含まれます。 」

AI Index: IOR 40/010/2007
2007年5月9日