パプアニューギニア:警察によるポルゲラの強制立ち退きと家屋破壊の中止を

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2009年5月11日
国・地域:パプアニューギニア
トピック:強制立ち退き
アムネスティ・インターナショナルは、住居を失った1000人を超える住民を保護するための措置を直ちに取るよう要請する。住民たちは、パプアニューギニアの警察によって家屋を焼き払われ、強制的に立ち退きをさせられた。

2009年4月27日、カナダに本拠を置くバリック・ゴールド・コーポレーションが所有し操業しているポルゲラ鉱区内の50家屋を警察が焼き払った。エンガ州ポルゲラ地区の法と秩序を維持するという作戦行動のために、200人以上の警官が配備された。警察は、これらの家屋の住民は違法採掘などの犯罪に関わっている不法占拠者であると主張している。同様の作戦行動によって、鉱山近辺にある住民の300家屋も焼き払われたとの報告もある。

アムネスティが入手した報告によれば、これらの立ち退きは国際法に違反している。適切な事前通告もなく、関係住民との協議もなされておらず、立ち退かされた家族に対する代替住居の提供もされていない。

パプアニューギニア政府は国際人権基準に基づいて、最終手段としてでなければ立ち退きを実行してはならず、また、実力行使を回避し、または最小限に留めるために、立ち退きに代わるあらゆる実行可能な手段を検討する義務を負っている。強制立ち退きは重大な人権侵害と見なされており、制裁措置として行ってはならない。

さらに言えば、鉱山を運営する会社および政府は、国際的に認知された「保安と人権に関する任意の原則」を遵守するべきである。この原則は、会社と政府の双方に対して保安に関する明確な指針を定めている。鉱山に責任を持つバリック社およびパプアニューギニア政府の双方は、この基準に従って行動し、人権を守ることを保証しなければならない。

報道によれば、サニ・ランビ内務保安大臣はエンガ州における警察配備の長期延長を計画している模様であり、さらに多くの家屋が破壊される恐れがある。

アムネスティは以下を要求する:
・パプアニューギニア王立警察は、ポルゲラ峡谷の住民に対する強制立ち退きおよび財産の破壊を直ちに中止すること。
・パプアニューギニア政府は、強制立ち退きとそれが実施された状況について完全かつ独立した調査を行ない、責任者を裁判にかけること。また政府当局は、強制立ち退きの被害者全員に対して、適切な代替住居および金銭賠償を含む十分な補償を確約しなければならない。
・パプアニューギニア政府は、強制立ち退きの被害者全員に対して、避難施設、食料、飲料水および医療支援を含む緊急援助を提供することを直ちに確約すること。
・パプアニューギニア政府およびバリック・ゴールド・コーポレーションは、鉱区内の住民の要望を優先し、適切かつ十分な賠償金の支払いとともに住居の移転のための公正な手続きを保証するよう取り組むこと。
・「保安と人権に関する任意の原則」を最近承認したカナダ政府は、バリック・ゴールド・コーポレーションに対してこの原則の遵守を求め、その具体化を支援すること。
・バリック・ゴールド・コーポレーションは、「保安と人権に関する任意の原則」に記されている原則を適用すること。

背景情報:
強制立ち退きとは、関係者への適切な通告や協議がなされず、法的な保護措置や十分な代替居住施設の確保もないまま実施される立ち退きである。国連の社会権規約委員会によれば、「個人、家族および/又は共同体を、それらが占有している住居および/又は土地から、その意思に反して、適切な形態の法的またはその他の保護を与えることおよびそれらへのアクセスなしに、恒久的又は一時的に立ち退かせること」と定義されている。社会権規約ならびに強制立ち退きや関連する人権侵害を禁止する自由権規約を含む国際人権条約の締約国として、パプアニューギニア政府は強制立ち退きを中止させ、強制立ち退きから国民を守る義務を負っている。

バリック・ゴールド・コーポレーションとポルゲラ:
バリック・ゴールド・コーポレーションはカナダの鉱山会社であり、27の操業中の鉱山を有する世界最大の金の生産企業である。バリック社は、子会社を通じてポルゲラ金鉱山を経営し、その鉱山の95パーセントを所有している。ポルゲラ鉱山は、2008年に62万7000オンスの金を産出した(2008年の金の平均価格は1オンス当たり871米ドル)。バリック社は、それまでの操業会社プレーサー・ドーム社の買収により2006年にポルゲラ鉱山を獲得した。

約2350ヘクタールにわたる鉱区内には多数の村が存在する。鉱区内に住む約1万人の先住民族を代表するポルゲラ土地所有者組合は、住民のための公正な住居移転手続きを要求している。

多くの地元住民は、選鉱くずや廃棄された岩石から、また鉱山の露天掘り採掘場で金を探している。地元住民は、鉱山操業が開始される前から砂金を採掘してきたこと、それは合法的かつ重要な収入源であったこと、そして貧困および自給自足的な農業を営むには農地が不足していることを理由として、採掘を継続することを主張している。地元住民による金の採掘は、会社の特別リース鉱区内で行われているため違法である、とバリック社は見なしている。この緊張関係が鉱山地区における紛争の原因となってきた。1990年に操業が開始されてから、この地区で数件の暴力的な死亡事件が発生した。またこの鉱山は、環境への影響のために激しい非難を受けている。2009年1月30日、ノルウェー政府年金基金は、「鉱山操業の直接的な結果として深刻な環境破壊を引き起こしている」として、投資先企業からバリック社を除外した。

「保安と人権に関する任意の原則」 :
人権と企業の社会的責任に関心をもつ米国、英国、オランダおよびノルウェー政府、資源エネルギー分野の企業(以下、「企業」)ならびに非政府組織(以下、「NGO」)は、人権および基本的自由の尊重を保証する操業方針に基づき、操業の安全および保安を維持するために、企業にとって指針となる諸原則を策定した。

2009年3月以降、カナダ政府は、国外で操業しているカナダの資源系企業に対する政府方針として、この原則の具体化を促進してきた。

この原則は以下を規定する:
・企業は、治安当局と協力して、次の原則を促進するために影響力を行使するべきである。:(b) 実力行使は、厳密に必要な場合にのみ、また脅威に比例する程度に限って行われるべきである。:(c) 個人の権利を侵害してはならない。

・治安当局が実力行使する場合、その行動を関係諸機関および当該企業に通告するべきである。実力を行使する場合は、犯罪者を含むすべての負傷者に対して医療が提供されるべきである。

アムネスティ発表国際ニュース
AI Index: ASA 34/001/2009
2009年5月11日

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