人権を尊重しないならば、ミレニアム開発目標は貧しい人びとを排除していることになる

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2010年9月22日
[国際事務局発表ニュース]
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各国首脳が、9月20~22日にニューヨークで開かれる国連サミットにおいてミレニアム開発目標の進捗を評価するための会合を準備している中、ミレニアム開発目標(MDG)は、各国政府が最も貧しい人びとの人権を無視し、侵害しているために、世界中のそうした人びとを見捨ててしまっていると、アムネスティ・インターナショナルは語った。

ミレニアム開発目標は、1億人のスラム居住者の生活を向上させることのみを目標にしたため、スラムに暮らす10億以上の人びとについては計画の中に入ってさえいない。

「貧困下に暮らす人びとの人権を守るために、緊急の対策を講じると世界の指導者たちが合意しない限り、世界各地の最も貧しく、最も恵まれない人びとはミレニアム開発目標の外に置き去りにされたままになる」と、アムネスティの国連サミット代表団を率いるサリル・シェティ事務総長は語った。

「しかし、言葉だけでは不十分だ。各国政府が人権を守れなかった場合、人びとは政府に責任を取らせることができなければならない。市民は、政府がその義務を実際に果たすために、裁判や調整機関を通じて、汚職や怠慢に抗議することができるはずだ」

貧困下に暮らす人びとの70パーセントは女性と推計されている。しかし、多くの国ぐにのミレニアム開発目標に対する取り組みは、食糧、水、保健衛生、住宅へのアクセスなど広範にひろがる女性差別に取り組んでいない。一方、ジェンダーに基づいた暴力を支え、ミレニアム開発目標の進展を妨げている差別的な政策や法、実務は放置され、悪化している。

多くの国は、大規模な強制立ち退きを実施し、スラムに住む人びとをさらに深い貧困の淵に追いやり、人びとの居住権を侵害していている。たとえば、政府がポートハーコートの湾岸地域にある40以上の非公認定住地域を破壊することを計画しているために、ナイジェリアの一都市だけで20万人以上が強制立ち退きに直面している。破壊が実行されれば、数千人が生計を奪われることになる。

ケニアも、ミレニアム開発目標達成に努力する一方で、スラムに住む女性のニーズを無視する政策を持つ国の一例である。スラムに住む女性たちは、とりわけ日没後に共同トイレを使う際に襲われる危険がある。ジェンダーに基づいた暴力を予防し、調査し、処罰するための有効な取り締まりがなく、あるいは女性や少女への効果的な救済を提供できていないことは、女性に対する暴力がほとんど免責されていることを意味している。

もうひとつの事例はニカラグアだが、同国は母子健康を改善するためのミレニアム開発目標に力を入れているにもかかわらず、中絶をいかなる状況下においても禁止している。強かんや近親相姦の結果の妊娠の圧倒的多数は10歳から14歳の少女たちで、安全でない中絶や若年齢での出産によって、彼女らの健康と生命は危険にさらされている。

しかし、各国政府に説明責任を負わせる有効な仕組みがあれば、ミレニアム開発目標に向けた取り組みを強化することができる。2001年、インドの最高裁は、お昼の学校給食プログラムは最低限の栄養素基準を満たし、すべての就学児童に提供されなければならないという判決を下した。それ以来、給食提供は改善され、毎年さらに35万人の少女が入学できている。

「貧困に立ち向かう国際的な公約が、最も貧しく、最も社会的に弱い立場にある人びとを置き去りしてはならない」と、サリル・シェティ事務総長は語った。

「しかし、そういうことが実際に起こっている。世界のリーダーたちが真の変化を達成するために必要な行動をとり貧困下に暮らす人びとの人権を守ることに責任を果たさなければ、これからも起こり続けることになる。今回のサミットは最後の機会だ。今回ここで失敗したら、2015年が失敗に終わることは目に見えている。」

背景情報

ミレニアム開発目標への取り組みは、アムネスティ・インターナショナルの<人間らしく生きたい(Demand Dignity)>キャンペーンの一環であり、各地の貧困の悪化を招いている人権侵害を止めることを目的としている。キャンペーンは、世界中の人びとを動かし、貧困下に暮らす人びとの声に耳を傾け、彼・彼女らの権利を守ることを認識させることを、権力を持つ各国政府や企業、その他に訴えている。

貧困をなくすための最も知られたグローバル・イニシアチブであり続けているミレニアム開発目標は、10年前に採択されたミレニアム宣言をもとに立てられ、世界各国の首脳によって、2015年までに目標を達成することが公約され、合意された。

ミレニアム開発目標は 8つの分野に焦点を当てている。(1)極度の貧困と飢餓の撲滅、(2)普遍的初等教育の達成、(3)ジェンダーの平等の促進と女性の地位向上、(4)乳幼児死亡率の削減、(5)妊産婦の健康の改善、(6)HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止、(7)環境の持続可能性の確 保、(8)開発のためのグローバル・パートナーシップの推進である。