武器貿易条約(ATT):国連での政治的な駆け引きにより、数百万の人命が危険にさらされている

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2012年2月22日
[国際事務局発表ニュース]
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トピック:武器貿易条約

武器貿易条約(ATT)に対する拒否権の発動をもくろむ国の首脳は、数百万の無実の人びとの命をもてあそぶのを止めなければならない。アムネスティ・インターナショナルは2月17日、このように述べた。

1週間にわたる国連協議で、7月に行われる武器貿易条約の最終交渉に向けた細部の調整が行われた。

これまで、エジプト、イラン、パキスタン、シリアを含む数ヵ国は、いかなる合意にも拒否権を発動してきた。また、その他の国々も、条約内の人権保障関係の条項を骨抜きにしようとしている。

「武器貿易条約ほどの重要な問題に関し、人権よりも他の事を優先する国々を、我々は見逃すことはできません」と、アムネスティのサリル・シェティ事務局長は述べた。

「一連の協議は、一般市民に武器を向ける危険性が非常に高い地域への武器提供の禁止に、世界が合意する歴史的な機会です。この合意は人命を救い、人権を保護する役目があるのです」

世界中で、さまざまな武器による人権侵害が行われている。メキシコ、スーダン、コンゴ、シリア、パキスタンなど多くの国では、数百万人が殺傷され、強かんされ、母国を脱出せざるを得なくなっている。

アムネスティは、武器が重大な人権侵害を引き起こし、助長する危険性が著しく高い国への武器の移転を禁止する条約の締結を求めている。しかし、7月の交渉に向けて、複数の国が条約の規定範囲を限定しようとしているため、協議の成果はあやしくなっている。

中国、ロシア、アメリカなどの国々が、強力な人権セーフガードを条約に盛り込むことを拒否している。セーフガードに概ね好意的な国は、イギリスを含め数ヵ国あるが、セーフガードの盛り込みを最終合意に要求するかは、未知数である。
「長年にわたり、各国は厳格な武器貿易条約に強く反対してきましたが、その都度、世界中の数百万人の声を無視することはできなかったのです」とサリル・シェティは述べた。

「昨年、私たちが目の当たりにしたように、民衆は自らの権利の要求に武器を持って弾圧しようとする相手に敢然と立ち向かうのです。7月に、彼らの声をニューヨークまで届けなければいけません」

2011年、中東や北アフリカで、民衆が弾圧的な政府に対し、立ち上がった。米国、ロシア、ヨーロッパの国々はそれ以前から、これらの弾圧的な政府に大量の武器を供給してきた。深刻な人権侵害を引き起こす可能性が高いことが明らかであるにも関わらずだ。この状況をアムネスティは、つい一週間前、明らかにしたばかりである。

また、ロシアと中国がスーダンに武器を供給したために、現在も続く紛争とダルフールの大量の国内避難民の発生に油を注ぐ結果になったことを、アムネスティは明らかにしている。

10年以上にわたり、アムネスティは実効的な武器貿易条約のキャンペーンの最前線に立ってきた。アムネスティの代表団がニューヨークに入り、人権を保護する条約の必要性を訴えるため、各国政府関係者に働きかけた。

アムネスティは、2003年に「コントロール・アームズ」キャンペーンを立ち上げた市民団体の一つである。その3年後、国連において世界的な武器貿易条約を成立させるべく、153カ国の政府が最終的に賛成票を投じた。

来る7月の協議が、10年におよぶ長期キャンペーンの最終段階となる。

■補足説明■

国際的な武器取引を許可する基準を定めたグローバルな条約は、まだ存在していない。2006年12月、国連総会の場でようやく、武器貿易条約(ATT)を作るために話し合うことが合意された。それ以来、どのような条約にすべきか、国連で議論されてきた。

これまでの準備会合を経て、2012年7月には条約交渉会議が予定されている。この条約交渉会議で合意されれば、2012年の国連総会で条約成立が採択される可能性がある。

「コントロール・アームズ」キャンペーンは、国際人道法や人権法を尊重した条約が成立することをめざしている。

アムネスティ発表国際ニュース
2012年2月17日