世界中で後退しつつある、死刑制度

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2012年4月 2日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:死刑廃止
正義と自由を擁護し、人権侵害と不正な行為を明らかにする組織に従事していると、進歩よりも問題を強調せざるを得ないことはめずらしくない。

昨年、死刑を執行したのは198ヵ国中わずか20ヵ国で、10年前と比べ3分の1以上減少した。国連加盟国の90%の国々では死刑は行なわれておらず、いまや140ヵ国で法律上あるいは事実上、死刑制度は廃止されている。

これらの数字は、再考に値する。アムネスティがいかなる犯罪、犯罪者、執行方法であっても、例外なく死刑に反対し、死刑廃止を求める世界規模の活動を始めた35年前、世界で死刑を廃止していた16カ国は少数派であった。しかし今日、形勢は逆転し、死刑制度に固執する国々こそが例外となったのである。

2011年に死刑が行なわれなかった地域には、ヨーロッパ全域、ベラルーシを除く旧ソ連、また米国を除く南北アメリカ大陸が含まれた。太平洋地域においては、5件の死刑判決を言い渡したパプアニューギニア以外は、死刑の判決も執行もなかった。

この大きな変化は、人権活動家が勇気を持って抑圧に立ち向かい、政治家や意思決定者が毅然と、政治的な、あるいは受けの良い流れに逆らい、そして弁護士、ジャーナリストや学者が勇敢にも真実を明らかにしてきた、その証である。

彼らが証明したことは、生きる権利を侵害する死刑制度は間違っている、というだけでなく、いったん詳細な調査が行なわれると国家による殺人の正当性は破綻する、ということである。

死刑は、凶悪な犯罪を抑止するのだろうか? この点に関する確かな証拠はない。死刑制度を維持している国々と比べて、死刑制度を廃止した国々における殺人発生率は、多くの場合低い。国家による殺人は、暴力の使用を容認することであり、そういった殺人が暴力や報復の連鎖を煽る場合もある。

では、死刑に対する一般市民の支持はどうであろうか? 死刑への支持は、通常広く、そして浅い。政治家や評論家による場当り的な反応、あるいは打算的な思惑として犯罪を「厳しく」取り締まるという行為が、考え抜かれた議論に取って代わられ、代替案が提示されると、死刑に対する世論の支持は後退する。

犯罪の被害者には、正義を享受する権利や、気持ちを整理する権利はないのだろうか? 恐ろしい犯罪を経験した人びとには、当然正義を享受する権利がある。しかし、正義は報復に端を発するものであってはならない。個人によるものでも、国家によるものでも、殺人は間違った行為なのである。

死刑によって、気持ちを整理できる人もいるかもしれない。しかし、これも明らかではない。というのも、凶悪犯罪の被害者が、加害者を死刑に罰することに対し、反対する場合もあるからだ。米国では、9.11に触発された犯罪が多発したが、その被害者の一人であるバングラデシュ移民、レイス・ブイヤンは自分を撃った犯人の減刑を求めた。彼は、「私が信仰する宗教には、いつでも寛容は復讐に勝るという教えがあるのです」と述べている。

また、言うまでもなく墓石の下から控訴することはできない。アメリカのイリノイ州では、複数の誤った判決が下された後、2011年に死刑制度が廃止された。

死刑制度支持の真の試金石となるのは、死刑を執行する覚悟ではなく、無実の人を殺してしまう可能性を受け入れる覚悟にある、と主張する人がいるが、それはもっともである。

一方で地域的、宗教的あるいは文化的な理由で、死刑制度を正当化する人びともいる。しかし、死刑を廃止した多数派の中には、主要な世界のすべての地域からの、また主要な世界のすべての宗教および文化を有する国家も含まれているのである。

それでも一部の国家は、死刑制度の維持に固執している。ここで、悪い知らせを取り上げなくてはならない。昨年、孤立した少数グループの国々で、異常な水準の死刑が執行された。斬首、絞首、致死薬の注射、銃殺などの方法で、2011年末時点で、世界で少なくとも676人が死刑に処せられており、また少なくとも18750 人の死刑囚が存在している。

これらの数字には、世界最多の死刑が執行されている中国が執行しているとされる数千件の死刑は含まれていない。アムネスティは、中国の死刑の執行数を公的機関から入手していたが、実際の数字より大きく下回ると思われるため、今後は公表しないこととした。「過去4年間で、中国における死刑の適用が大幅に減少した」という中国政府の主張を確認するため、アムネスティは実際の執行数を公表するよう要請しているが、中国政府はこれまでのところ、これに応じていない。

またイランにおいては、「非公式に多数の死刑が執行されている」という信頼できる報告があるが、それもこれらの数には含まれていない。この報告されている執行数を加えるとイランにおける死刑執行数は公式な数のほぼ2倍になる。

中国とイランに加えて、サウジアラビアとイラク、そして南北アメリカ地域で唯一かつG8加盟国で唯一の国として、米国もまた進んで死刑を執行している。さらに北朝鮮、ソマリアそしてイエメンを加えたこれらの国家は、つねに毎年、最も高い水準の死刑を執行している国家なのである。

地域別には、中東では死刑執行数が大幅に増加し、2010年の約1.5倍になった。イラク、イラン、サウジアラビアそしてイエメンで行なわれた死刑執行が、中東地域全体の99%を占めた。

またほとんどの国で死刑判決が下された、あるいは死刑が執行されたのは、不正な裁判が行なわれた後であった、ということにも注目しなければならない。ベラルーシ、中国、イラン、イラク、北朝鮮、そしてサウジアラビアでは死刑の前に、監禁や拷問までもが行われ自白を強要したケースもあった。歴史を通して頻繁に行なわれてきたように、抑圧的な国家によって、面倒を起こす者や好ましくない者を排除するために死刑制度が利用されたのである。

このように、のんびりと構えている余裕はないのである。死刑執行は、その一つ一つが行なわれてはならないものである。しかしながら、2011年は全体的に死刑廃止に向かう傾向が着実に強まり、私たち全員を被害者にするこの残酷で取り返しのつかない刑罰が、いや応なく過去の物となる方向に必然的に向かっていることは明らかなのである。

アムネスティ・インターナショナル
事務総長サリル・シェティ


アムネスティ発表国際ニュース
2012年3月27日