死刑をめぐる10年:執行は減少しているが、廃止は遠い

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2012年10月23日
[国際事務局発表ニュース]
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トピック:死刑廃止

この10年、世界的に見て死刑制度の廃止へ向けた重要な前進が見られた(C)AI
この10年、世界的に見て死刑制度の廃止へ向けた重要な前進が見られた(C)AI

10月10日、世界死刑廃止デーは今年で10周年を迎える。この10年、世界的に見て死刑制度の廃止へ向けた重要な前進が見られた。しかし、極刑を歴史の遺物として葬るには、まだいくつかの重大な問題がある。

2003年の第1回世界死刑廃止デー以来の取り組みが成果をあげ、新たに17ヵ国がすべての犯罪に対して死刑を廃止する決定を下した。これによって、全世界の70パーセントを超える合計140ヵ国が、法律上また事実上死刑を廃止した。

しかしながら、死刑制度を維持する国々が減少する一方で、米国や中国のような大国は、依然として驚くべきペースで死刑を執行している。

2011年の死刑執行国は21ヵ国だけであり、第1回世界死刑廃止デーの年の執行国28ヵ国から減少した。その年以来、17ヵ国がすべての犯罪に対して死刑を廃止したことは大きな前進と言ってよい。

ところが、この前進にもかかわらず、死刑に対する闘いはまだ長い道の途上にあり、残る死刑存置国が永久にその制度を廃止するまでには、多くの課題が残る。

廃止へ向いている明らかな潮流

現在死刑を法律上また事実上廃止している140ヵ国は、宗教と文化においてさまざまな法制度の相違があるとしても、世界の主要な地域を代表している国々である。

2003年以来、毎年平均2ヵ国がすべての犯罪に対して死刑を廃止している。最近では、今年1月にラトビアが廃止している。

同じ時期に、新たに26ヵ国が、国連の採択した死刑廃止条約、すなわち自由権規約第二選択議定書を批准した。今年、ベニンとマダガスカルが批准したことによって、75ヵ国が締約国となった。

死刑執行が最も多い数か国においても前進が見られた。米国ではいくつかの州が死刑を廃止した。

死刑の適用犯罪を減らす改革

死刑を維持しているが、適用犯罪を減らす重要な改革を行った国々もあった。

2011年、中国、ガンビアと台湾においても改革があった。世界最多の死刑執行国である中国は、13の非暴力的犯罪および75歳以上の被告人への死刑の適用を廃止した。しかし、死刑廃止の対象となった犯罪条項はまれにしか適用されず、さらに他の犯罪に死刑の適用が拡大された。

アムネスティ・インターナショナルは、すべての死刑に対して例外なく反対するが、死刑判決は増加の傾向にある。すべての国に対して、犯行時に子どもであった被告人、および精神的または知的障害のある被告人に執行しないよう、引き続き働きかけている。

また、アムネスティは、少なくとも死刑の適用に関する国際基準を遵守するよう、諸国に呼びかけている。死刑は「最も重大な犯罪」にあたる場合にのみ適用されるべきであり、サウジアラビアやシンガポールに見られる薬物犯罪や他の非致死的な犯罪には適用してはならない。

諸国の頑強な抵抗

死刑執行国は少数であり、その数はさらに減少しているにもかかわらず、死刑は着実に執行されている。

毎年、中国では多数の死刑が執行されているが、米国やイエメン、北朝鮮でも数十人が執行されている。

今年、ハマスが支配するパレスチナ占領地のガザ地区とサウジアラビアでは、執行数が増加した。サウジアラビアで執行された人びとの3分の1は、薬物の密売人であり、10月には65人に達した。イラクでは今年に入ってこれまで119人が執行され、2011年の2倍となった。

とくに残念な展開としては、ボツワナなどいくつかの国が最近執行を再開したことである。インドでは近く再開される恐れがある。長期の停止の後に執行を再開した国々もある。ガンビアは、30年にわたる執行停止の後に再開した。

死刑判決を下すうえで、差別が依然として重大な要因となっている。金銭的な手立てがない人びとや、弁護士に相談できない人びと、その国の言葉を話せない人びとなどが、しばしば死刑判決を受けている。

誰を指すのかがあいまいな「テロリスト」犯罪、同性間の性関係に関する犯罪、「宗教」に関わる犯罪などが、しばしば死刑に相当する犯罪として一括されてしまう。

特定の人種的または宗教的背景をもつ人びとが、不当に死刑判決を受ける国もある。たとえば、イランにおけるクルド人である。

アムネスティは、引き続きすべての国に死刑の廃止を求める。

しかし死刑を廃止するまでは、裁判の国際基準に沿って、裁判の全過程が公正なものでなくてはならない。訴追と審理の手続きが透明であり、判決は必要な司法判断に従ったものでなければならない。政府はまた、すべての死刑の判決と執行を公開する義務がある。

いかなる刑法制度も完全ではない。適正な手続き保障があったとしても、無実の人に死刑を執行してしまう危険は常にある。いかなる国もそのような危険性を正当化することはできない。

無実の人に執行する危険性があること、および死刑が取り返しのつかない刑罰であること、その2つの理由で、われわれはすべての死刑執行国に再考を求める活動を続けている。これらの国が、本質的に残酷で非人道的な罰を放棄している大多数の国々に加わることを望む。

アムネスティは、1977年に死刑廃止を求める世界的なキャンペーンを始めた。

アムネスティは死刑廃止世界連盟に加盟する国々とともに、死刑廃止のための法令制定を促進し、死刑廃止を目指す自由権規約第二選択議定書の批准を呼びかけてきた。

また、死刑の廃止もしくは制限を行う国際基準を支持し、死刑廃止を視野に入れて執行停止を求める、今年の年末に行われる第四次国連総会決議の採択を支援する活動を続けている。

アムネスティ国際ニュース
2012年10月10日