死刑執行を政治の道具にするな

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2013年10月10日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:死刑廃止

政治家は、「犯罪率を下げる」名目で安易に死刑執行に訴え、本来やるべき刑事司法制度などの問題に取り組んでいない。この姿勢を直ちに改めるべきである。

アムネスティは、世界死刑廃止デーを前に発表した報告書「Not Making Us Safer(それで安心できるのか)」で、「死刑には重大犯罪を抑止する効果はない」ことを強調した。

死刑に犯罪抑止力があるという証拠はない。従って、治安の改善には、大衆受けする死刑という政策ではなく、実効性のある犯罪対策にこそ取り組むべきである。それこそが、政治家としての真のリーダシップである。

死刑執行国、あるいは執行を予定する国は少数派であるが、それらの国々は高い、あるいは上昇する犯罪率や特に凶悪な犯罪に対して、短絡的に死刑を用いる。

昨年は、ガンビア、インド、インドネシア、クウェート、ナイジェリア、パキスタンで、そしてつい最近はベトナムで、死刑が再開された。

しかし、死刑存置国はいつも少数派であり、140カ国がすでに死刑を法律上あるいは事実上廃止している。

死刑が犯罪防止に効果あることを説得力を持って示す証拠は存在しない。一方で次のような事実がある。

  • 過去10年の間で、インドは殺人率が23パーセント減少したが、2004年から2011年の間に死刑は1度も行われていない。

  • カナダでは、1976年の死刑廃止後、殺人率が減少した。

  • トリニダード・トバゴで行われた最近の研究では、死刑、禁錮刑、犯罪の間の相関性は見られなかった。

死刑をよしとする政治的態度は、刑事司法制度上の問題の根本的な解決から目をそむけることになる。

また犯罪抑止の鍵は、効果的な警察活動、公正に機能する刑事司法制度、教育や雇用の改善であることが分かってきた。

政治家は死刑を正当化する理由として、しばしば「世論の強い支持」を持ち出す。しかしながら世論調査は、複雑な問題を単純化してしまう傾向がある。

誤判による死刑執行の危険性や不公正な裁判の存在などが考慮されるようになると、死刑の支持率は減る。

犯罪の被害者は正義を手にする権利があるが、死刑がその答えではない。「死刑を執行しているから犯罪者に厳格だ」と考えるのは、人命を政治の道具にすることだ。

アムネスティは、犯罪の性質や状況、有罪・無罪、個人の特質、執行手段などにかかわりなく、すべての死刑に例外なく反対する。

死刑は、世界人権宣言にうたわれている生きる権利の侵害である。また死刑は、残虐、非人道的および品位を傷つける究極の刑罰である。

アムネスティ国際ニュース
2013年10月10日