- 2014年6月20日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:
- トピック:難民と移民
開発途上国が世界の難民問題の重荷を過分に背負う。 (C)Amnesty International
国連安全保障理事会は、国際平和と安全保持という本来の役割を見事なまでに果していない。アムネスティ・インターナショナルは、安保理理事国に対して、紛争国からの難民を保護し、これ以上故郷から追われる人びとが出ないよう、断固とした行動をとるよう、強くもとめる。
紛争真っ最中のシリア、南スーダン、中央アフリカ、イラクに対して、国連安保理、時には国連事務局の対応が実効性に欠けていたり後手に回っているために、暴力の連鎖が起き、有効な対応をとる前に各地が焦土と化している。
一方、シリアに対して有効な手を阻止している国々は、世界の難民問題にもほとんど対応していない。昨年、ロシアと中国の難民再定住者数はゼロである。
国連が各国に求めるシリア向け支援金総額は、国連史上最大規模だが、ロシアも中国も拠出したのは微々たるものだった。ロシアは、昨年は全体の0.3%、今年は0.1%、中国はそれぞれ0.1%と0.4%だった。
一方、経済力が劣るにも関わらずこの危機に正面から立ち向かう発展途上国がある。イラン、ヨルダン、レバノン、トルコ、パキスタンは、難民受け入れで上位5カ国に入っている。このうちヨルダン、レバノン、トルコの3カ国は昨年、シリア1国から合計152万4979名の難民を受け入れた。対照的に、米国は昨年、再定住したシリア難民はわずか36名だった。シリア以外の国々からは数千名の難民を受け入れてはいるが。EU28カ国は、3万498名のシリア人受け入れを約束したが、そのうち2万5500名はドイツである。
昨年、少なくとも43万5000名がEUに難民申請したが、受け入れられたのは13万6000名だった。
先進国では、受け入れ人数が少ないにもかかわらず、難民や庇護希望者はしばしば人権侵害にさらされている。ヨーロッパに保護と安全と希望を求めて国境にたどりついた難民や移住希望者に対して、ギリシャはしばしば暴力と脅しで対応してきた。
アムネスティは、トルコ経由でヨーロッパを目指そうとする人びとが裸にされ、持ち物を奪われ、銃を突きつけられ、トルコに戻された複数のケースを確認した。
人口密度が世界で最も低いオーストラリアもまた違法行為を犯している。同国は、国外のナウル共和国とパプアニューギニアのマヌス島に手続き事務所を置き、そこで難民と庇護希望者に重大な人権侵害を犯し、それらの事実を隠ぺいしてきた。
虐待に何の言い訳も通用しない。何より、自国の人びとには決してやらないような処遇を、難民や庇護希望者に行っているのは、恐ろしい限りである。
先進国政府は、「私たち」と「あの人たち」の観点から物事を考えるのを止める時である。難民や庇護希望者はしばしば恐ろしい苦難を耐えてきている。彼らは保護され人間的で尊厳を持った処遇を受けて当然である。
アムネスティ国際ニュース
2014年6月20日