武器貿易条約発効 人権の歴史的快挙

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2014年12月22日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:武器貿易条約

武器貿易条約が今週発効される。人権にとって大きな進展である。© TBWA/Paris
武器貿易条約が今週発効される。人権にとって大きな進展である。© TBWA/Paris

武器貿易条約が、12月24日に発効する。20年以上にわたってアムネスティや共に活動してきたNGOにとって記念すべき人権の飛躍である。

一つひとつの武器取引で人権の視点が明確に入る、初めての条約である。この種の条約としては初めての法的拘束力を持ち、残虐行為を行う可能性のある国に武器が渡ることを阻止することができる。

アムネスティと支援者は1990年代半ばからロビー活動やキャンペーンを繰り返し展開してきた。

武器条約が長年の運動を経て発効したことは、歴史的快挙である。人権活動家たちが、優れた着想を人びとの命を守る手段に変えるためにあきらめずに活動を続ければ、何が実現しうるのかということを示している。

1990年代初め、アムネスティの活動家たちが、他の少数の人たちとともに武器取引規制を初めて提案したときには、それを聞いて嘲笑する人たちもいた。

20年を経た今、その提案が法的拘束力のある条約になる。活動家たちの懸命な活動と創造力、固い意志の証である。

これまでほとんど規制なく取引されていた武器・弾薬で、毎年少なくとも50万人の命が失われ、数百万人が負傷し、強かんされ、自宅を追われている。武器は秘密裏に取引されているが、国際的移転の総額は、年1000億米ドル近いとされる。武器貿易条約には、大量虐殺、人道に対する罪、戦争犯罪や重大な人権法違反となる行為に武器が使用される恐れのある国への移転を阻止する確固たる規定が、多く盛り込まれている。武器貿易条約に参加する各国は今後、武器輸出が残虐な行為を助長する危険性を軽減するために、客観的な評価を求められる。

武器の輸出国主要10カ国のうち、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国の5カ国は、武器貿易条約をすでに批准した。批准国数は全部で60カ国だ。条約に署名したがまだ批准していない国は70カ国である。最大の武器生産国であり輸出国の米国は、その69カ国に入っている。中国、カナダ、ロシアなど他の主要な武器生産国は、条約の署名あるいは批准を拒否している。

アムネスティは条約をしっかりと機能させるために、すべての国が批准して条約に参加するようこれからも圧力をかけ続ける。世界のアムネスティ支持者らは、米国、中国などまだ批准していない国々が、来年には批准するよう要請していく。この条約が世界の武器取引の基本原則を確立したとはいえ、万能ではない。各国がこの原則を確実に守るようにするためには、さらに幅広い支援と圧力が必要であり、各国の決意と参画が不可欠である。武器が見境なく取引されてきたために、世界でどれだけの人びとが苦しめられてきただろうか。各国が条約を実践することは、幾多の武器犠牲者や被害者に対する責務である。

背景情報 

1990年代初めより、アムネスティは他のNGOとともに、残虐行為や人権侵害が行われている国で、事態をさらに悪化させる通常兵器や弾薬の流入をくい止めようと、国際的な武器移転を規制する強固で法的拘束力のある国際規約の実現に向けて活動してきた。100万人以上が運動に加わり、各国政府に武器貿易を規制する条約に合意するよう要請してきた。

2013年4月2日の国連総会で、155カ国が条約案に賛成票を投じた。条約の発効には50カ国が国内での正式な承認手続きを経て条約を批准する必要がある。その50カ国に達したのが、2014年9月25日のことであった。国連の条約としては大変迅速な進展だった。

アムネスティは、これまで野放図な武器移転とその移転がもたらす深刻な人権侵害の実態を調査し公表してきた。

例えば、米国からイラクへの武器の計画的輸出。アムネスティの調査で、イラクではここ数カ月、深刻な人権侵害があることが明らになっている。そして、中国から南スーダンへの大量の武器弾薬の輸出。紛争が頻発するスーダンでは、戦争犯罪と人道に対する犯罪が行われてきた。国連の統計によると世界で最も殺人率が高いホンジュラスには、さまざまな国が小型武器や軽兵器を供給している。

アムネスティ国際ニュース 
2014年12月22日