市民団体 EUに企業の紛争鉱物監視強化を要請

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2016年6月13日
[国際事務局発表ニュース]
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トピック:企業の社会的責任

紛争鉱物取引の規制に関して欧州理事会、議会、委員会が協議を続ける中、アムネスティ・インターナショナルはじめ130の市民団体はEU(欧州連合)に対し、この問題に立ち向かうまたとない機会を生かすよう要請している。

多くの企業は、毎年欧州に流入する何十億ユーロ相当の鉱物が、紛争や人権侵害の資金源になっていないかどうかを確認していない。こうした鉱物は、携帯電話、ノートパソコン、自動車、電球などの製品に大量に使われている可能性がある。

市民団体は、鉱物がその原産国で武装集団の資金源になっていることや鉱山が児童労働の温床になっているなど、鉱物が紛争や人権侵害に密接に関わっている実態を何年にもわたって調査し報告してきた。

市民団体が書簡で求める要求は単純だ。EUは、紛争や人権侵害と関わる可能性がある鉱物や製品を購入する場合は細心の注意を払うよう欧州企業に求める、というものである。EUは、食品から金融サービスまで、各業種で同様の法律を採用している。またこの要請は、EU加盟国が、ずっと以前に署名した国際基準にも全面的に準拠している。

だがEU加盟国は、企業の社会的責任を問いつつも、その行動が伴わない。鉱物を原料で購入するごく少数の企業に適用される法律は支持する一方、鉱物が含まれる部品・製品を購入する大多数の企業をまったく見て見ぬふりをして、責任逃れを許している。

さらに悪いことに、昨年12月にEU加盟国が行った提案は、法律の規制下にある一定の企業が行っているチェックを大幅に甘くするというもので、国際基準そのものを弱体化させるものだ。

EU加盟国がこうした要求を欧州議会に強いれば、おそらく規制法の影響はほとんど無きに等しいものになり、欧州のほとんどの企業それぞれの裁量次第ということになる。規制を緩めた場合の結果はわかりきっている。広く知られた統計データが示すところでは、こうしたチェックを敢えてするという企業は極めて少数だということだ。この事態を認識しているからこそ、コンゴ民主共和国から米国に至るまで世界中の多くの国が、鉱物取引を規制する法律を採択したのである。

EU諸国の提案はいまや、世界規模の鉱物問題に対処するさまざまの国際基準や取り組みを台無しにしかねない。何より問題なのは、この提案が紛争鉱物に関わる暴力や迫害で日常的に苦しむ地元住民を見捨てるものであるということだ。その間にも、欧州企業はこの忌まわしい取り引きで利益をあげ続けるだろう。

アムネスティ国際ニュース
2016年6月13日