国連:大国のエゴで国連事務総長の難民危機責任分担構想をつぶしてはならない

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2016年7月28日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:難民と移民
  • 2018年までに、難民に関するグローバルコンパクトに合意を目指す国連協議が進行中
  • 9月の国連総会を控え、難民危機を打破する提案が固まるまであと数日しかない
  • 強力な施策になれば難民2千万人に新たな希望が
  • 各国のエゴのために難民の権利を犠牲にするのは歴史的な過ち

オーストラリア、中国、エジプト、インド、ロシア、パキスタン、英国などの思いもよらない取り合わせの国々が、世界で2千万人が直面する難民問題への実効性ある取り組みを、握りつぶそうとしている。残された協議の時間はあと少ししかない。

国連加盟国はニューヨークで7月末までに、難民が置かれている現在の危機と、将来の同様の事態に対応するため、難民に関するグローバルコンパクトに向けての合意文書をまとめる予定だ。9月の国連総会での採択にむけて合意文書をまとめるまでに、各国がその立場を変えるには、この数日が最後の機会である。

残された時間内で、世界的な危機の打破に、何ができるか、何をすべきかを合意することができるのか、厳しい状況にある。世界では、何百万人もの難民が、途方もなく困窮している。その86%が、施設が不十分なことが多い中・低所得国で生活し、高所得国には、最小限しか受け入れられず、支援も最低という、まったく不公平な状況にある。

9月には150カ国以上の首脳が国連に集まり、難民問題に対処する新たな世界的枠組みの礎を据えるための協議を持つ。危機を打開する突破口となる絶好の機会である。ところが、自国のエゴのために難民の権利を犠牲にしようとする数カ国の存在で、協議がとん挫し歴史に大きな禍根を残す可能性が浮かび上がっている。

しかし、時間はまだある。世界の何百万人もの支援者とともに、各国指導者に対し、アムネスティは失敗を許さないと、伝えよう。

2015年11月以来、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は、膨れ上がる難民や移民に対する新たな方策の導入を訴えてきた。この5月には、国連総会への報告で、難民や移民に関する国際的合意を得たグローバルコンパクトなどいくつかの提案を行った。最終案は来週締結され、その後9月19日の国連総会で採択される予定だ。これは、初の難民と移民に関する首脳会議であり、「強力な国際的取り組みの青写真を策定するための歴史的な機会」といわれている。

新しい対応策の礎は、世界各国による責任分担である。どの国も公平な分担以上を引き受ける必要がないし、いずれの国も、紛争や迫害で母国を離れざるを得なかった人びとの人権を守る上で共通の法的義務を受け入れなければならない。

アムネスティは、国連加盟国に対し、国のGDP、失業率などの客観的指標に基づく公平な難民受け入れ責任を果すために、提案をしている。

しかしながら、各国は理由を並べ立てて、責任分担を拒否しようとしているようだ。「責任分担」という言葉さえ危うい。数カ国が、難民に関するグローバルコンパクトに対して、移住に関する協定とまったく同等の扱いを要求しているため、2年間先送りされる可能性がある。

旧態依然はもう終わりである。高所得国が、難民受け入れや支援を満足に行っていない現状だからこそ、責任分担を要にするグローバルコンパクトが時宜を得ていると言える。経済力と影響力のある国は、言い訳をせず、その役割をしっかり果たさなければならない。

国際社会は、難民問題への対応にこれまでは協力をしてきた。国連も近年、各種の世界的な問題に対し解決策を合意してきた。責任分担が機能すれば、数百万人の難民に、戦争や迫害から安全かつ合法的な逃げ場所を提供し、困窮、溺死、病死などから救うことができる。

背景情報

9月に合意をめざす政治宣言と、2018年に引き継がれる「難民の責任分担に関するグローバルコンパクト」は、1951年に法制化された難民条約とそれに付随する1967年の覚書にもとづく現行の保護体制に代わるものにはならない。むしろ、それらの規定の上に、長期的な難民流入と時折起こる急増に対処できる持続的制度を作り上げるのが狙いだ。

アムネスティ国際ニュース
2016年7月25日