ユニリーバ、ネスレ、P&Gなど世界的大手が人権侵害に加担

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2016年12月 2日
[国際事務局発表ニュース]
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トピック:企業の社会的責任

© Amnesty International / WatchDoc
© Amnesty International / WatchDoc

世界的な有名ブランドの食品や化粧品などの生活必需品には、パーム油が使われている。しかしこのパーム油は、インドネシアの危険な環境で、わずか8歳の児童の労働によって作られているなど、人権侵害というショッキングな事実で「汚染」されている油なのだ。

アムネスティは、インドネシアのパーム油生産における違法労働の実態を調べ、それを世界的に知られる企業が支えている実態を明らかにした。調査したのはパーム油生産で世界最大手のウィルマー・インターナショナルが経営するアブラヤシ農園で、そこで作られるパーム油が、次の9社に供給されていることがわかった。その9社とは、AFAMSA、ADM、コルゲート・パーモリーブ、エバランス、ケロッグ、ネスレ、プロクター & ギャンブル、レキットベンキーザ、ユニリーバだ。

これら国際的な企業は、サプライチェーン(原材料などの調達過程)で起きている労働者の搾取問題に対して見て見ぬ振りをしている。消費者には、サプライチェーンで労働搾取はないといいしながら、実は恐るべき人権侵害が行われ、それによって利益を得ているのだ。スーパーで、環境保全や社会倫理に配慮した商品を購入し、倫理的に正しい製品を選択していると信じている消費者にとって、これは衝撃的な事実だ。

コルゲートやネスレ、ユニリーバといった大企業は、消費者に「環境保全や社会倫理に配慮したパーム油」を使用していると宣言しているが、実態はまったくそうではなかった。児童労働や強制労働によって生産されているパーム油は、「環境保全や社会倫理に配慮している」とは論外だ。ウィルマー社の農場で見られる人権侵害は、一部の例外ではなく組織的で確信的に行われているのだ。

2015年の収益を合算すると$3,250億ドル以上という9社が、劣悪な環境の農場で、わずかな賃金で働かされている人々に対して何の手も打たないのは、おかしい。

マグナムアイスクリーム、コルゲート歯磨き、ダブの化粧品、クノールスープ、キットカット、パンテーンシャンプー、アリエール、ポットヌードルといった人気商品に、インドネシアのウィルマーの農場で生産されたパーム油が使用されている。アムネスティは、こういった事実を消費者に伝えるよう、企業に勧告するキャンペーンを行う予定だ。

サプライチェーンにはびこる人権侵害

アムネスティは、インドネシア・カリマンタンとスマトラのウィルマー社の子会社2社と取引業者3社で働く120人に聞き取り調査を行った。その結果、次のような広範な人権侵害が明らかになった。

  • 女性労働者は、最低賃金以下で長時間労働を強いられる。不満を言うと「賃金を下げるぞ」と脅される。ひどい場合は、日給$2.5で働かされ、年金や健康保険もない。
  • 最少年齢8歳の児童らが危険な重労働をさせられ、時には農場で働く両親を助けるために、学校をやめて働いている。
  • パラクアットと呼ばれる非常に毒性の強い除草剤が、EUやウィルマー社が禁止しているにも関わらず使用され、労働者は深刻な中毒症状を発症している。
  • 2015年8月から10月に起きた山火事の煙で、呼吸器に重大な障害を引き起こす危険があったにも関わらず、十分な装備もつけずに戸外で働かされた。
  • 到底無理な目標を達成するために長時間労働を課せられ、20メートルの高さの木からヤシの実を、手動式の重い道具で切り取るなど、肉体的な負担が大きい作業もある。その結果、深刻な肉体的苦痛を強いられる。さらに、地面に落ちたヤシの実を拾っていなかったり、熟してないヤシの実を拾うなどすると、様々なペナルティが課せられる。

ウィルマー社はこうした労働問題を認識してきた。こうした人権侵害にも関わらず、アムネスティが調査したインドネシアのアブラヤシ生産業者5社のうち3社は、「パーム油のための円卓会議」から「環境保全と社会に貢献するパーム油の生産業者」として指定されている。「パーム油のための円卓会議」は、2004年の環境問題を受けて、パーム油業界浄化のために作られた組織だ。

これらの企業が、監視を避けるために円卓会議を隠れ蓑として利用していることは明白だ。これらの企業は厳しい企業方針を文面ではうたっているが、実際にはウィルマー社がその原材料のサプライチェーンで行われている人権侵害を指摘することはない。

持続可能性のうたい文句に疑問符

ウィルマー社が公表する情報をもとに、アムネスティは同社の原材料を使用している食品・日用品企業9社を特定した。アムネスティの問い合わせに対し7社が、ウィルマー社がインドネシアで製造するパーム油を購入していることを認めた。しかし、具体的にどの商品にパーム油が使用されているかを明らかにしたのは、ケロッグ社とレキットベンキーザ社のみだった。

9社のうち1社を除く8社が「パーム油のための円卓会議」の会員であり、自社サイトや商品に「環境保全と社会に貢献するパーム油を使用」と明記している。アムネスティがコンタクトした企業のうち、労働者の人権侵害が起きている事実を否定した企業はない一方で、ウィルマー社の労働問題に何らかの対応をした事例を提供した企業もなかった。

企業は、製品に何が使われているか、もっと透明性を高めるべきである。スーパーの棚に陳列された商品の原料がどこから来ているのかを開示すべきであり、そうしない限り、企業は何らかの形で労働者の人権侵害に加担し、そこから利益を得ていることになる。これらの企業は、「倫理的に正しい製品を購入している」と信じて、スーパーのレジに並ぶ消費者たちを裏切っているのだ。

アムネスティ国際ニュース
2016年11月30日