武器貿易条約会議 数々の条約違反を見過ごすな

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2018年8月24日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:武器貿易条約

世界各地で紛争が絶えず、多数の市民が犠牲になる事態が続いているが、紛争に油を注いでいるのが、武器を提供する国々の存在である。武器貿易条約に加盟しながら人権侵害の行われている国に武器を輸出し、条約違反を繰り返している。

武器貿易条約第4回締約国会議が、8月20日から24日まで東京で開かれている。

パレスチナでは、イスラエル軍による発砲で多数の市民が殺され、イエメンでは、サウジアラビアが率いる連合軍による戦闘でも、多数の市民が悲惨な状況に置かれてきた。イスラエルにしてもサウジアラビアなどにしても、武器条約に加盟あるいは署名している国から武器の提供を受けてきた。

2014年に発効した武器貿易条約は、武器が戦争犯罪に使用されたり、重大な人権侵害を引き起こしかねない国への武器輸出を明確に禁止している。この条約が成立した背景には、アムネスティをはじめたとしたNGOの長年にわたる懸命な取り組みがあった。条約は、武器や弾薬、関連品が、戦争犯罪に使用されることが明らかな場合あるいは重大な人権侵害を引き起こすおそれがある場合、国家間の武器移転を禁じている。

世界の紛争に油を注ぐ武器輸出

イエメンでは、サウジアラビア主導の連合軍による激しい戦闘が続き、市民は悲惨な状況に置かれている。戦争犯罪とみられる行為が繰り返されているにもかかわらず、英仏米は、サウジアラビアと連合国に武器を提供し、条約違反を犯している。

しかし、連合国に自国の武器が渡れば、自国が戦争犯罪に加担することになるという認識は、各国に広がり、この数年、武器禁輸に向けた取り組みがあった。ベルギーなど数カ国の活動家らも、連合国への武器移転の停止を訴え始めた。そんな中、連合国への武器輸出を停止する国も出てきた。

今年はじめ、パレスチナのガザで抗議する人たちがイスラエル軍の発砲を受け、少なくとも140人が死亡し、数千人が負傷した。イスラエルに武器を提供するのは、米国とEUの国々だ。

このように明らかな条約違反があるにもかかわらず、過去の武器貿易条約会議では、この問題の協議は避けられてきた。

また、アムネスティは、加盟国が提出する報告書が透明性に欠けるという問題も指摘してきた。2017年度の武器輸出入報告を期限までに提出した国は、半数にも届かず、2カ国は報告を機密扱いとし、数カ国は、国や経済活動の安全上に問題があるとして割愛された情報もあった。

条約には、武器輸出による紛争地での死者を減らし、輸出内容の透明性を高める狙いがあったが、多数の国が国内利益を優先するため、条約本来の目的は実現していない。

条約には、無数の人命を救う力があるが、この力は、あくまで各国が義務を果たした場合のみ発揮される。

条約違反によって悲劇が起きているのは、パレスチナやイエメンだけでない。

カメルーンでは兵士による超法規的な市民の処刑が行われてきたが、処刑に使用したライフルの入手経路をたどると、セルビアのメーカーにたどり着く。また、同国の分離主義者が激しい攻撃を加えた時に手にしていたのもセルビア制のライフルである。国連の情報や武器貿易条約年次報告によると、セルビアは過去10年、小型武器をカメルーンに大量に輸出してきた。アムネスティは、セルビアおよび各国に、今後の武器輸出の停止を求めている。

ニカラグアでも、この4月の抗議活動の鎮圧の際、過剰な武器の使用や超法規的処刑があった。これまでに300人以上が命を落としている。国連によると、過去4年間にニカラグアが武器を輸入してきたのは、米国を筆頭に、ブラジル、メキシコと続く。

フィリピンでは、ドゥテルテ大統領が麻薬掃討作戦を続け、数千人の市民が殺害された。警察が殺害に使用してきた拳銃などの小型武器は イスラエル、ブルガリア、南アフリカ、インド、韓国、中国、ロシアなどから輸入されている。

アムネスティ国際ニュース
2018年8月20日