2018年 抑圧と差別 闘う女性たち

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2018年12月20日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:女性の権利

2018年は、世界中で女性たちが、人権擁護運動の最前線に立った年だった。

「タフガイ(屈強な男)」を自称する権力者たちが、女性、同性愛者、外国人らを差別する政策を押し進め、かつて人びとが勝ち取った自由と権利を、再び危機に陥れた。

彼らは、人権法の根幹をなす平等の大原則を突き崩そうとした。タフガイらが打ち出す政策は、社会的弱者を悪者扱いし、排除しようとするいじめでしかなかった。こうした彼らにどう立ち向かうかをとりわけ力強く示したのが、女性だった。

アムネスティは、世界の人権状況を振り返った報告書「人権は今」を公表、世界をアフリカ、南北アメリカ、中央アジア、中東、北アフリカ、南アフリカ、東南アジアの7つの地域に分け、それぞれの人権状況を振り返った。今年は、世界人権宣言が誕生して70年を迎えた年でもあった。

2018年:闘う女性たち

2018年は、女性たちの運動が勢いを増した年だった。女性の権利運動が定着する一方で、人権関連でニュースをにぎわすのは、相変わらず、女性運動だった。アルゼンチンでの暴力を糾弾する運動「Ni Una Menos(これ以上女性を犠牲にするな)」のように、女性が主導する運動が、かつてない規模で広がった。

インドと南アフリカでは、多発する性的暴力に抗議して、数千人が街に繰り出した。サウジアラビアやイランでは、女性たちが車の運転禁止やヒジャブの強制に反対する行動に出て、逮捕された。アルゼンチン、アイルランド、ポーランドでは、デモ参加者たちが、女性の権利を奪う妊娠中絶法の廃止を求めた。米国、欧州、日本では、数百万人の女性が、#MeTooが引き金となったウィメンズマーチに参加し、女性に対する差別や蔑視に抗議した。

女性たちをここまで激しく突き動かすものは何なのか。この点を確認せずして、今年の女性運動を正しく理解することはできない。

為政者は、女性運動は適当に支持して、後は放っておけばいいという姿勢だったため、女性の権利は常に、他の権利よりも低く見られてきた。

さらに、権力者の多くが、女性を見下し、その権利を踏みにじる発言をしてきた。その言い分は、家族の利益を優先するという伝統的価値観を守るためだということだが、単に、女性の平等を否定しているだけだった。

とりわけ、性や生殖をめぐり女性を愚弄する施策や法制度が増えた。例えば、ポーランドとグアテマラでは、国の議員たちがより厳しい中絶法を求めた。米国では、家族計画を支援する病院への補助金削減で、数百万人の女性の健康が危険にさらされた。

女性たちは、社会の不正義を訴えるために自らの身体を投げ打ち、自由を犠牲にした。パレスチナのアヘド・タミーミさんは、同胞のために声を上げて投獄され、サウジアラビアでも女性3人が逮捕された。ブラジルでは、女性やLGBTI(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス)の問題に取り組んでいたマリエール・フランコさんが、街中で射殺された。

2019年:女性の権利の潮目

来年は、女子差別撤廃条約が40周年を迎える。ほとんどの国が加盟するが、その背景には、女性差別の排除と女性の自由の保障をうたう条項を拒否することが可能だからということもあった。アムネスティは、条約を批准するだけではなく、女性を支援し、その権利を守る法制度と積極的な取り組みを求めている。

女性の賃金は、世界的に見て男性をはるかに下回り、雇用は不安定で、セクハラも絶えず、監督機関への申し立てもできない。なぜこんな事態になるのか、よく考察する必要がある。もし、世の中が逆転し、男性が同じ目にあったとするならば、これほどの不平等を受け入れられるだろうか。

アムネスティは、女性の権利拡大に向け、さらなる取り組みができるし、やるべきだと考える。2019年は、これまで以上に女性運動と連帯し、あらゆる面でその声を拡大し、女性たちを含むすべての人びとの権利が認められるよう、力強い取り組みをしていかなければならない。

アムネスティ国際ニュース
2018年12月7日