見直し迫られる難民政策 

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2019年1月24日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:難民と移民

地中海経由で欧州入国をめざす難民や移民が、入国できずに洋上に留められ、支援も受けられない事態が続いている。欧州各国は、この事態を引き起こしている難民制度を早急に変えなければならない。

背景には、欧州の国境警備をリビアに委託したことや庇護希望者に対する責任を各国で公平に負担してこなかったことがある。

子どもを含む庇護希望者らが、船上で何週間も途方にくれる事態が二度と起きないようにする必要がある。

また、たとえ庇護希望者が入国できたとしても新たな問題に直面し、悲嘆にくれている。難民認定手続きの不備や複雑さなどで、手続きが進まないのだ。

庇護希望者が最初に到着する国は、難民審査、申請者への住まいの提供、審査後の対応などを強いられるため、深刻な問題となっていた。

また、欧州各国は、庇護希望者を締め出すためにリビア沿岸警備隊の増強を画策するなどして、難民の地中海横断やNGOによる捜索・救助活動を妨害してきた。

しかし現実には、リビアには警備隊救助を出す余裕がなく、また、国際法は、拷問・強かん・ゆすりなどが待ち受けるリビアのような国へ、救助された人を送還することを禁じている。

自国の港への上陸を阻止するため、欧州の中には、難民救助に送り出した海軍の船舶を引き上げたり、パトロールを減らしたりする国もある。国の穴埋めとして難民を救助するNGOは、頻繁に入港を拒否される。特にイタリアとマルタにおいてだ。NGOに対して「捜査」と称して取り調べたり、複雑な役所手続きを課したりして、救命活動ができなくなることもある。

最近の事例では、スペインの海上保安機関が行政命令を出して、NGOの救命活動を阻止した。同機関はその命令の中で、欧州難民制度が破綻していることを認めた。要は、地中海周辺の国が、国際海事法や海事規格に違反するということだ。そして、その失敗のつけを救助者や庇護希望者が払わせられているのである。

現行制度の改革・修正提案は、複数国の反対で却下された。しかし、5月の欧州議会選挙を前に、その提案を復活させる機会はある。

欧州各国は、自国を守るためにと、これ以上、庇護希望者に関する議論を捻じ曲げ、彼らに背を向け続けていいわけがない。国際法に沿った難民受け入れ政策、および公正な責任分担を盛り込んだ制度を早急に構築する必要がある。

背景

1月14日、スペイン当局は、地中海中部に向かおうとするNGOプロアクティバ・オープン・アームズの出港を禁止した。

また1月中旬、「シーウオッチ3」と「シーアイ」の救助船上に19日間、留められていた庇護希望者49人がようやく、マルタへの上陸を許可された。しかし、ダブリン規約(EU域内で庇護を希望する者に対し、申請を優先的に審査する国を決定するための規則)が不公平であることが、迅速な上陸の妨げとなっている。ダブリン規約のもと、通常、庇護希望者が最初に到着した国が、難民を審査し、審査中は彼らに住居を提供し、審査結果に基づいて自国への受入れまたは出身国への送還を行う。

2017年、欧州議会はダブリン規約を変更し、到着国のみならず、EU加盟国全体で応分に分担することを提案した。この提案に対して、欧州理事会は、自国の負担を嫌う国の反対で合意には至らなかった。

アムネスティ国際ニュース
2019年1月18日