事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して、雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)に関する意見

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. その他
  4. 事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して、雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)に関する意見
2019年12月25日
[その他]
国・地域:
トピック:

厚生労働省雇用環境・均等局雇用機会均等課 御中

事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して
雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)に関する意見

この度発表された「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)」において、性的指向・性自認に関するハラスメントやアウティングについても、パワーハラスメント対策の対象として位置付けられていることを歓迎いたします。しかし、この指針案は、性的指向・性自認による差別を防止するには不十分であり、このままでは職場における性的指向・性自認による差別を撲滅できないという懸念があります。アムネスティ・インターナショナル日本の意見として、指針案における以下の3点について懸念を表明するとともに、指針案の各該当箇所の変更を要請いたします。

  1. パワーハラスメントの内容に性的指向・性自認を理由とした差別が明示されていない

    パワハラ関連法の国会付帯決議は、「職場におけるあらゆる差別をなくすため、性的指向・性自認に関するハラスメント及び性的指向・性自認の望まぬ暴露であるいわゆるアウティングも雇用管理上の措置の対象になり得る」とし、性的指向・性自認を理由とした差別もなくすよう、企業は求められています。

    しかし、今回発表された指針案では、性的指向・性自認に関するハラスメントやアウティングは「職場におけるパワーハラスメントの内容」としては明示されておらず、パワハラとなりうる類型の一つで例示されているにすぎません。

    <指針案の3ページ目>
    「2 職場におけるパワーハラスメントの内容」(4)「優越的な関係を背景とした」言動の例示に、「性的指向・性自認などの属性に関する否定的言動」が明記されるべきです。


  2. カミングアウトしていないLGBTIの人へのハラスメント対策が不十分

    指針案には、パワハラとなる精神的な攻撃に該当する例として、「人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む」と記載されています。「相手の」という記載のままでは、カミングアウトしていないLGBTIの人たちやその家族などに対する性的指向・性自認に関するハラスメントが、法律上のパワハラとされない可能性があります。

    例えば、飲み会などの場でよくある、「ホモっぽくて気持ち悪い」というような差別的な言動や嘲笑は、その場にLGBTIの人たちがいないと認識されている場合には、パワハラには該当しないという解釈になってしまいかねません。職場で差別や偏見を受ける懸念から、カミングアウトできないLGBTIの人たちが極めて多く、LGBTIの人たちがもっとも直面しやすい差別がこのパターンであると言われており、深刻な懸念が残ります。

    <指針案の4ページ目>
    6つの類型のロ(イ)①「人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む」という記載から、「相手の」を削除するべきです。


  3. 就活生、フリーランス、インターンなどに対するハラスメント対策が不明瞭

    指針案では、企業のパワハラ防止の対象になるのは基本的には雇用関係にある労働者にとどまっています。企業が関わりをもつそれ以外の人たち、例えば、就活生、フリーランス、インターンなどへの言動については、企業が必要な注意を払うよう配慮が求められているに過ぎません。しかも、その配慮には性的指向・性自認に関するハラスメントやアウティング対策が含まれているのか不明瞭であり、今後の運用に懸念が残ります。

    <指針案の12~13ページ>
    6・7の指針に性的指向・性自認に関するハラスメントや、性的指向・性自認の望まぬ暴露となる「アウティング」が含まれることを明示し周知すべきです。

以上

2019年12月20日
公益社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本