国連:気候変動難民に画期的裁定

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. 国際事務局発表ニュース
  4. 国連:気候変動難民に画期的裁定
2020年1月25日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:気候変動と人権

© Mitja Kobal
© Mitja Kobal

国連自由権規約委員会は1月初旬、気候変動という前例のない事由での庇護希望者の取り扱いについて、各国は、庇護希望者の送還にあたり、気候変動危機による人権侵害を考慮に入れなければならない、と裁定した。

海抜わずか1、2メートルの島国キリバスに住んでいたイオアン・テイティオタさんは、「気候変動による海面上昇で、土地の奪い合いや飲める水の減少などの問題に直面している」として、家族でニュージーランドへ移住した。2010年に在留期限が切れ、「気候難民」として難民申請をしたが認められず、2015年にキリバスに送還された。その後、ニュージーランドで訴訟を起こし、最高裁判所まで争った末、敗訴した。

2016年2月、テイティオタさんは、キリバスに送還することで、ニュージーランド政府は市民的および政治的権利に関する国際規約(自由権規約)が定める生きる権利を侵害したとして、国連自由権規約委員会に提訴していた。

自由権規約委員会は、「差し迫った生命の危険に直面しているわけではない」としてテイティオタさんの送還の違法性を認めない一方で、「気候変動は、生きる権利への深刻な脅威であり、移民局や裁判所は、送還への異議申し立てに際してこの点を考慮しなければならない」とした。

この判断は、個人の権利が気候変動の影響で侵害されていることが証明できれば、難民として認められる可能性があることを示唆している。

判断に込められたメッセージは明確である。太平洋の島国が海に沈む前に、生命の権利を守る人権義務が果たされなければならない、というものだ。

すべての国は、立ち退きなど気候変動がもたらす重大な問題から市民を保護する義務がある。そのためには、気温上昇を産業革命以前に比べて1.5度以内に抑える緊急対策が不可欠である。

海抜の低い島々の人びとは現在、気候変動の影響で、生活基盤の土地や水などの危機に面している。今後、気候変動の影響で移住を余儀なくされるおそれがある人たちにとって、太平洋の島々は、炭鉱のカナリアのようなものである。

世界の国々は、温暖化が引き起こすこの危機的な現実に向き合わなければならない。

アムネスティ国際ニュース
2020年1月20日