- 2020年3月18日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:スロベニア
- トピック:先住民族/少数民族
(C) Amnesty International
欧州人権裁判所は3月10日、スロベニア政府が、ロマの2家族に対する水やトイレなどの提供を怠ってきたことは、人権侵害には当たらないとの判断を示した。2家族は、居住地が非公認だからとの理由で、水の利用が認められないのは不当だとして同裁判所に訴えていた。
アムネスティもこの提訴を支援してきた。 しかし、訴えは退けられ、ロマ社会の貧困と排除の連鎖を断ち切る機運がますます遠のくことになった。
スロベニアのロマ社会の中には、清潔な水や水道施設が近くにないため、長い距離を歩いて川の水を汲みに行かなければならない家庭もある。さらに、その川の水が汚染されていることもある。
スロベニア憲法でも定められている水の権利が、非公認のロマ居住区では、保障されていないのが実情である。
欧州裁判所の判決がどうであれ、水の権利は、スロベニアで最も排除され弱者となっているロマの人びとにも保障されるべきである。
スロベニアのロマの多くは、数十年前、人里離れた土地に許可なく家を建てて暮らしてきたが、これまで居住を公認されることはなかった。
ロマに対する差別意識が広く根付いているため、ロマの人びとは、別の場所に移って家を借りたり買ったりすることもできない。
法律上は、居住する土地の所有権を持ち、さらに建築許可を受けているときに限り、水道などの行政が提供するサービスを利用することができる。この規則は、はなから多くのロマを排除している。
原告側は、国が生活環境の不平等解消に向けた対策を何も取ってこなかったと訴えていた。
背景情報
スロベニアには、およそ1万から1万2千人のロマの人びとが住む。その多くが、地方の無認可の土地に貧弱な家屋を建て、細々と暮らしており、いつ立ち退きを迫られるかわからない状況にある。
こうした状況は、スロベニア人の平均寿命が77才に対して、ロマが55才という落差を生む主な要因とされている。特に子どもへの影響は大きく、ロマの乳幼児の死亡率は、全体平均に比べ4倍、4才未満なら7倍も高い。
アムネスティは、2000年からロマの人びとと共同で調査し、彼らが被った人権侵害を明らかにしてきた。
アムネスティ国際ニュース
2020年3月10日
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