- 2020年7月 7日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:
- トピック:性的指向と性自認
(C) Amnesty International
新型コロナウイルス危機でLGBTI(レスビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス)の人びとの権利が一層脅かされている中、世界各地で行われる6月末のプライドの祭典は、LGBTIの権利を啓発し、促進させる好機だ。
数カ月に及ぶロックダウン(都市封鎖)で、LGBTIの人びとは、過酷な差別、侮辱、敵意、暴力にさらされるなど差別が固定化され、極めて危険な状況に置かれている。
今年のプライド期間では、世界中のLGBTIの人びと、活動家、支援者たちが、新型コロナのパンデミック(世界的流行)も自分たちの権利の要求を止めることはできないことを示す。
バーチャルで開催されるプライドの祭典は困難な時代における希望の光だ。しかし、その一方で、大勢のLGBTIの人びとは、ロックダウンのために性自認や性的指向に対する敵意や暴力から逃げることができず、恐怖を感じている。
各国政府は、LGBTIの人びとへの実効性ある支援を早急に提供する必要がある。例えば、医療、就業支援、社会保障などを受ける際の障害の排除や、暴力や嫌がらせを受けずに安心して暮らせるシェルターの提供だ。
暴力と排除
国によっては、パンデミックを口実に、LGBTIの人びとを弾圧し、権利を侵害し、否定的な言動にさらすような対応を取っている。
ウガンダでは、LGBTIの人たちが生活するシェルターにいた23才の若者が、感染を広めるなどの過失行為があったなどとして逮捕された。フィリピンでは、LGBTIの若者3人が、夜間外出禁止令を破った罰だとして警官に屈辱的な行為をさせられた。この時の様子はビデオに撮られ、ソーシャルメディアに投稿された。
LGBTIの人びとは長年、医療、就業、住居などさまざまな面で差別を受け、LGBTIを認めない法律や国家による嫌がらせ、脅し、逮捕、殺害の対象となってきた。新型コロナ危機と各国の対応が、LGBTIへの差別に拍車をかけた。
インドでは、多くのトランスジェンダーが日々のやりくりに精一杯という状況にあるにもかかわらず、緊急経済対策国の対象から除外された。
サラ・ヘガジさんの死
エジプトからカナダに逃れていたヘガジさんの死は、国家による差別が引き起こした最悪の事態であり、世界のLGBTIの人びとに大きな衝撃を与えた。
エジプトでLGBTIの権利のために活動していたヘガジさんは、コンサートでレインボーフラッグを掲げたために逮捕され拷問を受け、カナダへの亡命を余儀なくされた。カナダでは、亡命生活での深い孤独や自分を追い詰めたエジプト当局者が何の罪にも問われなかったことへの怒りと絶望を書き綴った。
亡命から1年半後、ヘガジさんは自ら命を絶った。
ヘガジさんは、LGBTIの希望と自由と愛の星だった。活動家や支援者らは、その死を悼みつつ、世界で同様の不正義、差別、暴力を受けている人びとと連帯し、また世界中の活動家や支援者は、ヘガジさんの遺志を受け継ぎ、差別のない世界の実現に向けて闘っていく。
しかし、政府による主体的な取り組みがなければ、差別のない世界は実現しない。
各国政府には、LGBTIの人びとを尊重し保護する義務がある。これまでLGBTIの人びとが取り組んできた活動や平等の権利を保護・尊重し、政策・法律に反映させ、彼らに対する差別を防止していかなければならない。
LGBTIの人びとに対する排除や差別は、新型コロナのパンデミックであらわになった。社会から疎外されている人びとが無事でいられるよう、法律・政策の全面的見直しが求められている今、LGBTIの人びとへの排除や差別の横行を許してはならない。
アムネスティは、世界の国々に以下のことを提言する。
- LGBTIの人びとが医療機関を利用し、希望すれば性別適合手術やメンタルヘルス面での支援を受けられるようにすること。
- ロックダウンで逃げ場を失ったLGBTIの人びとに対する保護を強化すること。家庭内暴力に対する法的、社会的支援を受けられるように法整備することもその一つだ。
- 雇用や公共サービス利用の機会均等を保障し、各種対策の対象から除外されることがないようにすること。
- 新型コロナ対策名目で、LGBTIの人びとを犯罪者扱いすることをやめること。
- 「LGBTIの人びとへの中傷は許されない」というメッセージを社会に発信すること。
アムネスティ国際ニュース
2020年6月26日