ツイッター:女性の中傷被害増加 不十分な保護策

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2020年9月30日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:表現の自由

© Bakarmax
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ツイッター社は、インターネット上の暴力や虐待から女性を守る手立てを講じることを度々約束していながら、十分な対応を取ってこなかった。

アムネスティは2018年、ツイッターで女性たちが誹謗中傷を受け、深刻な被害を被っている問題を調査報告『有害なツイッター』をまとめて公表した。この報告の中で、ツイッター社に対し、ツイッターを女性が安心して意見が言える場にするために同社が取り組むべき諸策を提言した。

ツイッター社は、この提言にどれだけ対応してきたのか。アムネスティは今回、ツイッター社の対応状況を10項目に分けて評価した。女性に対するオンライン上の嫌がらせに対処する上でとりわけカギとなるはずの項目だ。

10項目のうち完全に実施されたのは、たった1項目だけだった(被害申し立てのプロセス改善)。他の項目についても進展はみられるものの、まったく手をつけていないものもあり、対策を一層強化する必要がある。

 

10項目とその評価についてはこちら(英文)

 

2018年の報告後も、アムネスティは、アルゼンチン、インド、英国、米国などで女性がツイッター上で受ける悪質な嫌がらせや誹謗被害にさらされている実態を明らかにしてきた。女性たちもツイッターで受けた嫌がらせに声をあげ、ツイッター社の対応不足を批判してきた。

執拗な嫌がらせや暴言は、平等に、自由に、恐れずに自分自身を表現する権利を損なう。オンライン上の虐待の影響を大きく受けているのが、民族的少数派の女性、宗教的少数派の女性、社会的に弱い立場にある女性、レズビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダーの女性、ノンバイナリー(自身の性自認・性表現に「男性」「女性」といった枠組みをあてはめない人)、障がいのある女性などだ。こうした複数の差別要因が重なり、被害が大きくなる。

インドの著述家で活動家のニーナ・カンダサミさんは語る。

「複数のカーストの血を持つタミル人で、差別的カースト制度に反対の声を上げる女性は、ツイッター上では爆発を生む混合物のようなものです。私は、人種差別主義や女性嫌悪にもとづく強かんの脅しも含めて嵐のような誹謗中傷を受けています。ツイッター社は、なかなか事態の成り行きに追いつかないようで、女性に対するさまざまな嫌がらせに対応しきれていません。ツイッターは強力な表現の場ですが、女性たちにとってクリーンで安全な場にする努力がもっと必要です」

意味のあるデータが十分提供されていないために、問題の全容を把握することすら困難な状況だ。たとえば、利用者からの被害報告の詳細な国レベルの内訳は提供されておらず、性別や人種に基づく虐待など、特定の種類の被害を訴えた利用者数もわからない。国や言語ごとに不適切なコンテンツを監視するコンテンツ・モデレーター(監視業務に携わる人)の数などの情報開示にも消極的だ。

また、女性への虐待を特定する作業を自動化しているが、プログラムの内容や実施状況についての透明性を高める必要がある。新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行する中、誤情報の排除に使用するアルゴリズムは詳細を開示したが、中傷ツイートに対するアルゴリズムについては、同レベルの透明性を確保していない。

一方、改善策が取られた分野もいくつかある。

利用者からの被害申立てへの対応では、対応手順や解決方法などについて利用者への説明機会を増やした。利用者が、プライバシーやセキュリティーに対する意識を高め、虐待が引き起こす危害の実情を学ぶという課題に関しては、現在取り組み中だ。

ツイッター社は、差別や暴力を受けずに暮らす権利や表現と意見表明の自由の権利をはじめとする人権を尊重する責任がある。同社には、何百万という女性利用者に、「ツイッターは本当に変わった」と思わせるような変化を起こす力がある。

ジャック・ドーシーCEOは、言行を一致させ、女性がツィッターを安心して利用できるプラットフォームにするよう取り組んでいることを行動で示すべきだ。

ツイッターは女性に対する虐待を拒否する、という姿勢が、誰の目から見ても明らかなほどに変わるまで、アネスティは同社への申し入れを続ける。

ツイッター社の回答

アムネスティの指摘に対して、ツイッター社は、今後も対応が必要であることを認めた。一方で、「人手によるモデレーションとテクノロジーを組み合わせることで、オンライン上の虐待に先手を打てる」とも説明している。国や地域ごとのデータの公表については、「むしろ曲解を招き、問題について誤解を与えるおそれがある」と反論している。

アムネスティは、この懸念が無視できないことは認める。しかし、だからといってデータと情報に対する対応を明らかにしないでいいということにはならない。同社の人権に対する責務とは、誹謗中傷や嫌がらせなどの訴えをどう扱っているかについて、透明性を確保する義務があるということだ。

アムネスティ国際ニュース
2020年9月22日

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