アマゾン 労働者の健康・安全をこれ以上犠牲にするな

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2020年11月30日
[国際事務局発表ニュース]
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(C) DENIS CHARLET/AFP via Getty Images
(C) DENIS CHARLET/AFP via Getty Images

新型コロナウイルス感染症の拡大が始まってから、アマゾンで働く人びとは、健康と安全面で多大なリスクにさらされてきた上、労働環境の改善を求めて団体交渉をしようとすると、会社から圧力を受けてきた。

ブラックフライデー(11月27日)やクリスマスという年末の繁忙期を前に、アムネスティは、フランス、ポーランド、英国、米国のアマゾンの労働者が健康や安全面で会社から受けている対応に関する調査を実施した。その結果、米国では労働者が監視され、英国では訴訟をちらつかされたり、組合活動を阻まれたりし、ポーランドとフランスでは、労働者の健康と安全の両面で基本的対策が取られていないことなどが明らかになった。

新型コロナの流行が続く中、商品の迅速な配送のために労働者の健康と安全が危険にさらされてきた。その一方で、会社は記録的な利益を上げた。 にもかかわらず、アマゾンは、労働者が組合に加入したり、組合を結成したりする動きをあからさまに敵視し妨害してきた。世界屈指の巨大企業となった会社が取るべき対応ではない。

アムネスティは、アマゾンに対して労働者の人権を尊重し、国際労働基準に従い労働者の組合参加や結成の権利を遵守するよう強く求める。 また、同社は、労働者のプライバシーの権利の侵害をやめなければならない。

生産性目標の再開

アマゾンは今年3月、それまで労働者に厳格に課していた生産性目標の設定をやめた。 感染防止にそぐわないという声が上がったからだ。しかし、年末の繁忙期を控えた10月、米国をはじめとする世界中の労働者に対し、生産性目標を再導入するという通達を出した。 英国の労働者は、「10月21日から今後数週間、顧客に荷物を確実に届けるため、生産性目標の設定・測定・評価を再開する」との通達をメールで受けたという。 

脅しや処罰を受ける組合員

国際人権法・基準には、組合の結成や組合への参加、安全な環境での労働、プライバシーの尊重などの労働者の権利が定められている。

しかしアマゾンは、労働者に対して組合に関する権利を尊重すると言いながら、徹底して組合活動をつぶす対応を取ってきた。過去2年の年次報告書の中で組合を危険分子とみなし、さらに、管理職向け研修ビデオでは、組合活動を敵視し、活動の兆候を見逃してはならないと指導した。

3月と4月、ウイルス感染が拡大する中、米国のアマゾンで健康で安全な労働環境を求めて声を上げた労働者が解雇され、大騒ぎになった。

英国の一般労働組合GMBユニオンの職員が、組合への勧誘目的でアマゾンの建物に入ろうとするたびに、会社側から「不法侵入には法的措置を取る」と脅された。 2018年と2019年に同ユニオン職員に送られた法的通知からは、アマゾンが組合員労働者のソーシャルメディア(SNS)のプロフィールに目を通していることが明らかになっている。組合員がデモを計画したことを示すSNSのスクリーンショットが添付されていたからだ。ポーランドでは、一般労組ワーカーズ・イニシアティブによると、同組合員が、就業時間中に組合員を募集して戒告されるなどの懲戒処分を受けた。

労働者を監視

もう一つの懸念は、労働者の監視だ。9月、オンラインメディアのバイス・ニュースの報道で、アマゾンが労働組合の脅威などを調査する情報アナリストを募集する求人広告を出したことが明らかになった。アマゾンは広告を削除し、掲載間違いだったと釈明した。

同じ月、バイス・ニュースは、アマゾンから配達業務を委託されたドライバーのストライキや抗議行動の動きを把握するなどの目的で、ドライバー個人のフェイスブックを密かに閲覧し、書き込みを分析していたことを示す内部文書を公開した。

アムネスティは9月21日、アマゾンが労働者の監視や個人情報の収集をしていたという指摘に対する同社の見解を求めた。10月12日に届いた同社の回答文には、指摘した事実には触れることなく、「日常的に仲間との会話を特に大切にしている。労働者とのコミュニケーションは、当社が強みとする企業文化だ」とあった。

漏洩後10月に公表された社内資料からは、米国のアマゾンでは、労働者のデモやスト参加の動きを把握する目的で密かにSNSの書き込みを調べるなど、労働者を監視する技術が利用されていることが伺えた。10月、インターネットメディアrecodeが報じたアマゾンの社内メモには、組合の動きを監視する最新技術の開発に数十万ドルを投じる計画が記されていた。

こうした監視は、労働者の表現と団結の権利の侵害であり、まったく容認できるものではない。

健康・安全対策の話し合いを拒否

日々、数十万人の新規感染者が出る中、労働者の健康と安全は喫緊の課題だ。

ポーランドの一般労組ワーカーズ・イニシアティブによると、今年3月、アマゾンに健康や安全に関するテーマで会合を持つことを提案したが、拒否されたという。フランスでは、一般労組「連帯」がアマゾンに対し、一時的な業務停止と健康・安全対策の強化を求める訴訟を起こした。

複数の組合が、危険手当に対する懸念を指摘している。欧州や北米など一部のアマゾンの労働者に対して危険手当が増額されたが、感染拡大最中の5月末には、ほとんどの国のアマゾンで手当ての支給が停止になった。

世界で感染拡大が続く中、アマゾンが巨額の利益を上げる一方で、労働者は権利獲得のために会社と闘ってきた。労働者にとって長く厳しかった一年が終わりに近づく中、ブラックフライデーとクリスマス商戦が始まる。

アマゾンは労働者をどう扱うか、その対応が注視されている。アムネスティは、アマゾンに対し労働者の権利を尊重する義務を十全に果たすよう求める。

アムネスティ国際ニュース
2020年11月27日

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