エアビーアンドビー 上場に泥を塗るイスラエル入植地での民泊仲介

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2020年12月16日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:国際人権法

(C) Amnesty International
(C) Amnesty International

数10億ドル(1,000億円)規模の調達を目指して10日に新規株式公開を果たした民泊仲介会社エアビーアンドビーは、イスラエルによるパレスチナ被占領地への違法な入植地に建てられた宿泊施設の紹介をやめるべきだ。

イスラエルの入植活動は、パレスチナ人に対する人権侵害の象徴だ。パレスチナ人の土地を奪って作られた入植地にある家屋や施設の宿泊を仲介することは、イスラエルの人権侵害を拡大し、パレスチナの人びとの苦悩を増幅させることにつながる。

同社は2年前、イスラエルの入植地にある施設をウェブサイトの紹介欄から削除すると約束したが、その後判断を翻した。しかし、イスラエルによるパレスチナ人の土地への入植は、国際法では戦争犯罪だ。エアビーアンドビーは、上場を機に襟を正し、パレスチナ人から奪った土地に違法に建てられた家屋や施設の掲載をやめるべきだ。

株式公開における不透明性

国連は今年初め、イスラエルの入植地に関りのある事業を行う企業100社以上を載せたデータベースを公表したが、その中の1社がエアビーアンドビーだった。

しかし、エアビーアンドビーが株式公開に先立ち米国証券取引委員会に提出した有価証券届出書には、入植地を対象とする事業や国連のデータベースに掲載されている事実が、触れられていなかった。また、法律上や世評上のリスクを株主に告知する「リスク要因」欄にも記載されていなかった。

エアビーアンドビーの株式は、投資信託や年金基金の運用先として世界で購入されることが予想されるが、多くの人は、そうとは知らないまま間接的にエアビーアンドビーの株を長期間保有することになる。また、エアビーアンドビーの株式を引き受ける証券会社は、株主向け企業情報に虚偽がないことを確認する責任がある。

エアビーアンドビーの恥ずべき心変わり

エアビーアンドビー、トリップアドバイザー、エクスペディア、ブッキングドットコムの4社は、パレスチナ被占領地の宿泊施設や観光名所を旅行者に紹介し、パレスチナ人への人権侵害を増長している。アムネスティは2019年1月、このことを調査で明らかにした。

その前年、エアビーアンドビーは、東エルサレムを除くヨルダン川西岸地区のイスラエルの入植地をパレスチナとの紛争の舞台とみなし、入植地の物件の紹介をやめると発表していた。「決定基準の一つは、掲載が人的苦痛をもたらしているかどうかだ」と説明した。しかし、2019年4月、度重なる訴訟を受けて、この決定を覆し、「掲載を継続する。ただし、手数料は受け取らない」と釈明した。

同社はその後、この地域での仲介で得た利益を寄付すると言い出した。しかし、仲介行為自体が、被占領地域の観光事業を促進し、パレスチナ人の権利と生活を踏みにじることになることを、同社は認識すべきだ。

入植地拡大の懸念

現在、イスラエルの入植地は拡大しつつあり、今年中には、数千戸の住宅が新たに建設される予定だ。イスラエルが住宅数を拡大する背景には、米国という強力な後ろ盾があるというのがもっぱらの見方だ。

先月、ポンペオ国務長官が、イスラエル入植地のワイナリーを訪問した。同氏は1年前、「米国はイスラエル入植地を国際法違反と考えていない」と語っており、訪問は、その主張を自らの行動で示したものと思われる。

イスラエル軍は、半世紀以上にも渡り、現在の被占領パレスチナ地区を占領している。この間、5万戸以上の家屋が破壊され、何万人ものパレスチナ人が自宅を追われた。一方で、60万人以上のイスラエル人が、パレスチナから奪った土地に開拓された約250の入植地に移住した。多くの入植地には、入植者専用道路が走り、軍が警備についている。

イスラエルが収奪した土地は、過去50年間で約1,000平方キロメートルにもなる。土地を追われたパレスチナ人は、住居、生活、仕事、教育などの権利を著しく損なわれ、パレスチナの経済も活力を失う一方だ。

いかなる企業も、人権侵害の片棒を担いではならない。エアビーアンドビーは、イスラエル入植地とのビジネス関係を断ち切らない限り、評判をひどく落とすことになる。

アムネスティ国際ニュース
2020年12月10日

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