リチウム電池業界の人権問題一掃に大胆な改革を

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2021年2月11日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:企業の社会的責任

(C) Amnesty International y Afrewatch
(C) Amnesty International y Afrewatch

新型コロナウイルス危機からの復興において、各国と産業界がまず取り組むべきは、電池のサプライチェーン(原材料調達から消費までの一連の流れ)で、人権・環境を核に据えることだ。

リチウムイオン電池は、電気自動車やスマートフォンなど数多くの電子機器に搭載されている。気候変動対策の鍵を握るリチウムイオン電池が、人権侵害や環境汚染につながってはならない。

アムネスティは、コンゴ民主共和国の子どもたちが採掘するコバルトが、どのようにして電子機器メーカーや電気自動車メーカーのサプライチェーンに入り込んでいるかを調べた。また、南米では、リチウムを採掘する過程で先住民族の水資源や生態系が脅かされていることがわかった。一方、「環境に優しい」電池への需要が高まる中、リチウムを採掘する鉱山周辺の汚染、海底の破壊、廃棄物の増加が、環境への新たなリスクになっている。

化石燃料依存から抜け出す上で電気自動車のような技術革新は不可欠だが、一方で、電池をめぐる技術革新は、人権や地球のリスク要因になりえる。新型コロナウイルス感染の脅威のなか、産業界は、その構造の再考を迫られている。公正で持続可能な世界の構築への取り組みを強化する上で、好機と言える。

電池を扱う業界は、サプライチェーンの全工程で人権を核に据えた取り組みをしているかどうかを問う必要がある。たとえば、サプライチェーンの透明性の確保、労働災害への補償、先住民との共存、自然破壊の防止などがある。

人と地球に優しい時代へ移行するために、関係各国は、企業が必要とする投資面での支援やエネルギー問題の解決に向けた指導力が求められる。人権への配慮を怠れば、いかなる電池業界も立ち行かなくなると考えるべきだ。だからこそ、各国には、環境を保護する法令の施行、人権侵害の申し立ての調査、人権デューディリジェンス(企業活動が人権に及ぼす負の影響を回避・軽減するために、予防的に調査・把握を行い、防止・是正する継続的なプロセス)が求められる。

変化を起こす

アムネスティは、国と企業が人権侵害や環境破壊を回避するために取り組むべき原則を提言書にまとめ発表した。多数の人権・環境団体が、この提言書に署名した。提言対象は、さまざまな業界と企業であり、環境に優しいエネルギーや電池技術に投資する金融業界も含まれる。

アムネスティは、製造業に対し、技術革新による資源効率の最大化、すべての電池のリサイクル化などを求める。また、事業者や政府に対し、海底を破壊するおそれがある海底採鉱の一時停止を求める。

最近、グリーンピースは、海洋生態系への影響が懸念されているにもかかわらず海底での採掘が進められていることや、一部の企業が深海での鉱物探査を独占していることなどを指摘した。

アムネスティはまた、国や企業に対し鉱山の開発計画や予見される問題について、環境保護活動家や先住民族社会に必要な情報を開示し、彼らが協議に参加できる機会を設けるよう求める。

企業が、人権や環境よりも企業利益を優先する時代が今も続き、世界的な格差や不平等、深刻な気候変動問題など、悪いニュースばかりだ。だが、必ずしもそうなるとは限らない。新たなテクノロジーで、明るい未来を切り拓くようにしなければならない。

アムネスティ国際ニュース
2021年2月4日

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