世界死刑廃止デー 女性死刑囚が受けてきた差別

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2021年10月11日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:死刑廃止

死刑判決を言い渡された女性は多くの場合、夫から虐待や性的暴力を受け続けやむにやまれず夫を殺めて罪に問われ、情状酌量の余地なく死刑を宣告されてきた。

10月10日、世界が死刑廃止デーを迎えるにあたり、アムネスティは、死刑をめぐり多くの女性が受けてきた不正義をあらためて確認しておきたい。

女性に死刑判決を下した裁判は、多くの場合、正式な手続きがとられなかったり、長年にわたり受けてきた虐待や性的暴力が減刑要素として考慮されなかったりと、ずさんで不公正なものだった。

こうした不当な裁判で女性に死刑を宣告することで、世界中の司法制度は、死刑という残虐で忌まわしい刑罰を永続させ、また、当局が女性差別に対処できなかった代償を女性に負わせているのだ。加えて、死刑の適用に関する透明性に欠けるため、私たちが知る不正義は、氷山の一角にすぎないと思われる。

多くの場合、当局は、虐待や暴力を受けたという申し立てを受けてもまともに対応せず、差別的な慣行を放置してきた。この当局の怠慢は、女性死刑囚が取調べや裁判でさらに「権力による虐待」にさらされるという風潮を招いた。

スーダンのヌーラ・フセイン・ハマド・ダウドさんは、16歳のとき父親に結婚相手を決められ、3年後に無理やり嫁がされて相手の自宅に連れて行かれた後、夫とその兄弟らから暴行を受けた。抵抗する中で夫を殺めてしまい、2017年に死刑判決を受けた。アムネスティは他団体と協力してヌーラさんの減刑を求める活動をし、ヌーラさんは死刑を免れた。

2018年、イランのクルド人女性ゼナブ・セコンバンドさんに死刑が執行された。ゼナブさんは子どもの時に結婚させられ、夫とその兄(弟)から性的暴力を受け続け、17歳の時に夫を殺害して著しく不公正な裁判で死刑判決を言い渡されていた。

ガーナを含む複数の国では、殺人などには絶対法定刑(裁量の余地がない刑罰)として死刑が適用され、ジェンダーに基づく暴力や差別を受けていたことを減刑の要素なることはない。そのため、虐待を受けたという訴えをあきらめる被告女性もいる。

マレーシアでは、女性の死刑囚、特に外国籍者の圧倒的多数は、麻薬取引で有罪となっている。麻薬取引には、絶対法定刑として死刑が適用されるからだ。

昨年末時点で、108カ国が死刑を完全に廃止している。賢明にも世界は、国家が市民の生存権を奪う権利があるという思考から抜け出しつつあるということだ。しかし、まだすべての国ではない。アムネスティは、この残虐な刑罰が世界から完全になくなるまで運動を続ける。

アムネスティ国際ニュース
2021年10月8日

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