アムネスティ・インターナショナル 香港の拠点を閉鎖へ

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. 国際事務局発表ニュース
  4. アムネスティ・インターナショナル 香港の拠点を閉鎖へ
2021年10月26日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:

© Amnesty International
© Amnesty International

アムネスティ・インターナショナルは、香港にある2つの事務所の閉所を決め、本日発表した。

アムネスティ香港支部の事務所は10月31日をもって、アムネスティ国際事務局の地域事務所は年内をもって、それぞれ閉所する。地域事務所の機能は、アジア太平洋地域の他の事務所で維持される。

「いずれの事務所の閉鎖も、香港国家安全維持法(国安法)による弾圧が強まる中での苦渋の決断です。香港の人権団体にとって、政府からの深刻な報復をおそれることなく自由に活動することが、事実上不可能になったということです」とアムネスティ・インターナショナル国際理事会のアンジュラ・マイヤ・シンバイス理事長は語る。

「香港は長らく、国際人権団体にとって理想的な活動拠点でした。しかし、人権団体や労働組合を標的にする最近の動きは、香港からすべての批判的な声を排除しようとする当局の姿勢が強化されていることを示しています。このような不安定な環境で活動を継続することはますます難しくなっています」

アムネスティ香港支部は、香港市民からなる会員組織で、主に香港の人権教育に取り組んできた。一方、地域事務所は、東アジア、東南アジア、太平洋地域での調査、アドボカシー、キャンペーン活動を担ってきた。地域事務所の業務は、別の拠点から継続される。

「香港や周辺国の人びとの人権擁護のために40年にわたり不断に取り組むことができたのは、アムネスティ支援者と職員の努力と献身の賜物です。1993年に香港の死刑制度廃止を勝ち取り、2019年には、大規模デモにおける警察の過剰な力の行使を示す証拠を明らかにするなど、アムネスティは香港において、暗闇の日々の中でも常に人権侵害に光を当ててきました」とアムネスティ・インターナショナルの事務総長アニエス・キャラマーは述べる。

「香港の地域事務所は、北朝鮮の表現の自由、モンゴルの居住権問題、戦時下の日本の『慰安婦』問題、中国の人権派弁護士らに対する弾圧などを取り上げ、調査を行い、キャンペーンを展開してきました。また、香港支部の教育プログラムは、教室での議論からドキュメンタリー映画祭まで、さまざまな取り組みを通じて学校だけでなく一般市民の間にも人権意識を高めてきました。だれも、どんな権力者も、これらの偉業を葬り去ることはできません」

昨年6月30日、中国政府が主導した国家安全法が施行された。同法は、分離独立、国家転覆、テロ行為、「国の安全を危険にさらす外国勢力との結託」が疑われる行為を取り締まるものだ。

広範囲に適用されるあいまいな規定は、中国本土内と同様に、表現の自由、平和的集会・結社の自由などの人権を制限し、反対意見や政府批判を封じるために恣意的に利用されてきた。国安法施行から1年が経った今年6月、アムネスティは、香港の人権状況が急速に悪化していることを具体的な事例をあげて指摘した。

「国安法が絶え間なく抑圧と不安の空気を作り出し、どんな活動が刑事罰の対象となるのか、予断を許さなくなっています。市民がこれまで当然のように行ってきた、政治的な歌を口ずさんだり、教室で人権問題を議論したりすることが当局を刺激するようになり、市民は国安法の標的とされるようになりました」「そして、当局により敵とみなされた市民を標的とした恣意的な取り締まりや逮捕・起訴が続き、あいまいな法律を振りかざす当局が目をつければ、だれでも犯罪者にできることが明らかになりました」(シンバイス理事長)

取り締まりの手は、野党政治家や独立系メディアのみならず、市民団体にも伸びるようになり、これまでに香港最大の労働組合や活動団体を含む少なくとも35団体が解散を余儀なくされた。

「今後、香港の人権状況は、さらに厳しさを増すでしょうが、アムネスティは、引き続き香港の人びとと共に闘い続けます。アムネスティはこれからも、香港の人びとの権利擁護に取り組み、彼らの権利を侵害する当局の監視を続けます」「人権面で最悪の事態にある中で慣れ親しんだ香港を離れるのは非常に残念ですが、これまでの実績を誇りに思います。また、1,000万人を超える世界中のアムネスティ支援者の力をもってすれば、あらゆる地域での人権侵害に終止符を打つために、共に活動を続けることができるものと確信しています」(キャラマー事務総長)

背景情報

アムネスティ・インターナショナルは、70カ国以上で活動し、1,000万人が参加する国際人権NGOだ。アムネスティは、国際法上の平等の基準に基づいて各国政府に人権の責任を果たすよう働きかけている。

アムネスティ香港支部は、主に香港内の人権に対する問題意識の向上に取り組み、その運営は、主に香港の人びとからの寄付で成り立ってきた。

香港にある国際事務局の地域事務所は、バンコクの地域事務所とともに、東アジアと東南アジア各国での調査、キャンペーン、アドボカシー活動を担当してきた。対象国は、中国本土、台湾、日本、韓国、北朝鮮、モンゴル、ミャンマー、タイ、ベトナム、カンボジア、ラオス、インドネシア、フィリピン、ブルネイ、シンガポール、東ティモール、オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、太平洋諸島などだ。

アムネスティの収入の大半は、世界中の個人から寄せられた寄付からなる。アムネスティは、会員やサポーター、その他の方々からの寄付で維持され、いかなる政府国、政治的立場、経済的利益、宗教などとも距離を置き、独立性を維持している。アムネスティは、調査活動の資金を国や政党に求めることも、国や政党から支援を受け取ることもない。

アムネスティ国際ニュース
2021年10月25日

英語のニュースを読む