- 2022年1月13日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:カザフスタン
- トピック:表現の自由
© Valery Sharifulin/TASS
カザフスタンで1月初旬からガソリン価格の高騰への抗議デモによる騒乱が激化する中、トカエフ大統領は1月7日のテレビ演説で、治安部隊に対し今後の暴力行為に対しては事前警告なしでの発砲を命じた。
治安当局には、社会秩序を維持する義務があるとはいえ、警察や治安部隊に対し無条件での発砲許可は違法であり、犠牲者を増やすだけだ。 大統領命令を直ちに撤回しなければ、人権状況と騒乱による社会的混乱は、さらに悪化することになる。
国際法では、警官による銃器の使用は、最終手段と位置付けられており、自身や同僚に危険が迫り、その危険を回避する他の手段が尽きた場合に限られる。また、発砲に際しては、相手側に事前の警告をしなければならないとしている。
警告なしに引き金を引けば、無関係な市民が重傷を負ったり死亡するおそれが増す。今回のトカエフ大統領の命令は、「まずは殺せ、考えるのは後だ」という姿勢の表れであり、この上なく危険である。
暴力的なデモ参加者がいるからといって、治安当局が集会の権利を保護する義務を免れるわけではない。
背景情報
1月2日、カザフスタン南西マンギスタウ州でガソリン価格の高騰への抗議デモが始まり、その後デモは、南東部の同国最大都市アルマトイなど他の都市へと広がった。
デモ参加者は次第に暴徒化し、市役所への乱入と放火、警察署の銃器略奪などにおよんだ。荒れる市民に対して治安当局は、催涙ガスと音響閃光弾で対抗し、やがて銃器も使用するようになった。
また当局は、インターネットなどの通信手段を制限し、メディアには過度に厳格なメディア法に違反する行為をしないよう警告している。
内務省によると3,800人以上の市民が拘束され、デモ隊や治安隊員ら数百人が負傷し、26人が亡くなった。デモ隊の死者数ははるかに多いとみられる。死傷者数をめぐり、当初デモ参加者や警察は「数十人」、大統領は「数百人」とそれぞれ発言しているからだ。
1月4日、地元のラジオ局の記者2人の拘束・尋問され、その後もメディア関係者の拘束が続いている。
1月5日、カザフスタン政府は、秩序回復と外部脅威に対抗するためとして、ロシアなど集団安全保障条約機構(CSTO)加盟国に軍事的支援を求めた。
市民は、何年にもわたり抗議デモや野党結成を封じられるなど、その基本的権利を抑圧されてきた。抗議デモ主催者や人権活動家ら多数が拘束され、不公正な裁判を受け、投獄されるなどしてきた。
2011年、マンギスタウ州ジャナオゼンでの抗議デモでは、少なくとも14人のデモ参加者が、警察の弾圧の中で亡くなったが、なぜこれほどの犠牲者を出したのか、いまだその真相は解明されていない。
アムネスティ国際ニュース
2021年1月7日