製薬会社のワクチン供給格差 2021年の人権大惨事を招く

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2022年2月15日
[国際事務局発表ニュース]
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2021年に新型コロナワクチンの平等な配布が、強く要請されていたにもかかわらず、製薬会社は、未曾有の健康と人権の危機に立ち向かわなかった。それどころか、製造技術を独占し、知的財産の共有を妨げるロビー活動を展開し、ワクチンに高値を付け、富裕国への供給を優先した。

昨年、100億回分のコロナワクチンが製造された。この回数は、世界保健機関(WHO)が設定した低所得・低中所得国の40パーセントの人たちが2021年末までにワクチン接種を終わらせるという目標達成に十分な量だったが、低所得国でワクチンを2回接種した人の割合は、昨年末時点でわずか4パーセント強に過ぎなかった。もし、高所得国と製薬会社が、人権への義務と責任を果たす意思があったなら、低所得・低中所得国の12億以上の人びとは、昨年末までに接種を終えていたはずだ。

高所得国がワクチンを買い占め貧困層への供給を妨げる一方で、製薬会社は、最も必要としている人びとを見捨てて人権危機の深刻化をもたらした。

本来であれば製薬会社は昨年、称賛されたはずだ。だが、現実には、ワクチンを最も必要とする人びとに背を向け、人命より利益を優先する従来の姿勢を変えなかった。世界が、2022年をパンデミック(感染の世界的大流行)の最後の年にしたいのであれば、今こそ、この状況を軌道修正しなければならない。

昨年、ファイザー、ビオンテック、モデルナの3社は、合わせて540億米ドル(約6兆2千億円)の売上高を見込む中、低所得国に提供したワクチンは、全体の2パーセントを下回った。中国の製薬会社シノバックとシノファームの低所得国向け供給実績は、それぞれ0.5パーセントと1.5パーセントだった。

ジョンソン・エンド・ジョンソンとアストラゼネカのワクチンは、それぞれの在庫の半分が低所得・低中所得国に向けられた。(ただし、その多くは契約に基づく配分ではなく高所得国からの供与だった。)しかし、両社ともWHO主導の枠組みを通じた技術と知的財産の開示には応じず、また、非営利的な価格設定を放棄している。

何十億ドル規模の公的支援を受けながら、企業は人権責任を果たすことよりも、営利を追求し続けている。これまで、新型コロナに感染して560万人以上が亡くなっているにもかかわらず、製薬会社は人命より利益を優先する姿勢を変えていない。これは極めて憂慮すべきことだ。

高所得国と製薬会社が、低所得国の人びともワクチンを必要としていることを理解するまで、世界はどれだけの変異株を経験しなければならないのだろうか。

科学情報分析会社エアフィニティによると、製薬会社の2021年の製造量と供給量は、以下の通りだった。

  • アストラゼネカ:24億回分弱のワクチンを製造し、そのうちの1.5パーセントを低所得国に、70パーセントを低中所得国に供給した。前回の調査結果より増えた。
  • ジョンソン・エンド・ジョンソン:3億回分強を生産、20パーセントを低所得国、31パーセントを低中所得国に供給した。前回の結果より大幅増だった。
  • モデルナ:6億7,300万回分を生産し、そのうち2パーセントを低所得国、25.5パーセントを低中所得国に供給した。前回より大幅増だったが、依然として要求される量には達していなかった。
  • ファイザー/ビオンオテック:24億回分を生産し、そのうち1パーセントを低所得国、14パーセントを低中所得国に納めた。前回よりわずかに増加したが、アムネスティが目標とする50パーセントを大幅に下回った。
  • シノファーム:2021年に22億回分強を生産し、その大半を国内に供給した。同社は、低所得国に1.5パーセント、低中所得国に24パーセントの量を供給したが、この数値は、ワクチンの公正配分で求められる量には達していなかった。
  • シノバック:24億回分以上を製造し、そのほとんどを中国国内で供給した。低所得国には0.5パーセント、所得がさらに低い国には20.5パーセントを納入した。

これらの企業は、知的財産や技術を広く共有せず、公平なワクチン接種を妨げ、国際的知的財産権の緩和に反対するロビー活動を精力的に行なっていることもアムネスティの調査で明らかになっている。

ワクチンの公平な供給に向けた闘いは今後も続く。今年半ばまでに世界全人口の70パーセントがワクチン接種を完了するというWHOの目標を達成するために、製薬会社が低所得国に優先的にワクチンを提供することが一層求められる。

すべての人びとに接種の権利がある。パンデミックも3年目に入り、世界のだれもが、ワクチン接種を受けられるようにする時がきている。

アムネスティは製薬各社に対して、オープンかつ非独占的使用権を提供して知的財産を共有する、あるいは「新型コロナウイルス・テクノロジー・アクセス・プール」(C-TAP:知的財産、データ、製造過程を共有財にして技術移転を促進するための枠組み)への参加を求めている。

この世界的な危機においては、投資家も重大な役割を担っている。新型コロナが世界中の人びとを苦難に追いやる中、投資家は私服を肥やす一方で、製薬会社が営利を追求し人権危機を煽っていることに対して意味のある行動を何も起こさなかった。今こそ投資家はこれまでの行動を見直し、その影響力を行使してワクチン接種の障害を取り除き、さらに説明責任と透明性を促進するべきだ。

アムネスティ国際ニュース
2022年2月14日

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