国連:拷問器具取引撲滅に向けた大きな一歩

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2022年6月 8日
[国際事務局発表ニュース]
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国連は、拷問器具の取引に関し法的拘束力のある条約に道を拓く可能性がある専門家の報告書を発表し、拷問器具の取引撲滅に向けた大きな一歩を踏み出した。

現在のところ、拷問、虐待、処刑に使われる器具の取引を人権面から規制する世界的枠組みはない。2021年国連総会は、これらの器具取引を規制する新しい方策の可能性を探る役割を政府専門家グループに託した。今回、報告書の中で提案が公表された。

アムネスティは、オメガリサーチ財団、ハーバード大学ロースクール国際人権クリニックと共に、法的拘束力のある文書の交渉を開始するようにという国連総会に対する提案をとりわけ歓迎する。

拷問や虐待は、何十年も前から国際法で禁じられているにもかかわらず、こうした違法行為に使われる器具の取引に関しては世界的な規制がない状況が続いてきた。今回の報告書は、この基本的欠陥を正す画期的出来事だ。想像を絶する苦痛をもたらす器具の取引に世界的な規制措置がないまま、企業が利益を得るという事態が続いてきた。この破廉恥な状況を規制する上で、報告書の発表は、一歩前進と言える。

虐待目的器具の取引禁止案

アムネスティ、オメガリサーチ財団、ハーバード大学ロースクール国際人権クリニックは、鋲付き棍棒、重り付き足鎖、電気ショックベルトなど、使用目的が拷問や虐待である器具の即時禁止を求めている。3団体は、将来の国際基準に拷問・虐待目的の法執行装備の製造・取引の禁止を盛り込むという今回の報告書の勧告を歓迎する。政府専門家グループは、「この禁止は『人権侵害を防ぐ上での事前的措置』となるだろう」と述べている。

報告書のもう一つの成果は、法執行具が拷問や虐待に使用されると「信じるに足る合理的根拠」がある場合、その物品の取引規制を勧告していることだ。これは、催涙ガス、手錠、ゴム弾、警棒など取り締まり用の標準装備も規制対象になることを意味する。こうした装備は、正当な目的で使われるべきだがしばしば悪用されている。3団体は、こうした器具を人権の観点で厳格な取引管理下に置くよう求めている。

死刑執行に使われる器具の取引規制の実現可能性に関しては、政府専門家グループの中でも多様な意見があった。

オメガリサーチ財団のマイケル・クロウリー博士は「アムネスティとオメガによるこれまでの調査で、拷問器具の国際取引の性格が明らかになっている。鋲付き棍棒や電気ショックベルトなど拷問・虐待を目的とする器具の取引を世界市場から排除する唯一の手段は、法的拘束力のある取引禁止条約だ」と語る。「また、こうした条約が機能すれば、法執行具を販売する企業はどこで事業を行おうと共通の規制を受けることになり、虐待的な警察や治安部隊の手に渡るのを阻止することが可能になるだろう」。

ハーバード大学ロースクール国際人権クリニックのアンナ・クロウさんは「政府専門家グループの報告は、なぜ拷問器具取引の世界的規制が重要で緊急を要するかを明らかにしている。各国は今こそ、拷問器具取引を絶つ世界的ルールを確立するための条約づくりに向け、作業を開始すべきだ」

アムネスティとオメガリサーチ財団は、拷問器具取引の地域的規制の策定作業で欧州連合(EU)および欧州評議会と緊密に連携しており、また、国連にも勧告書を提出している。両団体はハーバード大学ロースクール国際人権クリニックと共に、各国政府に対し拷問器具取引の規制に向けた法的拘束力のある条約の交渉に毅然とした態度で臨むよう求めている。

アムネスティ国際ニュース
2022年5月30日

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