イラン/トルコ:国境で銃火を浴びて押し戻されるアフガニスタンの人びと

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2022年9月10日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:難民と移民

米軍撤収から1年が経つが、国を逃れようとしたアフガニスタンの市民が危険にさらされる事態が続いている。

身の安全を求めてイランとの国境やさらにその先のトルコ国境を超えようとして、治安部隊の発砲を受けるなどして押し戻されている。特にイラン国境では、壁を越えたりフェンスをくぐったりする人が治安部隊に狙撃されることが多発している。

危険なのは国境だけではない。イランやトルコの国内に入った後、拘束され拷問などの暴力を受けた上、送還されることも頻発している。

アムネスティは今年3月、アフガニスタンを訪れ、北西部ヘラートと国境の町イスラム・カラで聞き取り調査をした。話を聞いたのはイランやトルコから押し返された74人で、うち48人は国境を越えようとしたとき発砲を受けたと証言した。全員が難民申請をすることができず、ほとんどの人が国際法に反してアフガニスタンに戻された。

トルコとイランの各政府は、アフガニスタン人の押し戻し、送還、暴力を直ちに停止し、国境を超えてきた人たちへの安全な移動と難民申請手続きを保障すべきだ。また両国の治安部隊は、国境のアフガニスタン人に対する銃の使用をやめるべきだ。さらに、殺害や拷問など人権侵害に関与した隊員は、責任を問われなければならない。

国際社会には、イランやトルコなど多数のアフガニスタン人を保護している国への経済的、物的支援が求められる。同時にこれらの支援が、人権侵害に悪用されることがないように留意することも欠かせない。しかしEUはすでに、トルコに国境の壁や、国外退去措置を受けるアフガニスタン人を収容する施設の建設費を提供している。国際的保護を必要とするアフガニスタン人に対し、各国は定住の機会を提供しなければならない。

長く危険な旅

タリバンが政権を掌握した昨年8月以降、数十万人ものアフガニスタン人が国外に逃れた。近隣の国は、旅券を所持しないアフガニスタン人に対し国境を閉鎖しており、多くの人が非正規に国外へ出ざるを得なかった。国境付近のフェンスの下をくぐったり、高さ2メートルの壁を乗り越えたりするなどしてイランに入国した。

国境警備隊に拘束されなかった人たちは、イランの都市に向かうか、2,000キロ北西のトルコ国境まで移動する。アフガニスタンとイランとの国境でも、イランとトルコとの国境でも暴力的な押し戻しを受けている。

アムネスティは今年3月と5月にアフガニスタンとトルコを訪れ、トルコやイランに渡ろうとした74人のアフガニスタン人、医師、NGO職員、アフガニスタン政府関係者らに聞き取りをした。この調査で昨年3月から今年5月までの間に255件の違法な押し戻しがあったことがわかった。

イラン入国を試みて殺害される

アムネスティが聞き取りをした中に、イランに入国しようとして治安部隊に殺された男性6人と少年1人の家族がいた。男性の1人は、国境の壁をよじ登ったところを頭を撃たれて亡くなった。少年は、家族と国境を越え歩きだしたところを銃で撃たれた。

調査で明らかになった治安部隊による犠牲者数は11人だが、実際はもっと多いとみられる。人道支援活動家とアフガニスタンの医師によると、昨年8月から12月までの5カ月間で少なくとも死亡者59人と負傷者31人が出たという。

トルコ治安部隊による発砲

アムネスティはイランから国境を越えてトルコに入ろうとした35人に話を聞いたが、うち23人が銃撃を受けていた。トルコの治安部隊に少年3人が殺されるのを目にしたという男性もいた。また、男性6人と少年3人が負傷させられたのを見た人もいた。治安隊員に2歳児が胸を、6歳の子どもが手を撃たれるところを目撃した人もいた。

死傷者はいずれも、治安部隊員に何の脅威も与えていなかった。隊員は、至近距離から狙い撃つなど、殺意が伺える場合もあった。

治安部隊による意図的かつ違法な銃器での殺害は、超法規的処刑の可能性として調査する必要がある。

イランでは、拷問、超法規的処刑などの殺害が広く行われ、そうした罪が問われない風潮が蔓延している。アムネスティは国連人権理事会に対し、国際法上の最も深刻な犯罪にあたる行為の証拠を収集・分析し、訴追を可能にする独立した機関の設置をあらめて求める。

拘束と拷問

アムネスティの調査によると、イランまたはトルコ国内でいったん拘束され、すぐに押し戻されなかった人たちのほぼ全員が、1、2日から2カ月半、拘束された。拘束された人のうちイランでは23人、トルコでは21人が拘束中に暴行を受けた。

トルコ当局に押し戻された11人は、EUがその建設に資金を提供しているトルコ国内の退去者用施設に収容されていた。

欧州委員会は、トルコへの難民関連資金が人権侵害に結びつくことがないようにしなければならない。もしEUが、不法に送還されるアフガニスタン人を収容している収容施設に資金提供を続けるなら、人権侵害に加担していることになる。

アフガニスタン人の保護を拒否する両国

聞き取りをしたアフガニスタン人の中に、イランでもトルコでも国際的保護の申請ができた人はいなかった。帰国すれば人権侵害を受ける危険があると当局に伝えたが、相手にされなかったという。

イランの治安部隊は拘束者をバスでアフガニスタン国境まで移送し、トルコも非合法的な経路でイランに送り返していた。トルコは今年1月下旬にアフガニスタンへのチャーター便を再開し、4月末までに6805人を直接アフガニスタンに送還したことが、トルコ当局の発表でわかった。

アムネスティが聞き取りした人たちは「アフガニスタンに戻されると知りみんな号泣した。自殺を図った人もいた」と話す。

トルコで拘束されチャーター便で送還された8人は、「自発的帰国」と記された文書に署名を強要された。治安部隊員に殴り倒され、馬乗りにされ、手をつかまれて無理やり指印させられた男性もいた。

国際法のノン・ルフールマンの原則は、迫害などの深刻な人権侵害を受けるおそれがある国への送還を禁止している。トルコとイランはこの原則に従い危険が待ち受けるアフガニスタンへの押し戻しをやめなければならない。

また国際社会は、身の危険にさらされているアフガニスタン人の安全な移動と避難を手配し、アフガン難民の受け入れ責任を共に負うための協調行動を強化すべきだ。

アムネスティ国際ニュース
2022年8月31日

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