アイスランド:独房の乱用 直ちに停止を

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2023年2月 2日
[国際事務局発表ニュース]
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アイスランドでは、独房が知的障がい者や精神疾患を持つ人たちを含む未決勾留者の収容に利用され、裁判を待つ人の権利が侵害されている。被疑者が独房に収容される割合が際立って多く、アムネスティは、アイスランド政府に実効性ある改善策を打つよう求めている。

2021年、再勾留者の61%が独房に入れられた。この10年間では99人が15日以上にわたって長期に独房で収容されている。これは拷問などの残虐で非人道的な取り扱いや刑罰を禁じる国際的基準に違反する。

当局は、独居拘禁の乱用問題を何年も前から認識していたにもかかわらず、事態は一向に改善されず、毎年子どもや知的障がい者を含む100人近くが、1日22時間以上も独房に入れられてきた。

当局は今こそこの問題に本腰を入れて取り組み、独房の乱用防止に向けた思い切った対策に乗り出す必要がある。

独房の使用は国際法で認められてはいるが、あくまでも例外的措置であり、収容期間は可能な限り短期でなければならない。また、独房での収監が正当であることを示す必要がある。しかしアイスランドでは、こうした条件が満たされないまま、警察が裁判所に公判前勾留での独房の使用許可を求めれば、そのほとんどが認められてきた。

1974年に2人の男性が失踪した事件では、何年にもわたる捜査の末、6人が殺人容疑で逮捕された。6人は長期間独房に収容され、脅しや虐待を受けた挙句、殺害を「自白」し、有罪判決を受けた。その後の6人は無罪を言い渡されている。

この誤審を契機に長期間の独房収容が見直されるようになったが、対応はいまだ不十分で、今も独居拘禁で苦しむ人たちがいるとみられる。

裁判前に独房に収容することは、強要の一形態だと見なすことができる。当局は捜査を守るためだと正当化するが、とうてい受け入れがたい。ある検察官はアムネスティに「容疑者が電話を使えないようにするには、独房に入れるのが唯一の方法だ」と話したが、公判前の独房利用の理由にも説明にもならない。被疑者を特定の個人から引き離す、特定の番号への電話を禁止するなど、他の方法があるからだ。

複数の弁護士はアムネスティに、「警察が容疑者を独房に入れて心理的的圧力をかけ、求める情報を引き出そうとしていることは明らかだ」と話す。

子どもと障がい者も独房に

独房に入れられることで危害を受ける可能性の高い人を守るための保護措置はない。隔離されることによって悪化するおそれのある障がいを持つ人の場合も同様だ。警察は独房に収容する際、健康状態を調べることはなく、子どもに対する保護措置も極めて不十分だ。

裁判官は警察に絶大な信頼を置いており、警察から独房収容の要請を受けるとその内容をほとんど確認することなく承認している。ある裁判官は、「警察に大きな自由裁量権が与えられていて、重要な判断があまりにも軽く下されている」とアムネスティに話す。

独房に入っていた元被収容者はアムネスティに、「強迫性障がいがあるので、一人でいるのはとても辛かったが、そのことを当局の医療従事者は知らなかったと思う」と語る。

独居拘禁が引き起こす問題

独房に収容されることによる心身への悪影響はよく知られており、不眠症、錯乱、幻覚、精神病などを誘発する。いずれも収容後数日で発症する可能性があり、収容期間が長くなるほど発症リスクは高くなる。また、2週間前後で自殺を図ったり自傷行為をする割合も増す。

アイスランド当局は、国際基準に反して独房に収容されている人たちの民族に関するデータを収集していないが、独房での収監が少数民族や外国籍の人など特定の集団に多用されている可能性があることが懸念される。

アイスランドでは、子どもや障がい者を含む多くの人たちが独房で収容されている。政府は、この人権侵害に終止符を打つために刑法の全面的改正、さらには司法制度自体にメスをいれる必要がある。

アムネスティ国際ニュース
2023年1月31日

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